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第3回 ソフトウェア業界に存在する11の職種


松盛千佳(野村総合研究所)
2009/10/13

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 各カテゴリに入る職種とその職種の主な業務概略は表1のとおりである。具体的な人材像や仕事の流れなどは、第5回以降、各職種について記載予定であるので、ここでは概略にとどめる。

カテゴリ 職種 業務概略
ソフトウェア開発 プロジェクトマネージャ 情報システム構築プロジェクトの責任者として、プロジェクト計画の作成、プロジェクト遂行に必要な要員などの資源の調達、プロジェクト体制の確立および予算・納期・品質などの管理を行い、プロジェクトを円滑にマネジメントする。
システムアナリスト 経営戦略に基づく情報戦略立案、システム化全体計画策定、個別システム化計画策定を行うとともに、戦略と計画に基づく情報システム構築の推進支援や、システム化と同時に進める業務革新の推進を支援し、それらの結果に関する評価を行う。
アプリケーションエンジニア(狭義のシステムエンジニア:SE) 情報システム構築プロジェクトにおいて、プロジェクト計画に基づき業務要件分析からシステム設計、プログラム開発、テストまでの一連のプロセスを遂行する。
テクニカルエンジニア(狭義のシステムエンジニア:SE) 情報システム基盤(各業務システム共有のシステム資源)の構築・運用において中心的役割を果たすとともに、個別の情報システム構築プロジェクトにおいて、固有技術(例えば、ネットワーク、データベースなど)の専門家として開発・導入を支援する。
プログラマ 情報システム構築プロジェクトにおいて、プログラム設計書作成、プログラム開発、単体テストまでの一連のプロセスを遂行する。
ITサービス オペレーションエンジニア システム運用関連技術を活用し、サービスレベルの設計を行い顧客と合意したサービスレベルアグリーメント(SLA)に基づき、システム運用やリスク管理の側面からシステム全体の安定稼働に責任を持つ。システム全体の安定稼働を目指し、安全性、信頼性、効率性の追求とともに、サービスレベルの維持・向上を図るためにシステム稼働情報の収集と分析を実施し、システム基盤管理も含めた運用管理を行う。
カスタマーサービス ハードウェア、ソフトウェア、設備、施設に関する専門技術を駆使し、顧客の設備に合致したハードウェア、ソフトウェアの導入、カスタマイズ、保守および修理を実施する。さらにIT技術を利用するための施設建設をサポートする。また、導入したハードウェア、ソフトウェアの品質(使用性、保守容易性など)に責任を持つ。
ITエデュケーション 担当分野の専門技術と研修に関する専門技術を活用し、ユーザーのスキル開発要件に合致した研修カリキュラムや研修コースのニーズの分析、設計、開発、実施、運営、評価をする。
営業・コンサルタント マーケティング 企業、事業、製品およびサービスの市場の動向を予測・分析し、顧客ニーズに対応した事業戦略、販売戦略、実行計画、資金計画および販売チャネル戦略などビジネス戦略を企画・立案する。立案したビジネス戦略の投資効果、新規性、顧客満足度に責任を持つ。
セールス 顧客における経営方針やビジネス戦略を確認し、その実現のための課題解決策の提案、ビジネスプロセス改善支援およびソリューション、製品、サービスを提案し、成約する。顧客との良好な関係を確立・維持し、顧客満足度を高める。
ITコンサルタント 知的資産、コンサルティングメソドロジを活用し、顧客の経営戦略やビジネス戦略およびIT戦略策定の相談、提言、助言を通じて、顧客の戦略やビジョンの実現、課題解決に貢献し、IT投資の経営判断を支援する。提言がもたらす価値や効果、顧客満足度、実現可能性などに責任を持つ。
表1 IT業界の職種

■各局面でのプレーヤー

 ここでは、第2回「ソフトウェア業界のビジネスモデルと有名企業を知る」で説明したシステム構築の工程を活用し、それぞれのプロセスにおいて、どういう職種の人たちがプレーヤーとして活躍しているのか、概略を示す。表2の色付けしている部分が各職種における主たる活動局面で、「こういう局面でも活躍している」という従局面は薄く色付けした。なお、マーケティングとセールスは、「システム構築プロジェクトをどのように市場に投入するか」「どのように顧客に提言し購入してもらうか」といった仕事になるので、表2では省いた。

職種 IT戦略 システム化構想 システム要件定義 システム化計画 外部設計/基本設計 内部設計/詳細設計 プログラム開発 テスト 稼働準備/導入 システム運用/維持管理
ITコンサルタント                    
プロジェクトマネージャ                    
システムアナリスト                    
アプリケーションエンジニア                  
テクニカルエンジニア                    
プログラマ                    
オペレーションエンジニア                    
カスタマーサービス                    
ITエデュケーション

                   
表2 ※プロジェクトマネージャは各局面に、遂行よりもマネジメント(管理)の立場でかかわる

■ITエンジニアのキャリアパス

 ITエンジニアのキャリアパスは、職種によって多少の相違がある。

 アプリケーションエンジニアは、プログラマとしてスタートを切り、徐々に経験を積んで業務に精通し、成長とともにチームリーダー、グループリーダー、プロジェクトマネージャへとステップを踏み、より大きな役割と責任を担うようになるパスが一般的だ。ただし、単線で表現される1つのパスしか存在しないのではなく、より専門的業務に精通し、その業界を極めていくシステムアナリストに成長したり、企画・計画といった力を伸ばし、顧客のIT戦略立案を支援するようなITコンサルタントに成長するパスもある。

 ITコンサルタントのような上流工程の仕事の場合、新卒で入社してすぐに就くことはなかなか難しいだろう。技術、業務、経営といったさまざまな分野で知識を得て、経験を積み、そのうえで顧客と真摯に対峙する真のコンサルタントとして活躍できるようになるのである。

 また、「できるITエンジニア人材」は、複数の職種の業務を担当しているようである。あるプロジェクトではプロジェクトマネージャ、別のプロジェクトではシステムアナリストとして参画というのも珍しいことではない。また、技術寄りの職種であるテクニカルエンジニアでも、大きなプロジェクトに参画し、経験を積むと、プロジェクトマネジメントを任されることが多くなる。あまり狭く限定して自身の将来を設計し過ぎない方が良いように思われる。

 どのような将来像を描くにせよ、若いうちは1つの職種に限定せず、さまざまな業務を積極的にこなそう。十分な基礎力を身に付けること、幅広な経験を積みながらノウハウを蓄積することが大切である。また、さまざまな役割の人々と協働する中で、より大きなシナジー(相乗効果)を生むよう努力することが重要だ。

 IT業界はまだまだ成熟しきっていない業界であり、また、環境変化が激しい業界でもある。その分、さまざまな活躍の場面やキャリアパスがある業界であることを最後に申し添えたい。 次回は、ソフトウェア業界の代表的なシステム事例を取り上げ、説明する。

(参考)
経済産業省 ITスキル標準
情報処理推進機構 情報処理技術者試験制度概要

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筆者プロフィール
松盛千佳(まつもりちか)
野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部事業企画室 上級研究員 シニア産業カウンセラー


都銀、人材コンサルティング会社を経て、1995年、野村総合研究所に入社。野村総合研究所社内の人材育成企画、次世代幹部育成を経て、現職に至る。専門は、キャリア開発、企業内教育、組織開発である。

連載:就活で使える IT業界マップ バックナンバー


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