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Book Guide

2008/4/14

自分戦略(キャリアビジョン)やスキル、それにキャリア全般に関連する書籍を紹介します。

■今回のオススメ
ITエンジニアにも必要な内部統制の知識
内部統制を高めるIT統制と監査の実務Q&A 第2版
●あずさ監査法人IT監査部編
●中央経済社 2007年8月
●3150円(税込み) 978-4-502-27750-4

 今月より本適用された、金融商品取引法の内部統制報告制度(通称:日本版SOX法)。このことはITエンジニアにとっても他人事ではない。管理しているシステムが内部統制の範囲に該当する場合、業務に影響を及ぼす可能性があるためだ。具体的には、「システム開発業務と運用業務が別の担当者により実施されているか」「機密データへの権限者以外のアクセスが制限されているか」などの観点から、リスクを低減するための統制活動を明確にしたうえで統制活動の客観的な証明を行い、監査法人による監査への対応をすることなどが挙げられる。
  本書は、ITの観点から内部統制および監査について説明しており、ITエンジニアが必要な知識や作業手順を把握しやすいつくりとなっている。土台となる内部統制の知識についても、日本版SOX法も含めた内部統制の概念やITを統制する際の観点、混乱しがちなIT全般統制とIT業務処理統制の関係などがまとめられている。編者が監査法人であるため、監査人の心得や監査手順、監査技法の監査人としての要素およびIT全般統制やIT業務処理統制の監査の観点が書かれており、内部監査を行う際には有益だろう。巻末には日本公認会計士協会の資料などもまとめられ、重宝する。
  内部統制は、法制度として今後も毎年継続的に運用されるものだ。そのため、内部統制や監査の観点は、今後の新システムの開発や既存システムの変更時、配慮すべき点として求められることが予想される。現在、内部統制とは直接かかわりのない人にも押さえておいてほしい内容が盛り込まれており、今後の業務を円滑に進めるためにもお薦めしたい1冊である。
富士通ラーニングメディア講師・萩原潤一

■3月24日のオススメ
いつまでも現役でいるためには何が必要なのか
プログラマー現役続行
●柴田芳樹著
●技術評論社 2007年9月
●882円(税込み) 4-7741-3199-7

 IT業界で根強くいわれる「プログラマ35歳限界説」。それには、新しい技術に追従できなくなったり、若いころと比べて、気力や体力が衰え、激務に耐えきれなくなってしまうという加齢からくる限界、あるいはそれまでは現場で活躍していても、35歳くらいになるとマネジメントに主軸を移すことを求められ、プログラミングの一線から退いていくというキャリアとしての限界があるだろう。
  47歳で現役のプログラマとして仕事をしている著者は、「プログラマーとして一線で活躍できるかどうかは、年齢ではなく、『その人がソフトウェア開発に対してどのように取り組んできたか』という姿勢に大きく左右される」と加齢ではなく、個人の能力次第と一蹴する。
  著者は現役続行に必要な7つの能力として、「論理的思考力」「読みやすいコードを書く力」「継続的学習力」「コンピュータサイエンスの基礎力」「朝型力」「コミュニケーション力」「英語力」を挙げる。プログラマとして活躍し続けるには、多くの知識を吸収すること、そして知識の吸収を継続的に続ける必要があるということを、自身の経験を交えながら解説する。
  また『ソフトウェア開発の名著を読む』(技術評論社)という著書もある著者らしく、本書では各所で、数多くのソフトウェア開発の名著からの引用があり、多くの参考文献の情報を得ることができる。
  プログラミングが好きで、「ずっとプログラマを続けたいが……」と悩むITエンジニアや、これからIT業界に足を踏み入れようとする学生に読んでほしい1冊だ。(@IT自分戦略研究所 千葉大輔)



 


■3月17日のオススメ
多くの人にとって使いやすいWebコンテンツを
Webアクセシビリティ――標準準拠でアクセシブルなサイトを構築/管理するための考え方と実践
●Jim Thatcher、Michael R. Burks、Christian Heilmann、Shawn Lawton Henryほか著、渡辺隆行、梅垣正宏、植木真監修、UAI研究会 翻訳プロジェクト訳
●毎日コミュニケーションズ 2007年10月
●3990円(税込み) 978-4-8399-2220-7

