国際競争時代に突入するITエンジニアに生き残り策はあるか?
日本人ITエンジニアはいなくなる?
第32回 “エンジニアにっぽん”にアジアのエンジニアが思うこと
小平達也
2008/12/24
アジアのエンジニアが日系企業に就職を希望する理由としては、
・規律正しいから
・マネジメントがしっかりしているから
・良いキャリアになるから
・高い技術が身に付けられるから
・チームワークを重視した働き方がされているから
などが挙げられている。規律やチームワークといった日本企業の仕事の進め方自体が評価されている。一方で、同調査では、実際に日系企業での勤務経験者のうち今後日系企業への就職を希望しない理由として以下のようなコメントが挙がっている。
・昇進が能力よりも勤続・年数によって決まること
・規則が多い、仕事量に対して給与が低い
・マネジメント層がローカルスタッフを尊重しない
・マネジメントの役職が日本人のみであること
・日本人はいつも日本式のやり方・文化に固執する
・職場におけるプレッシャーを感じることが多く、仕事量が多い
・時間管理が厳しく、少しのミスも許されず、非寛容であること
・残業、長時間労働が良しとされ、効率的な働き方が評価されていない
・米系や欧系企業に比較して、福利厚生(休暇、特別ボーナスなども含む)が整備されていない
給与、福利厚生などに対する不満と併せて、日系企業のマネジメントのスタイルについては厳しいコメントがある。
■現地の人材にとって日系企業で就職する際の障害は?
さらに同調査では「現地の人材にとって日系企業に就職する際の障害となっているもの」、という項目があるのだが、多い順に以下の結果が出ている(※回答人数2万8679人 )。
1.言葉(2万2752人)
2.昇進の機会が少ない(7421人)
3.閉鎖的な雰囲気(6072人)
4.給与が低い(5772人)
5.研修機会が少ない(3639人)
今回対象とした、インド、フィリピン、タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシアの人材にとって、日系企業で働く難しさとしては言葉=日本語の壁が群を抜いている。実は、日本企業も同様の難しさを感じているようだ。経済産業省が発表した平成18年度「日本企業における外国人留学生の就業促進に関する調査研究」報告書では企業が日本で留学生を採用する際に重視するポイントが回答されているが、ここでも第1位は日本語であった。やはり日本語という壁は本社、海外現地法人問わず共通の壁になっているようだ。
連載第30回「会社が海外進出したら? ITエンジニア、5つの備え」では情報システム部のグローバル化について紹介したが、アジアもしくは現地拠点で仕事をする日本人エンジニアは、日本企業のどの点が評価されているか、逆にどの点が不評なのかよく認識したうえで仕事を進めた方がよいだろう。
本稿で引用した調査について |
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調査機関 | ジョブストリート/エーオンコンサルティング |
調査方法 | Webリサーチ |
調査期間 | 2008年9月9〜16日 |
標本数および有効回収数 | メール開封人数: 20万7819人 回答数(率): 2万8679人(13.8%) |
調査対象者 | アジア最大のインターネット求人サイト「Jobstreet.com」(本社マレーシア、登録者数500万人超)の登録者のうち、下記の条件を満たす高度専門職の現職者 |
抽出条件 | ・居住国:東南アジア6カ国(インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、タイ、ベトナム)+インド |
今回のインデックス |
アジアのエンジニアが日本企業に持つイメージ |
アジアのエンジニアが日系企業に就職を希望する/希望しない理由 |
筆者プロフィール |
小平達也(こだいらたつや) ◆ジェイエーエス 代表取締役社長 ◆東京外国語大学 多言語・多文化教育研究センター コーディネーター養成プログラムアドバイザー ◆早稲田大学商学部学術院総合研究所 WBS研究センター 日中ビジネス推進フォーラム特別講師 ◆ジェトロ BJTビジネス日本語能力テスト外部化検討委員会 委員 大手人材サービス会社にて、中国・インド・ベトナムなどの外国人社員の採用と活用を支援する「グローバル採用支援プログラム」の開発に携わる。中国事業部、中国法人、海外事業部を立ち上げ事業部長および董事(取締役)を務めた後、現職。ジェイエーエスではグローバル採用および職場への受け入れ活用に特化したコンサルティングサービスを行っており、外国人社員の活用・定着に関する豊富な経験に基づいた独自のメソッドは産業界から注目を集めている。 |
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