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学生よ騙されるでない! ブラック企業の見抜き方

第1回 ブラック企業、5つの視点から見る特徴


新田龍(ブラック企業アナリスト)
2009/10/29

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■ブラック企業、5つの視点から見る特徴

(1)労働時間

 「ハードワーク=ブラック」という見方が根強いですが、残業が多いくらいの会社はいまどき普通です。むしろ、そこまで必死になって価値創造しないと、もっと価値を出している会社に負けてしまいますからね。多少の残業があったとしても、それをきちんと評価して、何とか報いようとしている会社であれば、よしとすべきでしょう。

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 逆に、このような意識もなく、「社員は金をもらっているんだから働け!」と普通にいってしまうような会社は要注意です。そのほかにも、「成果ではなく労働時間の長さで評価が決まるような会社」「休日出勤を強制する会社」「残業代の制度がありながら払わない会社」なども、社員の存在価値をないがしろにしています。いけませんね。

 ポイントは残業の有無ではなく、「社員に報いる姿勢があるかどうか」なのです。 

(2)給与・待遇

 資本主義経済の下では、「社員が創造した価値に比べて、給与が安い」のは宿命です。そうでないと会社を維持・発展できませんから。

 しかし、「そもそも給与を払う気がない」「基本給を極力低く抑えようとする」「あえて昇給させない」といった形で、故意に社員に不便を強いるブラック企業が存在します。 

 労働に対して正当に報いる気がない会社は、どこかで「感謝の念」を忘れてしまっているのです。それは、企業活動のあらゆる面に「社風」として出てくるでしょうし、本当に優秀な社員の離反を招くことになるでしょう。長い視点で見ると、安泰ではないはずです。そんなブラック企業は淘汰されなくてはなりません。

(3)仕事内容

 いくら仕事がハードで給与が安い「社員にとってのブラック企業」でも、その会社の商品やサービスに対してお客さんが満足し、お金を支払う限り、その会社は存続していきます。その場合は社員が大変でも社会貢献できているわけですから、存在価値は十分あるのです。

 問題なのは、お客さんにメリットのない商品やサービスを売りつけ、暴利をむさぼるような悪徳会社です。単価の高い商材を個人相手に営業する業種にしばしば見られるパターンです。営業担当者の懐に入る成果報酬も高額になりますから、彼らはお金のために口八丁手八丁で頑張り、会社も潤う。お客さんと、まじめに働く社員が報われないような会社に存在意義はありません。

(4)社風・人間関係

 組織をマネジメントしていくには、一体感のある社風や強力なリーダーシップが必要になります。たまにはそれが強権的になってしまったり、理不尽に感じてしまうこともあるでしょう。でもある程度は、会社が存続するうえでしかたないことだといえます。  

 注意すべきは、チームワークと管理職の資質の方です。ブラック企業はこれらが機能していないことが多いため、社員がお互いに信頼し合えず、足を引っ張り合ったり、罵声や怒声が飛び交う環境であることもしばしば。会社訪問や面接のタイミングでそのような兆候があるかどうか、重々注意しておきましょう。

(5)経営者・上司

 ブラック企業の特徴的な要素として挙げられるポイントの1つに「社長が必要以上に礼讃されている」というものがあります。この理由はシンプルで、「社員をつなぎとめておくため、あえてそのようにしている」んですね。「そんなすごい社長と一緒に働くんだ!」と、社員の「心のよりどころ」を作ろうとするわけです。

 また「上司とは理不尽であるもの」という認識は昔から構図が変わっていないようです。そもそも、なぜ上司がいまの地位にあるのか。当然ながら、これまでの仕事において着実な実績を残したからなわけですが、特にブラック企業の場合、苛酷な労働環境を生き抜いてきた人であることも想像できます。

 恐らく彼らは、「自分には当たり前にできることなのに、部下ができないのがそもそも訳が分からない」のでしょう。だから声を荒げたり、「何でこんなこともできないんだ」となってしまうのです。

■IT業界はブラック企業が多い?

 納期に左右され、コスト低減圧力が強いので、「ライバル企業よりも先に、やるべきことをすべてこなし、かつより高いクオリティのものをリーズナブルに提供しなくてはならない」。ITとは、そんな宿命を背負った仕事であり、業界であるといえます。それは必然的に厳しい労働環境を生み出しますので、「ブラック企業が多い」という認識もあながち間違いではないかもしれませんね。

 しかしそれは、「仕事や会社に何を求めるか」という判断基準次第であるともいえます。まったく同じ環境で同じ仕事をしていても、それをブラックだとし、文句ばかりいう人もいれば、天職だといいながら喜々として働く人もいるものです。結局、ブラック企業とは心の持ちようでどうにでもなるんです。そう考えると、ネガティブ思考の人、意志が弱い人はブラック企業にハマりやすいといえるでしょう。同じ仕事をするならば、何事もポジティブにとらえて、楽しく進めていきたいものですね。

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筆者プロフィール
新田龍(にった りょう)
ブラック企業アナリスト、キャリア教育プロデューサー、大学講師、株式会社就活総合研究所 代表取締役、および株式会社ヴィベアータ 代表取締役。
早稲田大学政治経済学部卒業後、ネット上で「ブラック企業」といわれる2社において事業企画、コンサルタント、人事採用職を経て独立。「すべてのはたらくひとをハッピーに」を目指し、これまで5000人以上の面接・カウンセリング経験、早稲田大学など20大学でのキャリア指導経験を持つ。著書に『人生を無駄にしない会社の選び方』、(日本実業出版社)がある。


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