 「アクセシビリティ」という言葉をご存じだろうか。障害者、高齢者を含めた多くの人にとっての使いやすさを意味する。日本では2004年にJIS規格にWebのアクセシビリティが盛り込まれたことから、官公庁、地方自治体をはじめ民間企業でもWebコンテンツのアクセシビリティを確保する取り組みが行われている。
  本書は世界の専門家11人の執筆、日本の第一人者たちの翻訳による、Webアクセシビリティ解説書である。筆者がこの本に興味を持ったのは、アクセシビリティの普及で活躍をしている植木真氏が翻訳と監修を担当していたためだ。
  オーストラリアやアメリカでの訴訟事例の紹介から始まり、アメリカのリハビリテーション法508条とW3CのWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)への対応を中心に、HTML、CSS、JavaScriptなどの文法を知っているだけでは実装できないアクセシビリティ対策のノウハウが詰まった1冊だ。
  障害者や高齢者に使いやすければ、そのほかの人にとってもいっそう使いやすくなる。また、アクセシビリティ技術のいくつかはSEO(検索エンジン対策)と共通であるため、アクセシビリティを意識すれば、検索サイトでの順位が上昇する可能性も高い。
  本書は実用書という位置付けであるため、哲学的な話は出てこない。加えて最適な翻訳と補足、翻訳時の最新情報の追記によって、656ページからなる大作にもかかわらず、興味を失わず読み切れた。そして世界のアクセシビリティ動向と日本での具体的な実装方法を深く学ぶことができた。
  企業や自治体でサイトのアクセシビリティ向上を推進する人、業務でアクセシブルなページを作成したい人にお薦めの良書である。
富士通ラーニングメディア講師・村本奈美

■3月10日のオススメ
エンジニアの自立指南書
SEのための「どこでもやれる力」のつけ方 管理者としてもフリーとしても大成できる自立と協調の極意
●野口和裕著
●技術評論社 2008年1月
●2079円(税込み) 4-7741-3366-3

 著者である野口和裕氏は@IT自分戦略研究所への寄稿やイベントで講演をするなどしているので、記事を読んだり顔を見たことがある人もいるだろう。そんな野口氏は本書で、自身の経験を織り交ぜながら、エンジニアとして成長していくために必要なことを分かりやすく説いている。
  本書の重要なテーマであり、メッセージの根幹にあるのが自立と協調である。野口氏は会社員を13年経験してフリーエンジニアとなった。退社してフリーエンジニアとなった野口氏は、フリーエンジニアが一般的にいわれるように安定した職業ではないことを実感した。だがよくよく考えると、会社員も安定してはいないということに気付いたという。保証された安定、絶対的な安定というものは存在しないということだ。
  こうした部分は冒頭に述べられている。この主張の趣旨は危機感をあおるのが目的ではなく、自立を促すための大切な前提となるのではないだろうか。フリーエンジニアのように雇われない立場でも、会社員のように雇われている立場でも、絶対的な安定はないのだから自立が必要になる。だが自立は孤立ではない。エンジニアとして個を確立すること、つまり自立したうえで周囲と協調することが大事で、そうなるにはどう考えていけばいいかが著者の言葉で丁寧に説いている。
  本書最大のポイントとして掲げられているのは、4つの原則、3つのスキル、3つの基準だ。第1部で、4つの原則が解説されている。続く第3部で3つのスキルが説かれ、第3部で3つの基準が明かされる。それぞれは、年齢が上がるにつれて必要になることだと、野口氏は本書で指摘する。4つの原則、3つのスキル、3つの基準が何か気になる、そんな方に本書をお薦めしたい。(ライター 加山恵美)

■2月25日のオススメ
マナーこそが仕事の本質なのかもしれない
お仕事のマナーとコツ (暮らしの絵本)
●西出博子、伊藤美樹著
●学習研究社 2006年3月
●1260円(税込み) 4-05-403058-0

