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国際競争時代に突入するITエンジニアに生き残り策はあるか?
日本人ITエンジニアはいなくなる?

第29回 日本人が知らないフィリピン系ITエンジニアの実力

小平達也
2008/7/3

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ITエンジニアの競争相手が海の向こうからやってくる。インド、中国、それに続くアジア各国。そこに住むエンジニアたちが日本人エンジニアの競争相手だ。彼らとの競争において、日本人エンジニアはどのような道を進めばいいのか。日本だけでなく、東アジア全体の人材ビジネスに携わる筆者に、エンジニアを取り巻く国際情勢を語ってもらった。

同じタイムゾーンの中で進む地域的グローバル化

 「時差を利用した24時間開発体制と高い技術力、英語能力」――。これが、インドのITリソースを活用してアメリカが成功している理由だと一般にはいわれている。本連載第23回 「アメリカ人ITエンジニアもいなくなる」の「MY JOB WENT TO INDIA」で、アメリカでは金融業を中心にインドのITサービスを積極活用し、生産性向上を果たしているという点を紹介した。一方で、24時間開発体制などのオフショア開発では、テレビ会議、電話会議を行う場合でも時差の関係があるので「どちらかが無理をして遅くまで起きている(もしくは早起きをする)」必要がある。このような状況を受け、アメリカの多くの企業は同じタイムゾーンにある中南米に注目し、欧州企業は東欧の開発拠点を活用する動きが出ているようだ。

 日本企業を振り返ってみるとどうだろう。同じタイムゾーンの中での最大のエンジニア輩出国はご存じのとおり中国で、時差もわずか1時間である。中国が漢字圏における最大のエンジニア輩出国である一方、最大の英語人材輩出国はインドだが、日本―インド(成田―ニューデリー)間の移動には9時間かかり、時差は3.5時間ある。だが移動時間がその半分で、日本との時差も中国と同じく1時間という英語圏がある――。それがフィリピンだ。

フィリピンのITエンジニアは、高いポテンシャルを持っている

 国際情報化協力センター 情報調査部の保谷秀雄部長は「アジアの中でインドと並び英語が使われているフィリピンでは、政府の雇用対策の一環で3〜4年前からIT産業、特にコールセンターやBPO(Business Process Outsourcing) 市場が急成長している。これらの市場で現在23万人が働いている」と語る。フィリピンのソフトウェア企業400社のうち300社以上は輸出志向企業で、フィリピンの人材も英語能力の高さや優秀さで世界的に注目されている。すでにシンガポールやマレーシアなど各国で雇活躍しているが、同氏によると最近ではインドやロシアの企業がフィリピンの人材に注目し始めているという。

 では、日本企業との関係はどうか。フィリピンの日本向けソフトウェア輸出志向企業は40社ほど。フィリピンソフトウェア産業協会(PSIA)の中には日本市場グループができ、今後積極的に日本企業に対してアピールをしていきたいという考えのようだ。保谷部長によると「受注活動をスムーズに行うためには、さまざまな活動を通じて日本企業が持つフィリピンのイメージを高めることが重要」という。

 「現地の方々はホスピタリティにあふれ、コミュニケーション能力が高い。日本企業との親和性でいうと、アジアの中でも非常に高い部類だ」 (国際情報化協力センター 主任研究員 浅井知子氏)

 技術スキルのみならず、文化的な親和性(カルチャーフィット)とのバランスも考えると、日本企業はフィリピンのITエンジニアにとって働きやすい環境であるといえる。

フィリピン人エンジニアの動向

 実際に現地ITエンジニアの動向を見てみよう。東南アジア8カ国で計500万人以上の登録者を持つジョブストリート・ドット・コムは、フィリピンで最大の就職・転職サイトである。同社のデータを見るとフィリピンで登録しているITエンジニアの合計(ソフトウェア技術者、アドミニストレータ、ハードウェア技術者)は12万6289人であり、同国における登録者全体の7.4%を占めている。

 
フィリピンで登録した人
 
(人)
(%)
ジョブストリート・ドット・コムの登録数
170万5234
 
IT技術者合計
12万6289
7.4
ソフトウェア技術者
5万8838
3.5
ネットワーク・システム・DBアドミニストレーター
4万89
2.4
コンピュータハードウェア技術者
2万7362
1.6
ジョブストリート・ドット・コムのフィリピンで登録しているITエンジニアの合計
(出典:ジョブストリート 2008年5月調べ)

 上記12万6289人のITエンジニアのうち工学および数学・物理学の専攻者は10万3674人で、IT技術者全体の82%にも上っている。日本では文系出身のITエンジニアが多いが、フィリピンの場合はエンジニアリングやサイエンスのバックグラウンドを持つ理工系人材がITエンジニアになっていることも特徴といえるだろう。


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