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アツいエンジニアに会いたい!

世界を変える“アツい”エンジニアに会いたい!


第2回 サービスとインフラに精通してこそ「技術者」である


井上敬浩(慶應義塾大学大学院)
2010/4/26


ITエンジニアが中心に立って「世界を変えていこう」とするIT企業を徹底研究。アツいITエンジニアへ突撃インタビューし、その信念を聞く

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 こんにちは。学生記者の井上敬浩です。「世界を変えるアツいITエンジニア」へ会いに行く本連載、第1回「DeNAの技術者は失敗を恐れない」に引き続き、DeNAエンジニアへのインタビューをお送りします。

(1)「ITエンジニア未経験だったことに何の不安もなかった」:企画から転身してITエンジニアへ、モバゲータウンを大成功に導いた大塚剛司さん

(2)「マネージャはゴールではない」:コードを書かないITエンジニア、DeNAマネージャ能登信晴さん

(3)「いままでの経験なんてどうでもいい、明日からスタートダッシュすることだけを考える」:新人インフラエンジニア、岩永亮介さん

(4)「仕事だけでなく、趣味でコードを書いて技術の幅を広げてほしい」:DeNAオープン化成功の立役者、木村秀夫さん

 それでは、岩永亮介さんのインタビューからどうぞ!

入社後とてつもない成長を遂げた新人エンジニア、岩永亮介さん

井上:まず、岩永さんの就職活動について教えていただけますか。

岩永:学生時代は、情報や機械に関する分野を専攻していました。Webエンジニアの仕事に興味がありましたが、DeNA以外のIT企業は受けていません。

岩永亮介さん
システム統括本部 IT基盤部
岩永亮介さん

井上:なぜ、DeNAに興味を持ったのですか?

岩永:わたしは「小さなサービスをやるだけなら自分でやればいい」と思っていました。かといって大企業で働く気もありませんでした。「膨大なトラフィックをさばきながら大規模なWebサイトを運営する少数精鋭の集団で働きたい」というわたしのイメージに、DeNAはぴったりだったのです。

井上:なるほど。実際に受けたのは、DeNAだけですか?

岩永:いえ、実はマスコミ業界を受けていました。結局、採用試験には落ちてしまったのですが。

井上:面白い就職活動ですね。それでは、入社当時の状況を教えてください。

岩永:周囲の優秀さに圧倒されました。南場社長や社員たちの持つ自信とオーラに驚きました。皆、それだけの成果を収めてきた方たちですので、とても格好よかったです。自分もそうなりたい、と思いました。

井上:そうなんですね! 同期は皆、入社時から高いスキルを持っていたのですか。

岩永:入社時のスキルはバラバラで、すでに実績のある人もいれば、ほとんど経験がない人もいました。でも、入社時のスキルの差はまったく問題ではありません。入社後1年間の成長に比べれば、入社前の差なんて本当に些細なものです。

井上:それは衝撃的なお言葉です! もう少し理由をお聞かせください。

岩永:DeNAでは入社後、各部署に1名程度しか配属されず、現場では即戦力としていきなりサービスの中核を担います。責任は重大です。そんな環境の中で、成長しないわけがない。1年もすれば、DeNAの新人はどんな企業よりも大きな成長を遂げていると思います。

井上:それは大変なプレッシャーですね。苦痛ではないのですか。

岩永:確かに、責任の重さから来るプレッシャーは大変大きなもので、つぶれてしまいそうになります。しかし、そこでつぶれたりスネたりしたら負けなのです。歯を食いしばって乗り越えると、プレッシャーをだんだん楽しめるようになります。もちろんプレッシャーはどんどん高度になってきますので、心休まる時なんて一瞬もありませんが(笑)。

井上:「高度なプレッシャー」というのはどのようなものですか。

岩永:初めはやるべきことが明確に指示されますが、だんだんと要求が曖昧(あいまい)になってきます。問題を解決するためには、自分で考えて本質を見抜く力が求められます。もちろん自分だけで解決できない問題があるので、いろいろな人を巻き込んでいく必要があります。誰にどのような意見を求めればいいか、そこから考えないといけません。

インフラエンジニアとして必要な能力

井上:インフラエンジニアを志望した理由をお聞かせください。

岩永:大学でインフラ関係の研究をしていたわけではなかったため、インフラエンジニアが何をしているのかほとんど分かっていませんでした。でも、だからこそチャレンジしたいと思いました。サービス全体を支える根幹的役割を果たすのは、インフラです。インフラに携わっていると、さまざまなサービスを俯瞰(ふかん)することができます。モバゲーやDeNA全体のサービスを見ることができるので、とても面白いです。他人のコードを読む機会も多いので勉強になります。