 イラスト満載のビジュアル、すぐに読み切れそうなコンパクトさ。しかし侮るなかれ。本書はかわいらしい外見とは裏腹に、仕事をするうえで重要な心構えがしっかりと書き込まれた骨太な1冊だ。
  内容はタイトルのとおり、仕事で守るべきマナー、仕事を進めるためのコツの解説である。ただし単なるマニュアル本ではない。著者は前書きにおいて「マナーとは、“相手の立場に立って物事を考え行動すること”。誰もがこのマナーを身につけていれば、トラブルは起きない」としている。さらに、マナーとコツとは仕事を「愉しく」するものだとも。マナーというと、仕事の本質とは離れた表面上の約束事のように思う人がいるかもしれない。しかし本書を読んでいると、マナーは仕事の本質と直結するものなのだと思えてくる。
  とはいえ、仕事の各場面におけるマニュアルとしても使える内容だ。一般常識人(?)を自負しているわたしだが、読みながら何度も「そうだったのか!」とうなずいてしまった。例えば、自社に常駐しているパートナー社員さん。ほかの会社の人に向かってその人のことを話すとき、呼び捨てにするべきか敬称を付けるべきか、あなたは明確に説明できるだろうか?
  「コミュニケーション能力とは(中略)他人と会話しようとする姿勢の有無」「仕事とプライベートはつながっている」「家を出たときから仕事は始まる」など、一見当たり前なことだらけの「お仕事10か条」にはっとする人も多いだろう。
  電話の取り次ぎ方や名刺交換などの基本的なことから、社内恋愛と職場結婚のルール、今後も一緒に仕事をしたい人へのスマートなあいさつの仕方など、生きた仕事の知恵が詰まった1冊だ。新入社員はもちろん、すべての若手にお薦めしたい。(@IT自分戦略研究所 長谷川玲奈)

■2月12日のオススメ
相手に通じる話をするには
1週間で実践 論理的会話トレーニング
●高島康司著
●アスカ・エフ・プロダクツ 2008年1月
●1470円(税込み) 4-7569-1156-0

 私感ではあるが、日本のコミュニケーションとは「察する文化」だと思うことがある。話す側は遠回しにいいたいことをほのめかし、「ああそうなのね」と相手に察知してもらう。雰囲気を醸し出して気持ちがシンクロすれば「通じた」実感が得られるかのようである。そうした空気と調和を重んじる文化の良しあしはさておき、話が通じるか通じないかは話す側よりも察する側に委ねられている。そうした文化で日本人は察する能力は鍛えられているが、説明する能力は鍛えられていないのではないか。
 そんな筆者の疑問に答えるかのように、本書の冒頭で「日本人は説明ベタで、外国人は話上手と言われる本当の理由」を説明している。その中の1つに「外国と日本では社会の基本的なルールが異なるため、要求される話し方が違っていた」とある。話し手の立場に見合った「らしい」話し方をすることが重視され、「中身がない話し方でも大丈夫だった日本」と著者は指摘している。
 しかしいまは違う。完全にそうした文化がなくなったとはいわないが、あらゆる場面において中身のある話をきちんと伝えることの重要性が高まっている。大事なことをきちんと相手に伝えるにはどういう話し方をすればいいか。説得力のある話ができるようにするには、何に気を付けるべきか。
 本書は1週間で訓練できるようにシンプルに説明し、会話サンプルも例示している。例えば分かりやすい話し方のポイントとは、第1日目に「具体的に話す」と「整理して説明する」の2点にあると指摘する。そして2日目以降は、さらにしっかり伝えるための技術「列挙」「時系列」「比較対照」などを順々に学んでいく。本書を読めば、相手に伝えるべきことをきちんと伝えられるようになるだろう。(ライター・加山恵美)

■1月21日のオススメ
最初につまずかないために、入門書選びは重要
やさしいJava 第3版
●高橋麻奈著
●ソフトバンククリエイティブ 2005年9月
●2730円(税込み) 4-7973-3182-8

