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IT業界就職戦線

第1回 2011年新卒採用「不況でも新卒採る、ただし学生を厳選」


金武明日香(@IT自分戦略研究所)
2009/10/26

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inu  企業の動きに大きな変化はない。でも学生は……

 企業側の動きはほぼ去年と同じぐらいで、さらに採用人数を大幅に減少させたり、採用そのものを取り止める企業が増えたりするわけではない。しかし、学生の動きは2010年卒と2011年卒でかなり違いが見られるという。一体なぜだろうか。

学生の動きには顕著な変化が見られる

 2011年卒の就職活動生は、2010年卒に比べてかなり動きが早期化している」と両編集長は語る。相当苦しい戦いを強いられた2010年度卒よりもさらに早い活動をしている理由について、毛利氏は「学生の危機意識が強まっているからだろう」と指摘する。

 「2010年卒がちょうど就職活動を始めた頃にリーマンショックがありました。しかし、実は2010年卒の動きがそれほど早かったわけではありません。まだ、学生にとっては不況の実感がなかったのだろうと思われます。しかし、2011年卒の学生は1つ上の先輩たちが苦しんでいる様子を目の当たりにしています。そのため、早期から動く人が増えているのではないでしょうか」。

 「リクナビ2011」の学生登録数にそれほど大幅な変化はない。しかし、アクティブ・ユーザー層が増加している。去年、10月段階で活動をしている学生は登録総数の約6分の1だったが、今年の学生は約3分の1が今から積極的に動いているという。

 「マイナビ2011」では、サイトオープン7日目時点で登録者数が前年度比118%。学生1人当たりの平均エントリー社数にいたっては157%の増加だったという。2011年卒の学生は、「今年の就職活動が厳しい」という覚悟を持ち、実際に行動しているようだ。

 学生の就職活動の動き方にも変化がある。ここ数年、学生は「大手、安定志向」であった。今年もその傾向を受け継いでいるが、2010年卒から「興味の幅の分散化」が起こっているという。

 毛利氏によれば、「業界や職種の絞り込み」をする学生が減ったせいだという。2009年卒までは、「この業界しか受けたくない」「この職業しかやりたくない」と考えて就職活動をする学生が多かった。また、売り手市場だったために、絞込みをした就職活動でもどうにか内定を取ることができたという。しかし、リーマンショック以降、それでは就職戦線を生き残れないと考える学生が増えてきた。そのために、学生は幅広い業界を受験するようになってきていると、毛利氏は分析している。

 理系学生は、あえて他業界を受けてみては

 では、理系学生の動きはどうなのだろうか。

 文系学生と理系学生の比率は、およそ2対1。ここ数年「理系積極採用」をうたう企業は多い。中学生や高校生の理系離れが進んでいるため、今のうちに理系を採用しておきたいという思惑があるからだ、と栗田氏は見ている。また、栗田氏は理系学生に「あえて他業界も受けてみる」よう勧めている。

 「理系は専門を生かしたいと、業界をしぼる傾向にありますが、それではもったいない。IT業界だけではなく、食品やメーカー企業を訪れて、そこにいる技術者に話を聞いてみてはいかがでしょうか。発注する側の視点を今のうちに獲得するチャンスです。いずれ自分が開発側に就職するという思いがあっても、発注する側の人に話を聞いておくのは良いことだと思いますよ。会社に入ったら、就職活動時のように『質問したら何でも答えてもらえる』というチャンスはほとんどありません」と語る 。

inu  2011年卒学生へのアドバイス

 最後に、リクナビ、マイナビの両編集長に、2011年度卒の学生に向けてアドバイスを聞いた。

 毛利氏:「いま、この時期から就職活動をする方がいい。なぜなら、年明けになると説明会やエントリーシート記入などの作業に負われてしまい、自分と向き合う時間が物理的に減ってしまうためです。いまは、業界研究と自己分析をしっかりしておく時期だと思います」

 栗田氏:「年内は情報収集をしっかりと行い、7、8業界を実際に見てみましょう。まずは興味のある分野をひととおり回ってみて、そこから徐々に絞り込んでいくと良いと思います。業界の食わず嫌いをやめると、視野が広がりますよ」

 なお、2010年卒学生は「就職活動前に知っておけばよかったこと」として、「自分の適性」(40.9%)、「業界についての知識」(40.8%)、「一般常識」(38.8%)を挙げている。また、後輩へのアドバイスとしては「自己分析を早く始めた方がいい」が40.3%。次点の「就職についての意識を早いうちから持つほうがいい」の26.5%を大きく上回っている。

就職活動を始めるまでに
知っておけばよかったことベスト3

自分の適性

業界についての知識

一般常識


(毎日コミュニケーションズ「2010年卒 内定状況および採用活動に関するアンケート」より)

 まずは年内から行動すること、年内は情報収集と自己分析を徹底的に行うこと。この2点を頭に入れて、これから就職活動に臨んでみてはいかがだろうか。

◇◇◇

特集「IT業界就職戦線」ラインアップ

 10月の特集「IT業界就職戦線」のラインアップは以下のとおり。

2011年新卒採用:不況でも新卒採る、ただし厳選採用
特集:IT業界就職戦線(1) 
2011年新卒採用について「リクナビ」「マイナビ」編集長に話を聞いた。企業は「量より質傾向」を維持。その中で、IT業界は若手採用に積極的だ

1日のうちでこんなに使っている! 情報システム
特集:IT業界就職戦線(2) 
日々の生活の中で、わたしたちは何気なく情報システムを使っている。どこにどんなシステムが使われているのか、学生の1日を追いながら解説

小野和俊が問う「IT業界は本当に3Kなのか?」
特集:IT業界就職戦線(3) 
アプレッソのCTO&現役プログラマの小野和俊氏が、IT業界の3Kイメージを斬る。「IT業界は3Kと語る人々」の真意を見抜くことが肝心だ

IT業界「6つの疑問」、エンジニアが本音で答えました
特集:IT業界就職戦線(4) 
「仕事と生活の両立は?」「デスマーチって本当にあるの?」「学んだことは役に立つ?」学生が気になる疑問に先輩エンジニアが本音で回答

情報理工学生はグーグルの演奏家・指揮者を目指す
特集:IT業界就職戦線(5) 
情報学部生がグーグルに新卒入社した場合、キャリアパスの道は2つある。グーグルというオーケストラの演奏家、もしくは指揮者になることだ

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