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@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(40)
『日本経済に関する7年間の疑問』を読む

@IT自分戦略研究所 書評チーム
2008/9/9

■村上龍と日本経済

日本経済に関する
7年間の疑問


村上龍(著)
日本放送出版協会
2006年11月
ISBN-10:414088200X
ISBN-13:978-4140882009
777円(税込み)

 メールマガジン「JMM」の月曜日版に掲載された村上龍のコラム集。1999年3月15日から2006年10月16日まで。失われた10年の後半に当たる。この間、航空機が米国のビルに激突するという事件が起きた。

 日本の経済動向を主軸に、政治と社会、文化とメディアを論じている。村上龍は日本を閉鎖的な社会であると批判している。いずれのコラムにも基調低音のように、その主張が鳴り響いている。

 語り口は率直であり、論旨は合理的である。本質の見極めにこだわる。常識として通用しているいい回し、考え方を徹底的に排除する。2004年の参議院選挙について書いたコラムで彼はこんなふうに書いている。少し長いが、あえて紹介する。

 「投票結果が明らかになって、記者会見に応じた小泉自民党総裁は、『逆風の中の選挙』という表現を使いました。逆風とは何でしょうか。風は大気によって生じるもので、意識も感情もありません。自民党への国民の批判のことを風にたとえたのでしょうが、風は民意とは違います。民意というのは、一人一人の国民の怒りや喜びや絶望や幻滅などが反映したものです」(『日本経済に関する7年間の疑問』、p.232)

 彼は逆風という言葉の真意を小泉氏に問い詰めなかった記者たち全員を批判する。なぜなら、小泉氏は逆風なる言葉を使うことで、自民党への国民の批判という言葉のインパクトを薄めていたから。記者は逆風の意味を問い、国民の批判に対する小泉氏の対応を厳しく問わねばならなかった。そしてまた、小泉氏の発言を耳で素通りさせてしまう日本国民の意識の甘さも同時に鋭く指摘しているのである。

 事象を厳密に把握することの重要性がこの本には書かれている。常に本質を問うこと。いいかげんであいまいな物言いや思考の真意を追求すること。強靭(きょうじん)な思考力を身に付けること。(鰆)

本を読む前に
『戦争の経済学』を読む (@IT自分戦略研究所)
『モチベーションエンジニアリング経営』 (@IT自分戦略研究所)
『格差と希望』を読む (@IT自分戦略研究所)


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