 ベストセラー本になったことで、本書の書名だけは聞いたことがあるという方も多いと思う。私も最初はその1人だった。なんとなく、「ベストセラー」「40万部」「第3版」という広告に釣られ、興味本位で手に取ったのが本書との出合い。著者を見ると高橋麻奈氏とあり、以前ブックガイドで紹介した本『プログラムのからくりを解く ルート探索や料金計算はどうやってるの?』と同一人物だったことに驚く。Javaの本が数知れずある中で、引き寄せられたかのようだ。書名からして、分かりやすいに違いないと勝手に推測して手に取ったのかもしれない。
  本書は、プログラミングの経験がなく、また、Javaは難しそうだと抵抗感を抱いている人向けのJava入門書である。そのため、変数、演算子、条件分岐、配列などの基本文法が、参考書の厚さの半分弱を占めている。
  大まかな構成は、J2SEの範囲が体系的に記述されており、各章の解説の後には演習問題があり、章によって関連知識のコラムがありと、オーソドックスな参考書だ。
  では、本書の良いところとは何か。それは、かゆいところに手が届くことだと思う。
  まずは、Javaの環境設定の章だ。Javaを一から始める人にとってはしょられると非常に困る、JDK(Java SE Development Kit)インストールの部分やコンパイラの使い方が、コメント付きの写真とともに丁寧に解説されている。右も左も分からない入門者にとってとてもありがたい。これからJavaを学ぼうというのに、ここでつまずくわけにいかないからだ。
  また、コラムがすごくそそられる。著者としても力が入っていたのか、コラムだけの目次まで存在した。コラムの内容は、オーバーライドとオーバーロードの違いや、ローカル変数とインスタンス変数の違い、publicとprivateを省略するとどうなるかなど、初心者がこんがらがってしまいがちなポイントがうまく抽出され、端的にまとめられている。ただ欲をいえば、せっかく着眼点が鋭く魅力的なので、コラムとはいえもう少し詳しく書いてあればなお一層ありがたかった。
  長いサンプルコード出てきたとき、「長いコードなので少しうんざりしてしまいますね」といったねぎらいの言葉に、心なしか救われたりもする。かわいいイラストにも心癒され、まさにやさしいJavaといったところだ。(@IT自分戦略研究所 荒井亜子)

■1月14日のオススメ
CからC++への前進に最適な1冊
C++クラスと継承完全制覇(標準プログラマーズライブラリ)
●矢沢久雄著
●技術評論社 2002年9月
●2499円(税込み) 978-4774115733

 C++はアプリケーション開発のみならず、現在では組み込み開発においても非常に需要が高まっている言語である。開発者にとっては、ぜひ学んでおきたい言語の1つであるはずだ。しかし、C言語の経験がある開発者の中にも「C++の理解は難しい」と感じている人は多い。難しいのは、C言語に追加された「オブジェクト指向」の考え方であるらしい。クラスを定義し、継承することの利点が理解できず、挫折してしまうとよく聞く。
  本書は、C言語ができるが、C++ができない人を対象に執筆されている。C++を学んだことがない人、C++の理解に挫折してしまった人にとって、まさにうってつけの書籍だ。タイトルにあるとおり、基本文法ではなく、オブジェクト指向の基盤「クラスと継承」を中心に解説している。オブジェクト指向のメリットへの理解を深める記述や図も豊富だ。また、C++でオブジェクト指向で開発するときに不可欠な機能(オーバーロード、コンストラクタ、デストラクタ、オーバーライドなど)の仕組みや動きも詳細に記述している。
  特に私が気に入っているのは、メモリ上でどのように実体を持っているのかを意識して説明を進めていることである。C言語同様、C++もメモリ上の実体がどのように構成されているかについての理解が不可欠であり、それがC言語の経験をC++につなげる手助けになると思う。
  著者は序文で、「難しそうと躊躇している人の気持ちも、挫折した人の気持ちも、筆者は自分のこととして十分に理解しているつもりです」と記述している。その言葉どおり、C++の理解に苦しんでいる人に対し、非常に思いやりのある書籍に作られている。C言語からC++へ挑戦し、さらに飛躍したい人にはぜひ一読をお勧めしたい。
富士通ラーニングメディア講師・五十嵐寿恵

■1月7日のオススメ
「図示」はエンジニア必須スキルだ
「図で考える」ことができる人、できない人
●久恒啓一著
●PHP研究所 2007年10月
●1470円(税込み) 4-534-03984-0

 本書は一般的なビジネスパーソン向けの書籍ではあるが、エンジニアに特にお薦めしたい。エンジニアの業務では、IT周辺の技術や製品知識が必要になる。必要に迫られてついついそちらの技術習得に目が向きがちになってしまうが、図示する能力を伸ばすことも忘れてはならない。
  例えばチームでプログラミングをする場面を考えてみよう。目標はコードを完成させることなのでコードがすべてではあるが、仲間とコードについて議論するときにさらっと図示できた方が話は早い。人間同士のコミュニケーションは言葉が基本ではあるが、1枚の図が偉大な説得力を持つ場合もあるということだ。
  図というとプレゼンテーションの場を想像してしまうが、人前で話す機会が多くない人にとっても本書で示す「図で考える」能力は磨いておいた方がいい。自分の仕事を図で表現してみれば、違った視点が開けてくると本書は示している。表紙に「仕事と人生を変える思考技術トレーニング」とあるとおり、これはちょっとした思考改革となるかもしれない。仕事の効率アップやコミュニケーション力向上など、好影響はあらゆるところに波及するはずだ。著者は「自分の仕事と社会の関わりを図にして明らかにすると、モチベーションが自然と高まる」と述べている。
  昨今IT業界ではSOA(Service-Oriented Architecture)やSaaS(Software as a Service)が話題となっているが、こうした分野でも的確な技術実装ができるかどうかは、ビジネスプロセスを明確に図示できるかどうかが鍵となっている。今後ますますエンジニアは「図で考える」能力が必要となるだろう。本書はエンジニアのレベルアップのためにきっと役立つはずだ。(ライター・加山恵美)

