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自分戦略研究室 Book Review(9)
新人に読んでほしいこの4冊

大内隆良、千葉大輔、長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所 編集担当)
2006/4/26

 新人にとっては、会社で見聞することは何もかもが新しいことであり、未知の話題であり、驚きであり、時にばかげたことだったりするであろう。

 新人のうちに読んでほしい本というのはあるのだろうか。ぼくも約20年ほど前に、「読んでおいた方がいいよ」と推薦された本があった。その本とは、『ゲーデル,エッシャー,バッハ あるいは不思議の環』(ダグラス・R・ホフスタッター著、白揚社)。どんな本かはここで説明しないが、とにかく読むのに苦労した。誰に聞いても「新人に推薦するような本じゃないな」という。なぜこの本だったのだろうか。聞いてみたいが、そもそも、どの先輩に薦められたのかもあやふやだ。

 そこで今回は、ぼくよりも新人に年齢が近い編集者2人に、新人にお薦めしたい本を2冊、それぞれ紹介してほしいと依頼した。果たして2人はどんな本を取り上げたのか。もちろん新人だけでなく、若手のITエンジニアにも推薦したい。それではどんな本が取り上げられているのかを確かめてみよう。

今回の書評者とプロフィール
千葉大輔新卒でアイティメディアに入社した社会人2年目。昨年はJOB@ITのサービス運営を担当。今年4月から@IT自分戦略研究所の編集担当に。現在、先輩たちのアメと鞭で、日々新しい仕事に取り組んでいる。
長谷川玲奈オフコン開発エンジニア、製品デモンストレータを経て、2005年1月にアットマーク・アイティ(現アイティメディア)に入社。現在、@IT自分戦略研究所の編集を担当。記事ネタは元同僚との飲み会から仕入れることも多いという。

今回取り上げる本
オトナ語の謎。
人月の神話――狼人間を撃つ銀の弾はない
上司も先輩も教えてくれない 会社のオキテ
パソコンプログラミング入門以前

 

オトナの世界の参考書

オトナ語の謎。

糸井重里監修、ほぼ日刊イトイ新聞編
新潮社
2005年3月
ISBN:4101183120
580円(税込み)

 社会人になると必ず遭遇する不思議な言葉。その名も「オトナ語」。先輩社員や上司からあまりにも自然に言葉が発せられるため、「分かりません」ともいいづらい。ただただ、愛想笑いを浮かべて「はい、分かりました」と棒読みで答えてしまう。新人ならば、日々そのような場面に遭遇するはずだ。

 後で意味を調べようと思っても、辞書に載ってない、載っていてもやっぱり意味が分からない、ということが多々ある。「オトナの世界」には学生時代にはまったく知らなかったルールや言葉があり、新人とってオトナの世界はまるで異世界のようなものである。分からないことだらけの異世界に迷い込んで途方にくれる新人……。そんなときに道しるべになってくれるのが、この『オトナ語の謎。』である。

 オトナ語の世界は、横文字の言葉や略称があふれている。そのうえ、あいまいもことした表現が飛び交っている。本書は軽妙な語り口でオトナ語の世界を時におかしく、時に鋭く、時によりあいまいな形で私たちに伝えてくれる。オトナ語はとても不思議だ。オトナ語で話されると、よく分かったような気になるが、実のところよく分かっていないこともある。そんな感覚がオトナの世界の入り口なのかもしれない。

 不思議な感覚を抱きつつも、読み進めていくと、知らず知らずのうちに「あるある」とうなずいたり、「その言葉はそういうシチュエーションで使うのか」と教えられたりするだろう。それはあなたが、1歩1歩オトナの世界に足を踏み入れている証拠である。この本を読み終わって、「ペンディング」「ウェルカムです」「なるほどですね」などが自然に出るようになれば、もう立派に(?)オトナの仲間入りができたということかもしれない。

 ぜひとも、社会人になりたての方やこれから社会人になる方は、マストで予習していただいて社会人生活をいい感じでやっていただけますと幸いです。よろしくお願いします。

 

古典をひも解くことで知見や答えを得る

人月の神話――狼人間を撃つ銀の弾はない

フレデリック・P. ブルックスJr.著、滝沢徹、富澤昇、牧野祐子翻訳
ピアソン・エデュケーション
2002年11月
ISBN:4894716658
3045円(税込み)

 本書は一見、ソフトウェア開発のための「技術書」と思われるかもしれない。しかし、実際はプロジェクト管理について、またプロジェクトチームなどの「組織」について論じられている。

 本書で描かれているシステム開発における問題点の多くは、私の周辺の話を聞いたり、雑誌や書籍、Webサイトの記事を読んだりする限り、いまだ解決されずに残っている。そして多くのITエンジニアたちを悩ませ続けている。だからこそ、原著が出版されてから四半世紀以上経過しても、この本の魅力が色あせずに「古典」としていまも読まれ続けているのだろう。

 これからソフトウェア開発に携わろうとする新人にとって、「ブルックスの法則」(遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加はさらに遅らせるだけだ)に代表されるようなプロジェクトにおける人と月(時間)の関係性や、著者が再三にわたって記述しているコミュニケーションの重要性は、想像しにくいことかもしれない。

 しかし今後、人員や時間に余裕がなく、スケジュールの遅延が起こり、人員が追加されても進ちょくに劇的な改善が見られず、さらに混乱してくといった開発現場に遭遇する可能性は高い。

 苦しい現場に置かれたときに自分に何ができるのか。何をするべきなのかを想像しながら読んでほしい。経験がない時期だからこそ、ITエンジニアである先輩たちがソフトウェア開発においてどのようなことで悩み、つまづいているのか知っておくことが重要である。

