上級プロジェクトマネージャになるには?

上級プロジェクトマネージャになるには?

長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2007/7/24

プロジェクトの現場で不足する「上級プロジェクトマネージャ」を育てるには? 新入社員のOJTに注目し、日本の企業を「もう一度強くする」には? 富士通ラーニングメディアが語った。

現場で機能していないOJT

富士通ラーニングメディア 代表取締役社長 岡田恭彦氏

 「日本の企業を強くしてきたのはOJT」。富士通ラーニングメディア 代表取締役社長 岡田恭彦氏はこう語る。しかし、現在はそのOJTが「機能していない状況」であることは、同社がたびたび指摘しているところだ。

 その理由は「いまの新人を指導する3〜4年前の新入社員が少ないから」。「これまでは、かつて教わったことをそのまま教えればよかった。いまはそれができる指導側の人が少ない。若い人が(指導者なしに)互いに指摘し合って改善していけるかというと、それは難しい」(岡田氏)と分析する。

 このような問題意識によって、同社は以前から新入社員研修、新入社員を指導するOJTトレーナー向けの研修に力を入れてきた。今月(2007年7月)2日に発表された、2007年度下期(2007年10月〜2008年3月)の新たな取り組みの1つである「トレーナーズトレーナー研修」は、この流れをくむものだ(参考記事:「富士通ラーニングメディアが新研修 新入社員の『先生の先生』を育成します」)。

「新入社員のOJTトレーナーの、そのまた上司」を育成する

 2007年10月以降に開講予定のトレーナーズトレーナー研修は、名前が示すとおり「新入社員を指導するOJTトレーナーを、さらに指導する立場のマネージャに対する研修」だ。「組織全体で学習する仕組みづくり」「学習する組織をつくるリーダーの育成」を目標としている。

 同社 研修事業部長 羽賀孝夫氏は「企業では相変わらずOJTが回っていない。これをうまく回すだけではなく、総合的に人材育成を行えるマネージャを育てる。人材育成のライフサイクルと企業のライフサイクルは連動するはずなので、それらをトータルで支援したい」と、新研修の背景と狙いを語る。

 各企業がどのような研修コースを取り入れて自社を良くし、「学習する組織」となるかに関して、コンサルティングに近いことも行うという。

 羽賀氏は「マネージャが育成を重要視し、時間を割かなければ企業の成長はない」と断言する。今後も引き続き、OJT関連の研修には力を入れていく考えだ。

現実認識能力に優れた、「上級」のプロジェクトマネージャ

 富士通ラーニングメディアの2007年度下期の新たな取り組みとして、トレーナーズトレーナー研修のほかに「上級プロジェクトマネージャ育成コース」「組み込み人材育成への取り組み」が挙げられた。順番に見ていこう。

富士通ラーニングメディア 研修事業部長 羽賀孝夫氏

 まずは上級プロジェクトマネージャ育成コースについてだ。同社では以前から、「プロジェクトマネージャを早期に育成し、現場のクリティカルな案件でも若手に担当させられるようにしたい、研修でプロジェクトマネージャの実践力を付けさせたい」との顧客の声に応じて、プロジェクトを疑似体験できるコースを提供している。今回の取り組みはそこから「一歩前に進んだ」ものであり、「大変力を入れている。いかにして上級プロジェクトマネージャを育成するかは多くの企業が知りたいところであり、大げさかもしれないが世の中のためになる講座だと思っている」(羽賀氏)という。

 羽賀氏によると、上級プロジェクトマネージャ育成コースは「自分なりに頑張っている一般のプロジェクトマネージャに、『上級のプロジェクトマネージャはどのように失敗をリカバリしているのか、自分たちはなぜ失敗するのか』という気付きを与え、上級を目指してもらう」もの。具体的には、富士通グループのプロジェクトの成功や失敗の事例、上級プロジェクトマネージャの経験談やノウハウを盛り込んだ演習、経験豊富な複数講師による少人数の受講者への指導で、現実認識能力に優れた上級プロジェクトマネージャの育成を目指す。

 上級プロジェクトマネージャ育成のポイントについて、羽賀氏は「範囲が広い中、第一に重要なのはリスクマネジメント」と話す。「リスクは1つでも、その対応方法はさまざま。まずはリスクが見えるか見えないかを自覚し、(1)見えないなら見えるようにする。(2)見えたら、それにどう対応するかを知る。洞察力を磨き、着眼点を見極め、リスクヘッジのために何をするかを学ぶこと」が必要とのことだ。

 こういった少人数の講座では、受講生が講師やほかの受講生から学ぶだけでなく、「講師も受講生から学ぶ」という。「講師も、コースの内容もどんどん良くなる。それをまた受講生に伝えていく」という流れができる。

学校から産業界への人材供給を

 最後に「組み込み人材育成への取り組み」だ。現場での組み込み技術者の不足に対応し、組み込み開発者の育成コースを充実させるだけでなく、研修の学校市場への拡販も進めている。富士通の組み込み技術のノウハウを盛り込んだ体系的な研修を提供することにより、「学校を巻き込んで、産業界に人材供給をする」ことを狙う。

 いまは理科系単科大学などを中心に、研修の提供を「紹介し、認識を広めている」状況。「反応はあります。単位を与えない授業としてなら実施できそうだという声が出ています」(羽賀氏)という。単位が取れない授業への学生の受講を促すには、今後「就職に有利である、資格が取れるなどの分かりやすい利点」が必要かもしれない。2007年10月からは実際に教職員に講座を体験してもらい、さらに導入に向けての活動を進める予定だ。


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