■12月25日のオススメ
来るべき30代へ向けての基礎を固める
エンジニアが30歳までに身につけておくべきこと
●椎木一夫著
●日本実業出版社 2005年10月
●1470円(税込み) 4-534-03984-0

 エンジニアに限らず、若いころに経験したことや身に付けたことは、後々になって必ず自分の財産として生きてくる。逆に考えると、若いころにどんなことを経験し、どんな知識や能力を養うことができたのか。それが、将来の自分自身の仕事や人生を決定すると考えてもよいかもしれない。
  本書は元エンジニアの大学教授である著者が、自分自身の経験を基に学生や若手のエンジニアに向けて、就職に対する考えや30歳までに身に付けておくべき知識や能力、またそれらがなぜ必要かということを解説している。
 著者は「最先端の技術は10年もたてば古くなる」といい、若いエンジニアに求められているのは、「基礎学力」と「考える力」「基本的スキル」だと主張する。そうした能力を日ごろの学習や仕事の中で養いながら、自分自身の将来を考えることが必要だ。
 本書は学生まで含んだ若い人に対して書かれているため、ある程度経験を積んだ社会人にとっては少々当たり前というか、すでに知っている内容が多いように見えるかもしれない。また、筆者の実体験による価値観や、日ごろ見聞きしたことからの主張がなされているので、必ずしも読者自身が置かれている状況に重なるとは限らない。しかし、ここに書かれている基礎的な知識やエンジニアのマインドは、初めての転職活動や転職先でのコミコミュニケーション術など、広く利用できる内容が多い。
 これから社会人にという学生には、会社やエンジニアという職業について知ることができる1冊であり、社会人にとっては振り返りや、今後の自分を考えるための1冊となるだろう。(@IT自分戦略研究所 千葉大輔)

■12月17日のオススメ
データベースの仕組みを理解して、より良いシステムを
インサイドMicrosoft SQL Server 2005(マイクロソフト公式解説書)
●Kalen Delaney著、熊澤幸生監修、オーパス・ワン翻訳
●日経BPソフトプレス 2007年6月
●4935円(税込み) 978-4-89100-550-4

 「SQL Serverはデータベース管理を自動でやってくれるので、チューニングの余地があまりない」「インターネットだと、SQL Serverの断片的な技術情報しか得られない」。現場でこんな不満を感じたことはないだろうか。本書はSQL Serverの専門的な解説書である。SQL Server 2005を新規に導入する人だけでなく、上記のような不満を持つSQL Serverの経験者にも薦めたい1冊である。
  SQL Server 2005はマイクロソフトのデータベース製品であり、SQL Server 2000の後継製品だ。本書ではSQL Server 2005の「設計のポイント」「各機能の仕組み」が述べられ、前バージョンからの仕組みや機能の変更点についても説明されている。
  本書の最大のメリットは、詳細な解説である。複雑な個所では分かりやすい図表が活用され、データベース内部の仕組み(SQL Server 2005のインストールとアップグレード、SQL Server 2005のアーキテクチャ、データベースファイル、トランザクションログの仕組みなど)を詳しく説明している。
  各項目の情報量は非常に豊富だ。先頭から順に読み進めていくこともできるが、深く掘り下げたい機能を中心に個別の項目を学習していく形でも十分活用できると思われる。説明文中にはSQL Serverで提供されている各種コマンドやサンプルスクリプトが掲載され、開発者、運用者に重宝される情報が盛り込まれている。
  本書を読みこなすのは大変だと思う。しかし、「データベースの仕組み(アーキテクチャ)の理解」がより良いデータベースシステムを生み出すことにつながれば、ITエンジニア冥利(みょうり)に尽きるのではないだろうか。興味がわいたら、一度手に取ってみてほしい。(富士通ラーニングメディア講師・田中健一