 古典をひも解くことで、自分なりの知見や答えを得られることも多い。そういった意味でも本書は必携の一冊であり、ぜひ、エンジニアを志す多くの人に読んでもらいたい本である。

 

「おいしいカレーの作り方」で知る課題発見解決能力

上司も先輩も教えてくれない 会社のオキテ

リクルートキャリマガ編集部、サカタカツミ著
翔泳社
2003年5月
ISBN:479810423X
1260円(税込み)

 新入社員の皆さんは、いま期待と不安でいっぱいの思いでいることでしょう。学生時代との違いに戸惑うことも多いと思います。そんな皆さんに「会社とは何か、働くとはどういうことか」を教えてくれる1冊です。一歩先を行く先輩のように、社会人の基本となるさまざまなことをやさしく語ってくれます。

 本来ならば、これらは働くうちに自然と分かってくるものだと思います。しかし本書にも指摘されているのですが、会社の新入社員を育てる力が落ちてきているいま、こういった本をあらかじめ読んでおくことも重要だと思います。

 冒頭に「社会人の基礎」が3点挙げられていますが、何だと思いますか。答えは「体力」「ストレス耐性」「読み書きそろばん(PC)」。「なぜ体力?」と思ったら、ぜひ読んでみてください。なぜ重要かが分かります。

 「おいしいカレーの作り方」から始まる、課題発見解決能力を磨くエクササイズは面白く、学べることが多いと思います。ここでの重要なポイントの1つが、「結果と目的を明らかにする」ことが大切だということ。仕事では結果がすべてであり、そのために目的を設定して取り組むことが必須なのです。学生時代との大きな違いの1つです。

 そのほかにも日報の有効活用法、人脈のつくり方など、社会人として役に立ついろいろなエッセンスが紹介されています。

 作業の締め切りも、新しく覚えなければならないこともどんどんやってくる中、忙しい状況に流されてしまうことはとても簡単です(自戒を込めて)。後悔することのないように、自分がいまどうすべきかを常に考え、仕事から学んでいってください。

 「プロセスに無駄があり、もっと効率よくできる方法がある」という種類のものでない限り、やっていて何も得られない仕事なんてないと思っています。一生懸命頑張ったことであれば、必ず次の道につながります。皆さんのご活躍をお祈りしています。

 

プログラミングに携わるすべての人へ

パソコンプログラミング入門以前

伊藤華子著
毎日コミュニケーションズ
2002年4月
ISBN:4839907234
1680円(税込み)

 プログラミングに必要な基礎事項を、初心者にも理解しやすいように解説した本です。1998年の初版発行以降、多くの人に読まれています。新人エンジニア時代にはプログラミング用語や基本的な考え方を、編集者として修行中のいまは、分かりやすく説明することの重要さを教えてくれる、わたしにとって大切な1冊です。

 かつてわたしは、文系学部出身のITエンジニアでした。学生時代にPCに触っていたとはいえ、電子メールやWebサイトの閲覧、ワープロソフト、表計算ソフトを使う程度。それがちょっとしたきっかけからITエンジニアを目指し、システム開発会社に入社したのです。

 出社初日から分からないことの連続でした。「それデフォルトだから」という先輩社員の言葉に途方に暮れ、PCのセットアップではLANケーブルを挿す口を間違え(当時社内LANがトークンリングで、カードは2枚挿しだったのです)、「16/4っていっただろ!」(もちろんその言葉の意味も分かりません)と怒られました。

 当時のわたしはまさに、「何が分からないのか分からない」状態。周囲を飛び交う意味不明な用語にしても、それが一般のビジネス用語なのか、IT用語なのか、社内用語なのかも分からないありさまでした。プログラミングの研修が始まってもそんな状態は続き、用語を1つ調べればその解説に5つは知らない用語が出てくる始末で、時間がかかって仕方ありません。そんなとき、まだ学生だった友人に薦められたのがこの本です。

 「入門」ではなく入門「以前」というタイトルと、かわいいひよこの絵がステキです。いかにも初心者にも抵抗なく読めるという感じ。全体は6章で構成され、プログラム言語の歴史、プログラムの作り方や部品、データや処理の流れなどについて、丁寧に分かりやすく解説されています。例えばスタックは最後に入れたデータを最初に取り出せるので「バケツに洗濯物を入れる状況」、キューは最初に入れたデータを最初に取り出せるので「銀行のキャッシュコーナーに並んでいる人の列」と説明されています。想像のしやすい例えだと思いませんか?

 これまでプログラミング経験のなかった人には、特に2章「プログラムの作り方」の○×ゲームの行動分解が役に立つでしょう。○×ゲームの開始から終了までを文章で説明してからフローチャートに落とし込む過程は、読んで面白く、プログラミングの全体像がつかみやすくなると思います。

 サンプルコードや具体的なテクニックではなく、すべての基礎となる考え方が書かれているこの本は初心者はもちろん、プログラミングを経験した人が読めば知識が整理され、より理解が深まるはずです。

 わたしが購入した初版本は、繰り返して読み、コーヒーもこぼしたのでかなり汚れてしまいました。それでもいつか後輩に引き継ぐのが夢で、今度こそ新人さんに渡してあげよう! と毎年思っていたのですが、「今年の新人は全員Javaをマスターしてきているらしい」「今年の新人は自宅にLinuxサーバを何台も立てていて、ヤフオク(Yahoo!オークション)でAS/400(現在のSystem i5)も手に入れているらしい」などのうわさをいちいち真に受け、とうとう誰にも渡さずじまいでした。少し後悔しています。プログラミングに携わるすべての人に読んでほしい内容だと思っていますので。

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