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@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(60)
地獄への道は善意で舗装されている

@IT自分戦略研究所 書評チーム
2008/10/28

■『あたらしい戦略の教科書』

あたらしい
戦略の教科書

酒井穣(著)
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2008年7月
ISBN-10:4887596448
ISBN-13:978-4887596443
1575円(税込み)

 「戦略」とは、目的地と現在地を結ぶ「ルート」のことである。「戦略=ルート」。これが基本。だから、戦略立案とは、ルート設定のことである。目的地までどのように到達するか、その具体的な手段を考えること。具体的に考えないと、実行することは絶対にできない。ゆえに、戦略は徹頭徹尾、現実的な要素で構築される。ぼんやりとしたイメージでなんとなく作られるものではない。

 第2章以降では、戦略の具体的な立て方が解説される。

 まずは現在地を把握する。あるいは現状を確認する。いまがどういう状況なのかを明らかにする。そのためには何をしなければいけないか。情報を収集するのである。そして、収集した情報を分析する。その結果、現状が把握できる。情報の収集と分析の手法が細かく語られる。

 情報を収集するには3つのステップを踏む。

1) ドライ情報をできる限りたくさん集める

 ドライ情報とは、一般的に公開されている情報。新聞、雑誌、テレビ、Web、書籍などで手に入る。こういう情報を手に入れられる限り手に入れる。たくさん集めれば集めるほど、総体としての情報の信ぴょう性は高まる。

2) ドライ情報をベースにして、インタビューをする

 ドライ情報は手に入れやすいが、情報としての価値は低い。集めたドライ情報を基に、ウェット情報を手に入れる必要がある。ウェット情報とは、公になっていない情報のこと。多くの場合、人の頭の中に入っている。それらを引き出す。ドライ情報の収集は、人からウェット情報を引き出すための事前準備であるといえる。

3) 「Give 5乗」を実践する

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 ドライ情報とウェット情報が収集できたら、今度は、それらを外部に開放する。「Give、Give、Give、Give、Give」。どんどん外に出す。すると、さらに貴重な情報があなたの元に集まるようになる。本当に重要な情報とは、このようなステップを踏まなければ手に入れることができない。

 第3章は、集めた情報を基に、目的地を決定する。目標を設定するのである。目標設定には5つの条件がある。

条件1) リーダーが設定すること

条件2) 3年程度の期間で到達したい目標であること

条件3) 背伸びすればギリギリ届くような高さの目標であること

条件4) 測定できる目標であること

条件5) 利他性のスパイスが入っていること

 そして、第4章。戦略を立案する。最重要ポイントは、計画表の書き方である。計画表は、細かい作業に分割して書かなければいけない。細かい作業とは、いますぐに取り掛かれる程度の作業ということである。1つ1つの作業を確実に遂行すれば、計画全体を完遂できるというようにする。そして、それぞれの作業はいつ始まり、いつ終わるのかを記述しなければいけない。時間設定のない計画表に存在意義はない。

 戦略立案時のもう1つのポイントは「やめるべきことを常に探す」である。新しいことを始めるよりも、実は、すでにやっていることをやめる方が難しい。何かをやめようとするときに壁となるのは周りの人々の「善意」である。「いま弊社がその事業を止めると何万人のお客さまが困ると思っているんですか!」というような善意。「地獄への道は善意で舗装されている」。善意を突破する勢いがないと、一流の仕事とはならない場合がある。

 第5章では、戦略を実行するうえでのノウハウが記述される。人を説得する方法に始まり、組織を前に進ませる方法、邪魔する者を排除したり、協力者に仕立て上げる方法など。計画を実行していくには、心理面での成熟が求められる。(鯨)

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