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国際競争時代に突入するITエンジニアに生き残り策はあるか?
日本人ITエンジニアはいなくなる?

第21回 「ミステリアス」な日本に求められる“力”とは

小平達也
2007/2/27

日本人とインド人エンジニアの違い
〜比較で見る回答傾向と「ミステリアスな国・日本」〜

 日本企業は長期雇用という前提があるので選考では「専門性」「価値観」「性格」という全体のバランスを見た総合評価をする。インド企業の場合、長期雇用志向で教育投資を続ける大手企業もあるものの、1年(場合によっては数カ月の短期プロジェクトごと)での雇用が一般的であるようだ。

○インド人エンジニアの「価値観」とは?

 インド人エンジニアに限ったことではないが、海外エンジニアの採用には「文化が異なる世界にいる人材の『仕事に対する取り組み姿勢』を把握・評価する」ということが含まれる。このために筆者が責任者を務めるパソナテック 海外事業部ではある独自の手法を使っている。

 今回この手法で得られた回答のうち、「仕事をするうえで重視する価値観」「仕事をするうえで重視しない価値観」「重視する、しない、双方で出てきた価値観」の一部を紹介したい。

1.「仕事をするうえで重視する価値観」で多かった回答(代表例)
・自律性
・能力の活用
・社会的関係

2.「仕事をするうえで重視しない価値観」で多かった回答(代表例)
・美的追求
・多様性
・危険性

3.「重視する、しない、双方で出てきた価値観」で多かった回答(代表例)
・身体的能力
・社会的評価
・ライフスタイル

■日本人ITエンジニアとインド人ITエンジニアの特徴を比較
インタビューポイントと回答傾向 価値観・志向性 性格 異文化適応
日本人 プロ志向・プライベート重視に二極化 過去の経験
振り返り型
海外経験・情報は多い(留学・旅行)
インド人 明確なプロ志向 今後の自分をPR型 海外経験・情報は少ない

 総論としては上記に挙げるように、プロフェッショナルとして自らの才能を発揮し、社会と関係を構築していきたいという志向の人材が多いのが特徴的であった。また、2の「美的追求」では「身体は神に与えられたもので仕事をするうえでは重視しない」というようなコメントがあり、独自の世界観が回答に表れたことも興味深い。3について、回答が分裂している理由は定かではないが、ライフスタイルにおける最近の特徴について一例を紹介しよう。

 宗教的な意味でのベジタリアン(菜食主義者)以外に、最近では「アメリカ文化の影響を受けて」ベジタリアンになる若者もいるようだ。同じような例としてインドはヨガの発祥地とされるが、現在ヨガを行う若者はいわゆる「修行としてのヨガ」ではなく、「アメリカなどで流行しているエクササイズとしてのヨガ」を行っているという。

 同じ行為であっても「伝統的なインド」と「欧米文化の影響を受けたインド」の2つのアプローチがあるので、「インドだから」とステレオタイプには決め付けない方がよさそうだ。

 上記では「価値観」について述べたが、「性格」「異文化適応」でも興味深い回答があった。例えば、「性格」を見るような質問では、ポジティブオンリーの回答(もしくは自分の専門性のみをPRするような回答)が返ってきてしまい、そもそもこちらが聞きたかった性格的なものが把握できないということもあった(そのため、上記の価値観にも重きをおいてインタビューを行ったのである)。

 また「異文化適応」についても海外経験・情報の有無という点で最も大きいことは、日本に関するあらゆる情報が不足している点であるようだ。インドでは一般的な英語情報ソースとして、CNNやBBCにはケーブルテレビを通じ、誰でもアクセスできる状態となっている。そのため、欧米を中心とした世界のリアルタイムな情報に触れている。欧米の情報へのアクセスが増えた結果、「相対的な日本に対する距離」は遠くなっているのかもしれない。

 前述の「日本に対するイメージ」にあった回答のように、ひょっとすると日本は自動車、家電など「技術的に非常に優れたコンシューマエレクトロニクスを生み出す」一方で日本企業や日本人ビジネスパーソンの顔が見えない「ミステリアスな国・日本」になっている可能性もあるのではないだろうか。

「独自の強み」×「世界への発信」=フラット化“力”を!

 日本企業が日本国内外を問わず、優秀な人材を引き付け、活用するためには、「ミステリアスな国・日本」を脱し、海外の人材に対して、日本社会や企業、採用、キャリアパスといった人事に関する情報を継続的に提供し続ける必要があるだろう。その際のポイントとしては、日本社会、企業、採用、キャリアパスなどそれぞれで「他者にない、独自の強み」にできるだけフォーカスして、相手に伝えることである。

 「日本社会の独自の強み」は、例えば環境技術、場合によっては少子高齢化社会への先駆的対応などだろう。「日本企業の強み」は製品以外にも「カイゼン」や「5S」という世界に通じる成功事例がある。「キャリアパスの強み」についても、長期的雇用や社内研修、OJTなどを強みとして打ち出すことも十分検討できるだろう。

 実はここでいう「独自の強み、他者にはない価値(ユニークバリュー)」を見いだし、グローバルに「発信する力」は企業だけでなく、日本人ITエンジニア、1人ひとりにも実践可能であるし、実践すべきだろうと筆者は思っている。「独自の強み」を「世界に発信する」こと、これを筆者はフラット化“力”といいたい。採用面接を受けたことのある人であれば誰でも「あなたの強みは何ですか」という質問を受けたことがあるだろう。その質問をもう一度、自分自身に問い掛けてほしい。

 「フラット化する世界の中で発揮できる、あなた独自の強みは何ですか」
  「その強みを、どうやって世界に伝えていきますか」

 いま現在「独自の強み」がなくてもいいが、どんな方向性で、どれくらいの期間をかけて強みをつくっていくかという軸は持つべきだろう。

 「どうやって伝えるか」が分からなくても、職場の評価、口コミなど身の回りから始め、ブログ、セミナーでの発言などへ拡大のための方法論は探った方がよいのではないだろうか。

 

今回のインデックス
 日本人ITエンジニアはいなくなる?(21) (1ページ)
 日本人ITエンジニアはいなくなる?(21) (2ページ)

筆者プロフィール
小平達也(こだいらたつや)
パソナテック 海外事業部 部長
パソナテックコンサルティング(大連)有限公司 董事
早稲田大学アジア太平洋研究センター「日中ビジネス推進フォーラム」講師

商社にて中国を中心としたサプライチェーンマネジメントの構築、運営に従事。現職では「人材サービスを通じて企業のグローバル展開を支援する」というミッションの下、大手日系グローバル企業の海外における人材採用と育成を支援している。外務省「『人の移動』に関するシンポジウム」で経済界の意見を発表のほか、学会などでの講演、執筆多数。

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