ナビサイト編集長が語る2011年新卒の採用傾向 |
ワークス研究所調査によれば、2010年度の大卒求人倍率は1.62倍だった。2009年度卒の2.14倍から0.52ポイントの減少である。今年も引き続き採用人数の減少があるのだろうか。リクナビ編集長の毛利威之(たけし)氏は「これ以上、新卒採用企業数や採用人数が大幅に減ることはないだろう」と予測する。
大卒求人倍率調査
求人倍率=求人総数÷民間企業就職希望者数 (ワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査 2010年卒」より) |
「2008年や2009年は、団塊世代の大量退職による『学生特需』状況でした。データを見ると分かりますが、むしろこの時期の方が特殊だったといえるでしょう。本当に厳しかった『就職氷河期』、つまり1996年(1.08倍)や2000年(0.99倍)と比べると、2010年度卒はそれほど求人倍率は落ち込んでいないことが分かります」。
不況でも新卒採用を継続する背景には、就職氷河期の時代にできた「世代格差」への反省があるという。「企業側は、就職氷河期に新卒採用を控えたために、年代のピラミッド構造を崩してしまった経験があります。そのため、企業の多くが『世代間の人数格差を作ってはならない』と考えています。そのため、たとえ不況でも新卒採用を継続しようとする意思が強いのでしょう」と毛利氏は説明する。
マイナビ編集長の栗田卓也氏も同意見だ。毎日コミュニケーションズの調査によれば、2011年度卒の採用人数予測については、2010年度卒採用がある程度終了した2009年夏時点で、4分の3が「今年度並み」と回答しているという。
そんな中、IT業界は全体よりもやや採用人数を増やす傾向にある。企業全体で見れば、「大幅に増やす」「多少増やす」と回答した企業は全体の5.4%、「今年度並み」が76.3%、「多少減らす」「大幅に減らす」と回答したのは18.3%だ。
一方、「通信・ソフトウェア」では、「大幅に増やす」「多少増やす」が7%、「今年度並み」が79.5%、「多少減らす」「大幅に減らす」が13.5%だった。「増やす」「今年度並み」と回答した企業の割合が、全体よりもやや高い。
全体 |
通信・ソフトウェア |
|
大幅に増やす |
0.2 |
0 |
多少増やす |
5.2 |
7.0 |
今年度並み |
76.3 |
79.5 |
多少減らす |
14.0 |
9.4 |
大幅に減らす |
4.3 |
4.1 |
この状況について、栗田氏は次のように分析している。
「好景気の時代、通信・ソフトウェア業界は、人材を採りたくてもなかなか採れないという状況がありました。学生たちはどうしても、普段から自分たちが接しているパソコンメーカーや大手企業に集中してしまうからです。メーカーや大手企業が採用を控えている今、学生たちにアピールするチャンスだととらえているIT企業が増えています」と語る。
実際「マイナビ2011」では、10月1日オープンから3週間以内に掲載をスタートした企業約4700社のうち、「ソフトウェア・通信」をメイン業種とする企業は全体の12%近くを占めている。「ソフトウェア産業は『人』の手で作られているため、人材は重要な経営資源といえます。また、IT業界自体が若い業界です。ベンチャー企業なども多く、若手を積極的に採用したがっています」と栗田氏は語る。
企業は、採用人数をそれほど減らさない思惑だという。しかし、採用人数をそれほど減少させない代わりに、企業は採用基準のハードルを高くしている。
「内定基準」について、「昨年より厳しくした」と回答した企業は56.8%。2009年度卒採用時より39.3ポイントと大幅に増加している。
2010年卒 |
2009年卒 |
|
昨年より基準を厳しくした |
56.8 |
17.5 |
昨年並み |
41.6 |
77.2 |
昨年より基準を緩くした |
77.2 |
5.3 |
「数年前まではある程度『量を増やす』傾向でしたが、昨年からはどこの企業も『量より質』傾向にあります。欲しい人材を定義して、合致する学生を無駄なく採用しようとする傾向がここ数年ありましたが、去年からその傾向が顕著になりました。今年も昨年と同様、『厳選傾向』となるでしょう。採用のハードルが下がることは考えられない」と毛利氏は語る。
学生が求める人材像に満たない場合は、採用人数が予定より少なくても採用を打ち切る企業が増えているという。栗田氏は、「厳選採用によって、内定をもらう学生ともらわない学生の二極化が進行するでしょう」と注意をうながしている。
学生たちはすでに動き始めている |
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