井上:インフラエンジニアとして必要な能力は何でしょうか。

岩永:まず、何か問題が起こったとき、「適切かつ速やかに原因を特定する能力」が必要です。「予測を立てる能力」も求められます。今月はどのくらい負荷があるか、このサービスが立ち上がったらどれくらいのサーバが必要になるのか、といったことを予測します。予測以上の負荷があると、わたしたちはその裏でヒーヒーいうことになります。かといって、予測を下回るのは寂しいので、複雑な心境ではありますが(笑)。

 後は、「インフラ周りのきちんとした仕組みを作る能力」ですね。仕組みがきちんとしていれば、トラブル対応に追われることなく、適切な対応ができるようになります。定常運用にかける時間を少なくして、空いた時間でもっと高度な技術にチャレンジしていくことが求められます。

同期は負けず嫌いばかり、先輩はとにかくすごい!

井上:同期について教えてください。

岩永:同期といっても、DeNAに集まるITエンジニアは十人十色です。学部卒でストレートに来るや博士課程まで進んだ人、会社経営していた人からシステム未経験の人まで年齢や背景はさまざまです。しかし、共通するのは「アツい人ばかりである」ということ。そして、皆そろって負けず嫌い。相手の良さを認めながらも、「どこで勝つか、どうやって追い抜くか」をいつも考えています。でもくだらない足の引っ張り合いはしません。お互い、良い意味で競い合いながら自分の価値を高めています。

井上:先輩の印象は。

岩永:先輩はすごい人ばかりです。さまざまな分野のスペシャリストがいるので、吸収できることは山ほどあります。横で先輩たちの話を盗み聞くだけでも、ものすごく勉強になります。

井上:企画の方との関わりはあるのですか。

岩永:もちろんです。どのくらいの負荷がありそうかなどの相談を受けます。驚きなのは、企画担当の人が、インフラ事情をよく知っていることです。「自分のサービスを真に成長させるためには、自分がインフラの基礎を知っていないといけない」という意識から、独学しているようです。もちろん、他のエンジニアも、インフラのことを理解しています。インフラを知らないとサービスを理解できないですからね。

岩永さんが次に切り開く未来

井上:今後の野望をお聞かせください!

岩永:いまは、インフラの技術をもっと高めていきたいと考えています。将来は、インフラ以外の分野にチャレンジしたいですね。DeNAでは、意志があればいくらでもチャレンジさせてくれますので、うまく利用していきたいです。後は、世界にインパクトを与えられるような成果を出して、DeNAを世界で名を馳せる企業にしていきたいです。DeNAは、世界に一番近い会社であると確信しています。

井上:海外のカンファレンスに参加したと聞きました。

岩永:「公募に通過すれば、会社負担で国際学会に参加できる」という社内制度を利用して、MySQL Conference & Expoに参加してきました。最新の情報に触れられてとても刺激的でした。

井上:それは素晴らしい制度ですね! 現地で他に見てきたものはありますか?

岩永:シリコンバレーの空気は素晴らしかったですね。道や空が広くて思考が開放される感覚を味わいました。皆がどんな携帯を使ってるのかは、やはり気になりました。多くの人がスマートフォンを使いこなしていました。あと、iPadを触って感動しました。

岩永さんのインタビューを終えて

 新人と思えぬオーラを身にまとう岩永さんの話はとても刺激的でした。経験に裏打ちされた言葉には、どれも重みがありました。新卒2年目でここまですごいITエンジニアになれるのか! と、レベルの高さを再認識しました。

「技術者として成長したいなら、趣味でもコードを書け」

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記者プロフィール
井上敬浩(いのうえたかひろ)

 慶應義塾大学大学院理工学研究科で数理科学を専攻。研究内容はアルゴリズム・最適化。

 情報学は学んでこなかったが、学部4年時のITベンチャー企業でのアルバイトをきっかけに、ITの面白さにどっぷりと浸かるように。

 一通りのプログラミング言語を浅く広く学んできたが、まだまだ勉強不足を感じている今日このごろ。得意分野は、データマイニングや最適化アルゴリズムの実装。

 スピード感があって個人の裁量が大きいITベンチャー企業が大好き。


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