@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(49)
人間はビジネスをする動物
@IT自分戦略研究所 書評チーム
2008/10/2
■1回半ひねりのコミュニケーション
ビジネスに 「戦略」なんていらない 平川克美(著) 洋泉社 2008年6月 ISBN-10:4862482678 ISBN-13:978-4862482679 819円(税込み) |
ビジネスはゲームである。確かに、ビジネスにはゲームの側面がある。そして、ビジネスは生活の糧であるともいえる。さらに、ビジネスは賭博であるといってもいいだろう。もっといえば、ビジネスは暇つぶしかもしれない。遊びかもしれない……。いずれもビジネスのある面をとらえていることは間違いない。しかし、これらの定義のいずれもが、「すでにビジネスが作ってきた多様な世界観に依拠したもの」(『ビジネスに「戦略」なんていらない』、p.19)であるという認識に人はなかなか至らない。
ビジネスの本質に迫るには、もう1つ上の位相に次数を繰り上げる必要がある。「別の言い方をするならば、人間がビジネスをするのではなく、ビジネスをする動物が人間なのだというところまで思考のリーチを延ばす必要がある」(同書、p.20)。
人はなぜ働くのか。この問いに対し、筆者は「ビジネスは1回半ひねりのコミュニケーション」という不思議な言い回しを使って回答する。ビジネスとは、コミュニケーションのことだ。人間と人間、あるいは人間と社会との間のコミュニケーションのこと。そのコミュニケーションが1回半ひねられる。これはどういうことか。
例を挙げる。
車のディーラーと顧客がいる。彼らは売り手と買い手の関係で対峙(たいじ)している。この関係はビジネス上の「建前」を前提としている。彼らは、ビジネスという舞台の上で、売り手であり、買い手であるという役割を演じているにすぎない。ここまででコミュニケーションは、1回ひねられている。彼らにはもちろん「本音」があるが、それは多くの場合、ビジネスの舞台には直接表れない。しかし、「商品やトークを媒介にしてお互いの本音が沈黙のコミュニケーションをしているという光景が見えてくる」(同書、p.24)はずである。ここで半ひねり。
人間はビジネスというインターフェイスを通じて、クールなコミュニケーションを展開する。人間は社会的動物として生きていくためにビジネスを生み出した。ビジネスをする動物が人間である、とはそういうことである。われわれはビジネスによって、他者との慎み深いコミュニケーションを実現している。そんなコミュニケーションの場に「戦略」という概念は場違いだ。(鯖)
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