国際競争時代に突入するITエンジニアに生き残り策はあるか?
日本人ITエンジニアはいなくなる?
第21回 「ミステリアス」な日本に求められる“力”とは
小平達也
2007/2/27
ITエンジニアの競争相手が海の向こうからやってくる。インド、中国、それに続くアジア各国。そこに住むエンジニアたちが日本人エンジニアの競争相手だ。彼らとの競争において、日本人エンジニアはどのような道を進めばいいのか。日本だけでなく、東アジア全体の人材ビジネスに携わる筆者に、エンジニアを取り巻く国際情勢を語ってもらった |
■グローバル採用が難しい理由は? 採用担当者の「ホンネ」
日本国内では「超売り手市場」とまでいわれる新卒学生の就職活動が開始され、企業の採用担当者はますます忙しい時期を迎えている。最近ではキャリア採用と併せ、自社のグローバル展開に伴う海外企業、とりわけ中国やベトナム、インドなど新興国での採用が急激に増加している。
筆者は顧客企業の「企業がグローバル戦略を推し進めるうえでカギとなる優秀人材の採用と活用」を支援しているが、海外での採用には特有の難しさがある。その難しさを「社会・地域・人材市場といった外部環境」と「自社の事情、社内リソースなど内部環境」という2つの面から紹介しよう。
○海外での採用が難しいポイント
外部環境
・採用の競合として日系企業だけでなく欧米や韓国、現地の同業他社も加わり、競争が激しい
・1つの国の中でも地域によって生じる差が大きい
・飛び級などがあり、個人の能力差が大きい
・日本語ができる人材は少ない内部環境
・自社の海外展開がそれほど進んでおらず採用も手探り状態
・駐在員は営業もしくは技術出身で人事経験者がいない
・対象人材へのアプローチ手法が分からない
・募集から内定まで時間がかかり候補者が他社に入社してしまう
上記は海外・新興市場での採用でいわれる一般論であるが、実は海外エンジニアの置かれている立場はひとくくりにはできない。例えばインドと中国ではそれぞれ高い経済成長が続いているが、この恩恵を受け雇用が拡大している層は大きく異なる。
中国の場合、外資の投資がまず製造業に向かい、農村部の余剰労働力などを中心としてブルーカラー層の雇用が拡大した。その後、ホワイトカラー層であるITエンジニアなどの雇用が生まれた。
一方インドでは情報・通信といったIT、BPO産業での雇用は増加しているが、中国と違い、投資拡大にもかかわらず製造業における雇用はあまり増えていない。つまり、中国と異なりインドでは経済発展の恩恵はまず、大学教育など高等教育を受けたホワイトカラー層(もしくは予備軍であった人たち)が享受しているのだ。
このように、ひとことで新興国の海外エンジニアといっても、それぞれの国によってITエンジニアの社会的な成り立ちは大きく異なる。彼らを理解するに当たっては、異なる背景を押さえておいた方がよいだろう。今回は筆者が実際にインタビューを行ったインド人エンジニアについて紹介したい。
■海外エンジニアの日本・日本人に対するイメージ
〜インド人エンジニアは日本に何を思うか〜
筆者は現在インドに在住しており、今後日本での就業を希望するインド人新卒および第二新卒エンジニアにインタビューをした。今回の応募者は2120人おり、選考プロセスで絞り込まれた50人に対し面接を行った。その際、応募者に「日本に対するイメージは?」という問いを投げてかけてみた。それに対する回答は以下のようなものだった。
「世界第2位の経済大国」
「コンシューマ向けエレクトロニクスでは世界の先端を行っている」
インド人は一般的に、日本の発展の歴史や日本文化などに対して、あこがれを交えた肯定的なとらえ方をしているようだ。しかし、東芝、日立、松下、ソニー、日産、ホンダなど大手家電メーカーや自動車メーカーに対する認知はあるが、概して製品を通じての情報をベースとしており、日本企業に対する知識は一般常識レベルにとどまった。
日本での勤務を志望する理由としては「エレクトロニクスの発達した国で最新テクノロジーを身に付けたい」「海外での勤務経験をしたい」というものが多く、「なぜ日本なのか」という点からの志望動機は弱い傾向にあった。もっとも、現地の人材にとって日本での勤務は別世界のことであり、イメージの持ちようがないのかもしれない。これは1990年代後半、WTO加盟前の中国でのITエンジニア採用の際にも見られた傾向である。
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