■12月10日のオススメ
将来のために着実に今日の1歩を
ちょいデキ!
●青野慶久著
●文藝春秋 2007年9月
●767円(税込み) 4-16-660591-7

 ワタミの代表取締役・CEOの渡邉美樹氏が記した『夢に日付を!』という有名な本がある。本書の著書となる青野慶久氏はこの本を読み、渡邉氏の夢に向かってひた走る姿や情熱に「すごい」と驚嘆した。そのすごさは青野氏からすると、少年マンガで有名な一撃必殺の北斗神拳のように思えたという。
  青野氏にいわせると、本書は「北斗神拳」ではなく、「太極拳」だそうだ。空想の世界で繰り広げられるまれな人間にしか体得できない究極の奥義ではなく、現実の世界で普通の人間が日常的に実践できる小技集だというのである。夢に向かってまずは一歩足を出す。または夢に近づくために今日もう一歩着実に歩みを進めるためにある。北斗神拳を究めた超人のような気迫に満ちた歩き方は誰にもできるものではない。公園で毎朝行う太極拳のように少しコツをわきまえてゆったりと進むような、普通の人でも十分可能な歩き方を提案している。
  そんな肩の力を抜いた歩き方は青野氏の人生や姿勢をよく表しているようだ。それが分かるように本書は冒頭の2章が著者である青野氏の半生の物語となっている。大企業に入社し、新人ながら社員のパソコンやネットワーク環境を1人で整備したときの苦悩、宿題や自由研究など計画的にコツコツと進めるのが苦手で自分なりの勉強法を編み出そうとする姿などが生々しい。
  大人や上司にとって青野氏はセオリー通りに行動せず、困った存在だったかもしれない。例えば中学で青野氏は1日半ページの漢字練習を嫌い、1日1個の漢字を確実に覚えるために3回書くのみという戦略を編み出した。だが先生にダメな見本としてクラスの前でしかられてしまう。さすがに筆記の訓練を簡略化するのは賢明ではなかったかもしれないが、これが青野氏の行動力を象徴しているかのようだ。
  創意工夫する発想力があり、同時に失敗に直面する可能性も高いが、そこから多くを学ぶ。そんな青野氏の経験と率直な言葉には「もう一歩」「ちょっとデキる」人間になるためのエッセンスが詰まっている。(ライター・加山恵美)

■11月26日のオススメ
その立場になって考え、尊重すれば、人は動く
人を動かす
●デール・カーネギー著、山口博訳
●創元社 1999年10月
●1575円(税込み) 4-422-10051-3

 顧客のクレームに対応するとき、こちらが正しくても抗弁せずに、まず相手の話をじっくり聞いて同意することから始めるならばうまくいくだろう。パートナー社員にプログラムの訂正を依頼したいとき、頭ごなしにいうのではなく、相手が自然と自分の間違いに気付くように導けるならば、あなたの仕事はうまくいくだろう。また、社内の営業担当者の提案を検討するとき、「そんな仕組みは作れないよ」と切り捨てるのではなく、共に考えたうえでその結論に達するのならば、あなたの仕事はきっと、もっとうまくいくだろう。
 本書は「人を動かす」「人に好かれる」「人を説得する」「人を変える」ための原則を詳細に解説し、70年にわたって読み継がれている、いわば人間関係の古典である。この有名すぎる1冊をなぜあえて紹介しようと思ったかというと、最近、若いITエンジニアの友人が、自分の愛読書として薦めてくれたからだ。「ITエンジニアは大勢の人と接する。だから人間関係に気を配り、スムーズに仕事を進めることが重要」という。
 本書で著者は、自らの体験、周囲の人々の体験、歴史上の人物の逸話などから収集した興味深いエピソードを無数に織り込みながら、「命令をせず、意見を求める」「誠実な関心を寄せる」「聞き手にまわる」「笑顔で接する」「期待をかける」などの人を動かすための原則を、具体的に分かりやすく示していく。それらすべての根底にあるのは、相手の立場になって物事を考え、相手を尊重することで、相手は自ら動きたくなる気持ちになるということだ。
 ビジネスの場面で使えるヒントが詰まった本ではあるが、「人の気持を傷つけることで人間を変えることは絶対にできず、全く無益である」「幸福は外的な条件によって得られるものではなく、自分の気の持ち方ひとつで、どうにでもなる」など、人生のさまざまな場面に生かせる名言も豊富だ。折に触れて読み返したい1冊である。(@IT自分戦略研究所 長谷川玲奈)



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自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

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