第3回 お客さまへのメール、こんな感じじゃダメですか?
ナレッジエックス 中越智哉
2007/5/23
この春に大学を卒業し、ある中堅SI企業に就職した中山しんじ君。初めての経験にとまどいつつ、周囲のサポートを受けながら、社会人としてもITエンジニアとしても成長していきます。皆さんもしんじ君と一緒に歩んでみませんか。 |
■会社でも「しんじ君」
新卒で入社したアットイットシステム社でシステム開発の現場に配属され、いくつかの失敗をしつつも、日々仕事に励むしんじ君(第1回「『分からないんで教えてください』はいけないの?」、第2回「初めてのお客さま訪問で遅刻しちゃった!」)。素直な性格と親しみやすいキャラクター、そしていかにも「都会に出てきたばかり」という初々しさからか、いつの間にか社内でも「しんじ君」と下の名前で呼ばれるようになっていました。
そのことについてしんじ君は、大学時代の友人の北村君と電子メールでこんなやりとりをしています。
しんじ君 | 会社でも「しんじ君」って呼ばれるようになっちゃったよ。 |
北村君 | すごいね、そっちの会社はみんな仲がいいの? |
しんじ君 | うん、なんか僕って面白がられてるみたいだ。 |
北村君 | だろうな〜。 |
しんじ君 | え、何で? |
|
■しんじ君、問題を発見してお客さまに質問
そんなある日のこと。しんじ君はいつものように所属する開発プロジェクトの業務を行っていました。現在与えられているミッションは、ある機能の一部の実装です。このモジュールは、技術的な難易度がそれほど高くなく、しんじ君でも何とか実装できるものでした。しかしながら、しんじ君はまた悩んでいるようです。
しんじ君 | う〜ん、この実装、設計どおりにやればいいとは思うんだけど……このとおり作って、ほかのモジュールで動かなくなることはないのかなぁ? |
たまたま、そこへ鮫島さんが通りかかりました。普段は他人の様子などほとんど気に掛けることのない鮫島さんですが、しんじ君があまりに分かりやすい様子で困っているので、声を掛けずにはいられなくなりました。
鮫島さん | しんじ君、もしかして、何か困ってる? |
しんじ君 | あ、鮫島さん!(珍しく鮫島さんから声を掛けられて驚く) |
鮫島さん | あのさ、そんなに驚かないでよ……。 |
しんじ君 | すいません。はい、実はとても困ってるんです。 |
鮫島さん | どの辺が? |
しんじ君 | このモジュールなんですけど、設計どおりに作ると、別の画面の機能と矛盾するような気がするんですが……。鮫島さんはどう思われますか。 |
鮫島さん | ん、そうかな? ちょっと待って、設計確認してくる。 |
鮫島さんは自分の席に戻って、ドキュメントを見てみました。すると確かにしんじ君のいうとおり、設計どおりに進めると機能が矛盾してしまうことが分かりました。
鮫島さん | あいつ、結構しっかり見て考えてるな。 |
少し感心した鮫島さんはしんじ君のところへ戻り、しんじ君の予想どおりであったことを伝えました。
鮫島さん | 君のいうとおりだったよ。でも……。 |
しんじ君 | でも? |
鮫島さん | どっちがいいかは、私じゃ分からないんだよね。 |
しんじ君 | え? でも、この機能の設計をされているのは鮫島さんですよね。 |
鮫島さん | うん、そうなんだけど、これはお客さんに聞いてみないと分からないんだよ。どっちかの機能を変えないといけないんだけど、それはお客さんの要望次第だから。 |
しんじ君 | そうなんですか。 |
鮫島さん | そうなんだよ、だからさ、しんじ君が気付いたんだから、自分でメールしてお客さんに聞いてみてよ。ほら、ナレッジ商事の遠藤さん。この間あいさつに行って名刺もらったろ? |
しんじ君 | え、あ、はい、分かりました。 |
といってはみたものの、しんじ君はお客さんに電子メールを書くのは初めてです。携帯電話のメールはよく使うし、PCで友達に私用の電子メールを書いたこともありますが、業務として電子メールを書いたことはありません。
しんじ君 | 遊びのメールじゃないから緊張するなぁ。敬語をちゃんと使わないといけないし……。 |
どきどきしながらも、しんじ君はナレッジ商事の遠藤さんに質問の電子メールを出しました。
しんじ君 | ふぅ、取りあえず送れたぞ。メールは何度も書いたことがあるけど、仕事となると重みが違うなぁ。 |
電子メールを出し終えたしんじ君は、いまの質問とは関連しない部分の実装の続きに取り掛かりました。そして何事もなく時は過ぎ、1時間がたちました。
■麻根主任、しんじ君の電子メールに青くなる
麻根主任 | しんじ君! ちょっと来て。 |
しんじ君 | はい! 何でしょうか。(自席で返事をして麻根主任の席に行く) |
麻根主任 | さっき、遠藤さんにメール書いたよね? |
しんじ君 | あ、はい。システムの仕様のことで質問をしました。 |
麻根主任 | このメールは……。ちょっとマズいなぁ。 |
しんじ君 | え、い、いけなかったですか? |
麻根主任がしんじ君に見せた紙には、ナレッジ商事の遠藤さんからのメール(しんじ君の質問に対する回答)がプリントされていました。
---------------------------------------------------------------- アットイットシステム株式会社 麻根様 いつもお世話になっております。ナレッジ商事の遠藤です。 下記、御社中山様からいただいたご質問の件ですが、○○○の機能については、 △△△の機能を優先させていただきたいため、今回の対象から外していただく よう、お願い申し上げます。 詳しくは次回お打ち合わせの際に確認させてください。 以上 よろしくお願いいたします。 ナレッジ商事 遠藤 追伸: 先日ご紹介いただいた中山様は、入社したばかりなのに活躍していらっしゃる ようですね。 > 中山です。こんにちは。担当しているシステムについて質問です。○○○の機能 > ですが、△△△の機能と矛盾してしまうと思われます。どちらかを削除して、 > どちらかをそのまま実装するように進めたいと思っておりますが、どちらを選ぶ > べきとお考えですか? ---------------------------------------------------------------- |
麻根主任 | (心の中で)「中山です。こんにちは」って……! |
しんじ君 | やっぱり、まずかったですか……。すみません……。 |
麻根主任 | 遠藤さんは優しい方だし、しんじ君が新入社員だって知っていたからこのくらいの返信で済んでるけど、お客さんによってはきついおしかりが来るところだよ。 |
しんじ君 | は、はい。すみません。 |
麻根主任 | しんじ君のメンターは面田さんだっけ? 私はこの後すぐ会議で時間がないから、彼にメールの書き方を教わっておくように。 |
しんじ君 | はい……。 |
またまたしんじ君、メンターの面田さんのところへ相談に行きました。実際のところしんじ君には、どの辺りがそんなにいけなかったのか、まだピンと来ていませんでした。
今回のインデックス |
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