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特集:勉強会の夏、カンファレンスの夏

第3回 社内勉強会と「勉強会エコシステム」のススメ

市谷聡啓(TIS)
2009/8/26

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課題2 開催しても参加者が集まらない

 社外勉強会なら、参加者候補の母数が大きいため、個人の趣味の度合いが強いテーマであっても、それなりに参加者を集めることができます。一方、社内勉強会では母数が限られるため、参加者を集めるのに苦労することがあります。

 もちろん、参加者を集めることが勉強会の目的ではありません。しかし、先に挙げたように、コミュニケーションのつながりも勉強会の意義の1つです。何よりも、誰も集まらない会議室で1人待ち続ける時間は、自分の心を折るのに十分です。わたしもこれまで何度となく心を折られた覚えがあります。

 何度か心を折られた末に気付いたことは、勉強会のテーマが「仕事を終えた後も残って勉強をしよう」と思えるほどのものになっていない、ということでした。現場から遠すぎず、明日の仕事に生かせるような、つまり、参加者が「自分事」にしやすいテーマ設定が必要だと感じました。

 具体的な事例を挙げます。わたしは有志と社内勉強会のコミュニティを立ち上げ、アジャイルプラクティスという本の読書会を始めました。この本では、まさに、現場の開発者が明日使えるプラクティスを紹介しています。

 この勉強会では、本を読むことよりも、本の内容を題材として、参加者同士が対話する時間を多くとりました。本の内容を自分たちのコンテキストに持ち込むことで、より実践的な勉強会にすることができました。

 なお、この社内勉強会はその後、活動の範囲を大幅に広げて、誰でも参加できる、現場開発者のためのコミュニティ「DevLOVE」になりました。「開発の楽しさを発見しよう、広げよう」「開発の現場を前進させよう」というコンセプトの下、明日の開発に役立つことを目指した勉強会やイベントを開催しています。

課題3 主催者の負荷が高い

 勉強会会場の確保や開催の告知、参加者を集めるための勧誘活動、当日の進行など、本気になればなるほど主催者の負荷は高くなっていきます。そこで、誰か1人でもよいので、一緒に幹事をする人を探しましょう。「この1人さえいれば開催しても良い」と考えれば、先に挙げた「参加者が来ないため心が折れる」問題も乗り越えることができます。

 このように、勉強会を開催していくのは楽しい反面、それなりの苦労もあります。

 ただ、主催者には、苦労がある分メリットもあります。開催場所や開催時期、勉強会のテーマについてある程度、主催者の意思を反映することができます。あなたが開く勉強会を最も楽しみにしている参加者は、あなた自身なのです。主催者が参加したいと思えないテーマで勉強会を開催することはないでしょう。楽しさとコストのバランスを取ることができれば、勉強会の開催をうまく進めることができるでしょう。

勉強会が次に迎える課題〜勉強会のエコシステム化へ

 社内/社外を問わず、開催し始めた勉強会が次に迎える課題があります。「課題3」で挙げた主催者のメリットが、参加者にとってのデメリットとなるのです。主催者=テーマを設定する人となれば、ともすれば、勉強会開催は主催者のエゴになりかねません。エゴについてくる人を参加対象とすれば良い、といえばそれまでですが、主催者と参加者、お互いが幸せになる方法はないものでしょうか。

 また、勉強会はいつ終われば良いのでしょうか。参加者が幸せであれば、いつまでも勉強会を続けても良いかもしれません。しかし、終わるタイミングを誤って、惰性で続けた結果、少しずつ参加者が減っていき、やがて消滅するケースは、次の勉強会開催の芽を摘むことにはならないでしょうか。

 そこでわたしが提案するのは「勉強会のエコシステム化」です。

 人が集まらない勉強会を繰り返した果てに、わたしがたどり着いたのは、「自分たちの勉強会は自分たちで作ればいい」ということでした。以下、わたしが実践していることを中心に具体的に述べます。

 まず、勉強会とは別に、勉強会自体をどう運営していくかの場(以下、メタ勉強会)を設けます。そこでは、どのようなテーマで勉強会を開催したいか、フラットにアイデアを出し合います。参加者がある程度(例えば2人以上)見込めるなら、テーマごとに勉強会を開きます。各勉強会でオーナーを決めて、それぞれで運営を行います。

 メタ勉強会の開催が、新たに勉強会を作り、既存の勉強会を解散するタイミングになります。また、各勉強会からのフィードバックを集め、勉強会の改善を考える振り返りの場とします。

 勉強会エコシステムの狙いは、「みんなで作る(誰もが主催者で、誰もが参加者になる)感覚の醸成」と「フィードバックの取り込み」にあります。このような「勉強会コロニー化」の仕組みがあれば、個々の勉強会にライフサイクルがあったとしても、勉強会のメリットだけを生かし続けることができるのではないでしょうか。さらに、社内から社外へ、社外から社内へと、知識の循環が始まったとき、このエコシステムが生み出す価値は、さらに強化されていくことでしょう。

 あなたの勉強会に参加した人が、別の勉強会を自分で開催するようになる。その勉強会に参加した、また別の人が自分で勉強会を開催したいと思う。人に起きる変化は伝播(でんぱ)していきます。たった1人に起きた変化が、やがて大きな変化へとつながります。ぜひ、社内勉強会を開催しましょう。

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 特集「勉強会の夏、カンファレンスの夏」は明日以降も更新予定。

 エンジニアライフの特設コラムでは特集期間中、特集の裏話などを更新予定です。コメント欄には、特集へのご意見やご感想、「この夏、初めて勉強会に行きました」「今度、初めてあのカンファレンスに参加する予定です」「初めて勉強会を主催してみました」など、勉強会やカンファレンスにまつわる「初めて」のエピソードの投稿を募集しています。

筆者プロフィール
市谷聡啓(いちたにとしひろ)

ハンドル名はpapanda。
明日の開発現場のためのコミュニティ「DevLOVE」を運営している。
コミュニティと仕事、それぞれの活動が相乗効果を生むよう、コミュニティ・ワークバランスを目指している。

ブログ:papandaDiary - Be just and fear not.

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