第4回 宮下剛輔――「自分を知ってもらう努力をしよう」
岑康貴
2008/7/1
■勉強したければ、自分で講師をやるべし
「一緒に何かをやる人がいるっていうのは、楽しいですよね。実際にはみんな、そういったことを意識せずにコミュニティ活動をしていると思いますけど」
コミュニティ活動をする理由を尋ねると、宮下氏は少し考え込んだ後、そんな言葉を発した。
「それに、会社の外に出てきて勉強会やコミュニティで発言する人は、やっぱりスキルが高いんですよ。だから、そこから得るものはすごく多いし、刺激も受ける。自分を成長させる場として最適だと思います」
積極的に社外で活動するようになってから、エンジニアとして大きく変わったと宮下氏は話す。一方で、社内での勉強会も以前はよく開催していたという。
「一時期、すごく頻繁にやっていました。ただ、自分が学びたいテーマではなく、社員にとって必要なテーマを選んで講師をしていたんです。だから資料作りが面倒な割に、自分が得られるものが少なくて、いまはやっていません。社内でも社外でもそうですが、対象となることをしっかり勉強しないと人前では話せない。だから、勉強したいことがあったら、自分で講師になるのが一番いいんです。他人に講師をしてもらうのではなく」
社内でもそういっているのだが、積極的に講師となって社内勉強会を開催してくれる人は出てこない、と宮下氏は笑う。今後、社外でも勉強会を主催するつもりはないが、スピーカーとして話すことは続けていきたいという。
■「paperboy&co.の宮下です」
社外でのコミュニティ活動について、会社の仕事との関係はどのように考えているのだろうか。
「勉強会などに仕事の時間を使って出るのであれば、やはり当然、フィードバックは求められます。だから、そこで得たものは仕事にフィードバックするようにしていますよ。会社ではPHPでの開発が多いので、直接生かすというのは難しいんです。でも例えば先日リリースした『30days Album』は、裏側のシステムはPerlで作っています。使っているソフトウェアもPerlでできているし、そういうところでPerlコミュニティから得られた知識やスキルを生かしています」
会社の理解もある。外で話すのも勉強だし、会社のアピールにもなるという考えだ。意外なようだが、paperboy&co.はそれまで、エンジニアが積極的に外に出て行くという風潮があまりなかったそうだ。
「だから、社外で(スピーカーとして)しゃべるときは、必ず社名を出すようにしているんです。paperboy&co.の宮下です、と」
社名を背負って活動する。コミュニティ活動における、重要な戦略といえるかもしれない。
■自分を知ってもらう、ということ
最後に、かつての宮下氏のような――勉強会に行っても、懇親会に出ず、誰にも話し掛けずに帰ってしまう――人に向けて、メッセージをもらった。
「覚えてもらえる何かを作るといいと思います。それをブログに書いたりとか、例えばPlaggerだったらプラグインを書いて公開するとか。Web上で目に付くものを作って公開しておくと、意外とみんな、見ていたりする。それが話し掛けるキッカケになるんです。僕も以前は、そのまま帰っちゃう人だった。でも実は結構、目立ちたがり屋でもあるので、目立つことをしてやろうと思っていたんです。自分を知ってもらう努力はすごく大事だなって思いますね。Perlの技術に関しても、こういうことをやってるよって普段からいっていると、こちらから頼まなくても、こういうコードがあるよ、いいモジュールがあるよ、こういうふうにするといいよっていう情報が来るようになるんです」
ブログを書いて、すごいエンジニアにこちらを見てもらおうとした。スピーカーとして話したら、みんな自分を知っているから話しやすくなった。宮下氏は一貫して、「自分を知ってもらえば、周りから来るようになる」というスタンスを取っている。だからこそ、自分を知ってもらう努力を誰よりも大切にしているのだ。
「テクノロジーの話に限らないんですよ。例えば、僕はドクターペッパー大好きっていい続けてきたんです。そうしたら最近、会う人がドクターペッパーを手土産に持ってきてくれるようになってきた。スピーカーとして話すときも、普通は壇上に水が置いてあるところを、ドクターペッパーが置いてあったり。ほかにも、ゲームではメタルギアソリッドシリーズが大好きで、そのことをいい続けていたら、どこどこに等身大の人形があったよとか、サントラが出てるよ、とか。それが自分のブランディングにもなるし、情報も集まってくる」
宮下氏が語る「自分ブランディング」は、まさにコミュニケーションの基本だ。その積み重ねが、コミュニティでも会社でも、自分に最適なポジションを与えてくれるのだと付け加える。
「当たり前のようですけど、自分の好きなことや、やっていることを生かせる場を、周りが用意してくれるようになるんです。コミュニティじゃなくても、職場の中でもそうですよね。直接、一緒に仕事をしている人しか、自分のしていることって分からないと思うんです。でも、もっと広くアピールしていくと、職場の中でも自分に最適なポジションが来ると思うんですよ」
自分を知ってもらうこと。ブログを使ってそのことを追求したシャイなプログラマは、コミュニティで周りから多くのものを得た。そこには、現代のITエンジニアが仕事をするうえでの、大きなヒントが眠っている。
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