自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |

最終回 オープンイノベーション時代における勉強会の価値

よしおかひろたか
2009/7/7

エンジニアの開催する勉強会が増えている。本連載では、かつてシリコンバレーで「勉強会の文化」に身を置き、自らも長年にわたって勉強会を開催し続けている「生涯一プログラマ」のよしおかひろたか氏が、勉強会に参加し、開催するためのマインドとノウハウを紹介する。

第8回1 2次のページ

 昨年(2008年7月)に開始したこの連載も早いもので1年である。今回が最終回なので、勉強会にかかわるこの1年の動きを振り返ってみた。

 「IT勉強会カレンダー」をはなずきんさんが公開したのが2008年4月。それによって、日本全国、多くの勉強会が活発に開催されている、という事実が可視化された。わたしを含め、勉強会主催者たちは「勉強会がたくさん開催されている」と感じてはいたが、IT勉強会カレンダーが出てくるまで、これほど多くの勉強会が開催されているとは思っていなかった。

筆者注:ここでいう勉強会とは、勉強会主催者によって自発的に=ボランティアで開催されている非営利のセミナーなどを指す。商用の教育セミナーやイベントは含まない。規模は数人から100人程度までの比較的小さいものを指す。参加費用については、無償か、経費の割り勘程度が多い。コミュニティ活動の一環として勉強会を開催する場合もある。厳密な定義はここではしないことにする。なお、IT勉強会カレンダーに載っている勉強会はその名のとおりIT系の勉強会が多い。

 わたし自身、「オープンソースカンファレンス2008 Nagoya」の「勉強会コミュニティ大集合」に参加して、地方都市においても活発に勉強会が開催されていることを知った。その後、福岡、仙台、札幌、大分、金沢などに行く機会があり、地元の勉強会主催者の皆さんといろいろなことを話した。それぞれの都市で独自の展開が図られていて、大変興味深かった。東京や大阪の勉強会とは違った強みや特徴があるように感じた。

エンジニアライフ
コラムニスト募集中!
あなたも@ITでコラムを書いてみないか

自分のスキル・キャリアの棚卸し、勉強会のレポート、 プロとしてのアドバイス……書くことは無限にある!

コードもコラムも書けるエンジニアになりたい挑戦者からの応募、絶賛受付中

 例えば、参加者数は大都市と比べれば少ないが、少ないが故に参加者が「プログラマだけしかいない」などのように偏らず、Webデザイナー、営業系など、幅広い層が参加している傾向にある。行政との距離が近いケースも多く見受けられた。職場と自宅が近いので、終電がなくなってタクシーで帰宅しても経済的にそれほど負担にならず、飲み会が充実している、という話も聞いた。もちろん地方都市としての課題はあるが、課題についてそれぞれの地域が情報交換をしつつあるのだそうだ。

 この連載を通じて、勉強会への参加を勧めるだけではなく、勉強会の開催そのものを勧め、学生さんには就職活動として利用するという活用方法も勧めてみた。

 わたしはこの連載の執筆を通じて、勉強会そのもののメカニズムの解明に興味を持った。

勉強会を開催するメリット>勉強会を開催するコスト(個人的な負担)
(勉強会の法則)

  勉強会開催のメリットが開催コストを上回っていれば勉強会は開催されるし、その勉強会は継続する。勉強会開催・運営のノウハウやTipsを交換することによって、勉強会開催のコストを下げられれば、結果としてますます良質な勉強会が同時多発的に自然発生し、開催されることになる。

1年間の振り返り――実現できたことと、新しい課題

 勉強会の運営ノウハウを共有し、よりよい勉強会を開催するために、さまざまな活動を行った。最初は「オープンソースカンファレンス2009 Tokyo/Fall」の「勉強会大集合」を企画し、勉強会ごとに運営について発表をしてもらったうえでパネルディスカッションを行った。

 さらに勉強会大集合の連絡用メーリングリストをきっかけに、勉強会主催者のためのコミュニティ「勉強会勉強会」を立ち上げた。

 勉強会の価値、あるいは開催者にとってのメリットは、それぞれの勉強会が目指すところによってまったく異なっている。しかし、運営のコストや手間暇を減らす方法、すなわち運営ノウハウはかなり共通化できるのではないかと考えた。「Internet Week 2008」「Developers Summit 2009」などを通じ、多くの勉強会主催者――いわば勉強会の達人たちと議論を交わしつつ、勉強会のベストプラクティスを模索してきた。

 勉強会勉強会では、勉強会開催のためのさまざまなノウハウが蓄積されている。例えば、

  • 勉強会の会場の探し方

  • 勉強会の開催告知

  • 勉強会の運営

  • 受付

  • 当日の運営

  • 司会の方法

  • 動画配信方法

  • 懇親会の開催方法

  • 発表資料の公開方法

などである。これらは文書化(形式知化)することによって、ほかの勉強会でもすぐに実践できる事柄である。実際にいろいろ試してみて、さらに改良することが可能だ。

 「勉強会そのものを勉強する」という勉強会勉強会は、勉強会運営の実験台としても機能した。多くの勉強会主催者の参加を得て、2009年6月6日にはついに「勉強会カンファレンス」を開催するに至った。

 勉強会カンファレンスでは、100人を超える勉強会主催者(あるいは予備軍)が参加し、議論した。勉強会主催者はIT勉強会カレンダーがあろうがなかろうが勉強会を主催していると思うが、IT勉強会カレンダーが可視化しなければ、勉強会カンファレンスを開催するという発想にすら思い至らなかっただろう。

 IT勉強会カレンダーがあってもなくても勉強会はそこにある。それは間違いないと思う。しかし、IT勉強会カレンダーによって勉強会大集合があり、勉強会勉強会が立ち上がり、多くの勉強会主催者が「自分たちは孤独ではない」ということを発見した。そして積極的に勉強会開催ノウハウやTipsなどの情報を交換し始めた。

 IT勉強会カレンダーが登場して、まだたったの1年である。たった1年で100人を超える人たちが集まる勉強会カンファレンスが開催されたのである。

 この実験を通じてわれわれが学んだことは何か。それは、勉強会の運営については(十分ではないとしても)ある程度は形式知化できたが、勉強会そのものの価値を伝えることについてはまだ十分でないし、また価値そのものを言語化できていない、ということだった。

  勉強会は日本全国さまざまな場所で開催され、技術者にとって自己啓発、社外人脈の構築、新しい価値の創造などに活用されている。勉強会カンファレンスによって、勉強会運営ノウハウの共有、勉強会主催者同士のネットワーク化には一定の成果があったと思う。しかし、「勉強会の価値の形式知化」は十分ではないと思っている。

第8回1 2次のページ

» @IT自分戦略研究所 トップページへ » @IT自分戦略研究所 全記事一覧へ

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。