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特集:勉強会の夏、カンファレンスの夏

第4回 牧大輔氏インタビュー「YAPCで人とのつながりを」

岑康貴(@IT自分戦略研究所)
2009/8/27

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「企業ユーザー向け」を意識する

―― 先ほど「企業向けをちゃんとやっていく」というお話がありました。今年のタイムスケジュールを見ると、「一般」「ハッカー」「基調講演」のほかに「コーポレートトラック」が新しくできていますよね。

 はい。今までは運営側、例えば宮川(達彦)さんや竹迫(良範)さん自身が聞きたい、という内容のセッションを中心にやっていました。でも今年は「それ以外の人」にも広げていきたいんです。もちろん今までのものも技術的には面白いんですが、レベルが高過ぎることがよくあるので(笑)。

 「Perlは企業でもこういうことに使われているんだよ」ということを伝えるのがコーポレートトラック。これまでPerlといえば「Web」、しかも「CGI」というイメージが先行し過ぎていて、実際に使われている状況をなかなか伝えられていなかったと思うんですよね。コーポレートトラックはその辺りを感じてもらえるように考えています。これから仕事でPerlを使おうと考えていらっしゃる方など、今までYAPCには来なかったような幅広い方に聞いてほしいです。

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―― 今年は研修も行うそうですね。

 YAPC::Asiaだけでなく、YAPC::NA(北米)やYAPC::EUなどでも研修を合わせて行うようになってきています。これもPerlが「ハッカーのためのもの」だけではなく、実際にビジネスシーンでも使えるし、実際に使っているということを伝えるための施策の1つです。

―― お値段の方はそれなりにするようですが……。

 企業の方たちに「来る口実」を与えている、という側面があります。内容には自信があるのですが、あんまり安過ぎると、逆に上司の方に「本当にそれ、意味あるの?」といわれたりするらしくて。

 そもそも本編のチケットの方がぎりぎりまで安くしてあるんです。YAPC::NAなんかはチケットがもっと高いんですよ。Asiaの2〜3倍。英語で行われる研修は通訳もなるべくあてるつもりですし、それらの状況や東京の場代、相場なんかを踏まえた上で、適正価格ではあるかなと思います。

 こうした企業向けに力を入れていきますが、もちろんそれ以外の部分、メインセッションなどの中身も昨年同様、しっかりやっていきます。

―― ちなみに、「ハッカートラック」と「一般」との線引きはどのように……。

 ハッカートラックは、Perlの深い知識や、Perl以外の知識を必要とする上級者向けのセッションです。「お好きな方向け」とでもいいましょうか。

牧さんの(個人的な)お勧めセッションは?

―― 今年の特徴を教えてください。

 今年は全体的には非同期プログラミングの話が多いですね。

―― お勧めのセッションはありますか。

 どれもお勧めなのですが、宮下(剛輔)さんが話す「ペパボでのPerlのつかいかた」が企業の方には入りやすいかもしれません。PerlをWebサービスのフロントエンドで使うのではなく、インフラ部分や内部APIで使うという話は、聞く方によっては意外な内容かもしれません。

 宮川さんの「Event programming fun with AnyEvent and Coro」は非同期プログラミングフレームワークのAnyEventとCoroについてのセッション。非同期プログラミングを学びたい人にとっては、いいイントロダクションになるのではないでしょうか。

 Florian Ragwitzさんの「Tomorrow.pm」はハッカーの人にお勧めです。この人は若い方なのですが、Mooseなどのハックをかなりやっている。

 個人的に気になっているのは、Yuval Kogman(nothingmuch)さんの「記憶」。Mooseを使ったオブジェクトグラフストレージについて話してくれるらしいので、早く聞いてみたいです。

 そうそう、セッションをただ聞くだけではなくて、実際にスピーカーと直接話すといいと思います。話しているとき以外は皆さん、うろうろしていると思うので。ハッカーの方たちは技術情報をどんどん交換してほしいし、お仕事を探している方たちは、折角企業の担当の方たちが出てきているので、ネットワークづくりをされるといいと思います。

―― 結構、スピーカーと話す機会はありますよね。むしろ推奨というか。

 その通りです。海外スピーカーの場合だと言葉の壁があるから大変かもしれませんが、話せばなんとかなります。折角の機会なので、チャレンジしてみてください。

YAPCは「人とのつながり」を作る場だ

―― 根本的な質問で恐縮ですが、牧さんはなぜYAPC::Asiaを団体を作ってまで運営していこう、と考えたのですか?

 Perlは僕の社会人としての基盤をくれた言語です。Perlに出会うまでは別の言語を使っていたのですが、Perlを通して本当の意味でプログラミングやオープンソースについて学んだと思っています。だから、Perlに恩返しをしたいんです。

 今後は恩返しの1つとして、「YAPC」という名前でなくてもいいのかもしれませんが、Perl好きな現役プログラマ以外の人にもPerlの良さを伝えていきたいと思っています。1つは企業ユーザーさん。もう1つが、これから社会人になる人たちです。特に学生さんたちに対しては、「Perlってこんな言語なんだ、こういうことをやっている技術なんだ」ということを感じ取れる場として育てていきたいと思います。

―― では最後に、来場する方にメッセージをお願いします。

 運営の中心になったことで、来場予定の方からいろいろお話を聞くことが増えました。結構多いのが、「すごくコアな催しなんじゃないだろうか」とおびえているケース。そんなことないですよ。こんなにゆるいカンファレンスはほかにありません。

 静かにセッションを聞くだけがYAPC::Asiaではありません。人とのつながりを作る場として役に立つと思います。Perlという言語に限らず、いち技術者として横のつながりをどんどん作ってほしい。皆さん、怖がらずに来てね。

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 特集「勉強会の夏、カンファレンスの夏」は明日が最終回。

 エンジニアライフの特設コラムでは特集期間中、特集の裏話などを更新予定です。コメント欄には、特集へのご意見やご感想、「この夏、初めて勉強会に行きました」「今度、初めてあのカンファレンスに参加する予定です」「初めて勉強会を主催してみました」など、勉強会やカンファレンスにまつわる「初めて」のエピソードの投稿を募集しています。

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