第6回 新人あら太君、「1人プロジェクト」でついに独り立ち
ナレッジエックス 中越智哉
2008/10/8
■あら太君、情報集めは一段落
翌日から数日間、あら太君の作業は軌道に乗り、進ちょくも順調でした。前回(第5回「新人あら太君、初めての勉強会を主催する」)、社内勉強会を企画したことで、調査することに多少慣れていたためかもしれません。
2週間の調査期間のうち、初めの1週間の終わりごろには、技術面での基礎的な知識をそれなりに理解することができていました。
その日の帰り、あら太君はしんじ君に、これまでの作業結果について報告しました。
あら太君 | 先輩、今回の調査テーマについては、だいたいですがつかめてきたと思います。 |
しんじ君 | そうなんだ。じゃあ、簡単にでいいから、僕に説明してみてくれるかい? |
あら太君 | はい、えっと、この技術はですね……。 |
あら太君は、調査結果をしんじ君に説明しました。
しんじ君 | なるほど……。僕も、その技術のことは詳しくないから、全部合ってるかは分からないけど、だいたい良さそうだね。 |
あら太君 | ありがとうございます。 |
しんじ君 | じゃあ、明日からは実際に動作環境を構築して、そのフレームワーク上で動作するサンプルのWebアプリとかを作って検証してみてくれるかな。マシンは検証用に使えるものがないらしいから、仮想化ソフトか何かを使ってみて。 |
あら太君 | はい、分かりました! |
■あら太君、環境構築でちょっと苦戦
そんなわけで、あら太君は次の朝から、検証環境の構築に取り掛かりました。調べることに関しては順調だったあら太君ですが、環境の構築に必要なインストールには少々てこずっているようです。
あら太君 | あれ、ダメだな。このWebサイトで説明されてるとおりに試してるんだけどな……。失敗したときにどうすればいいかなんて、書いてないもんなぁ。エラーメッセージの内容でネットを検索してみれば、何か出てくるかな? |
あら太君はしばらく試行錯誤しましたが、何度やっても同じところでエラーが出てしまい、先に進まなくなってしまいました。
あら太君 | 困ったなあ。でも先輩は前のプロジェクトの作業で忙しそうだし、もう少し頑張ってみようかな……。 |
ふと、あら太君が時計を見ると、もう昼休みも半分過ぎようかという時間です。朝から環境構築の作業に苦戦しているうちに、いつの間にか昼休みになってしまっていたのです。
あら太君 | う〜ん、本当は自分でなんとかしたいところだけど……。これ以上長引くと、作業自体が予定の期日までに終わらなくなっちゃうな。 |
以前、あら太君は忙しいしんじ君に気を使うあまり、自分の作業が遅れていることをいい出せなかったことがありました。しかし今日は、トラブルの内容を先輩のしんじ君に相談して解決しようと思い立ちました。
あら太君 | でも、その前に食事に行かないと……。今日は時間がないから、行列している店はパスだな。 |
■あら太君、先輩の協力を得て、トラブルを解決!
午後になり、あら太君はトラブルの内容をしんじ君に相談しました。
あら太君 | 先輩、ちょっとよろしいですか。 |
しんじ君 | うん、どうしたの? |
あら太君 | 環境の構築なんですが、どうもうまくいかなくて……。 |
しんじ君 | そうなんだ? どれどれ……う〜ん、ホントだ。説明にあるとおりやってもダメだね……。これ、どうしたらいいのかなあ? |
あら太君 | 先輩でも分からないですか? |
しんじ君 | ちょっと難しいなぁ。鮫島さんに聞いてみようか。 |
あら太君 | はい! |
2人は鮫島さんに、トラブルの内容を相談しました。鮫島さんはあら太君の席まで来て、PCの操作を始めました。
鮫島さん | ……あれ? そっか、これでもダメなのか……。どうしてだろうなあ? |
あら太君 | ダメですか? |
鮫島さん | う〜ん、なんか大したことない原因のような気がするんだけど……。まてよ、確か同じような環境構築を、面田がやったことあるっていってたような気が。 |
しんじ君 | じゃあ、面田さんを呼んできます。 |
しんじ君は、面田さんに事情を話し、あら太君のところへ来てもらいました。面田さんも最初は苦戦していましたが、ふと、何かを思い出したようです。
面田さん | あら太君、これの前にインストールするプログラミング言語の実行環境のバージョン、何だったか覚えてるかい? |
あら太君 | えっと、これは確かバージョン2.3だったと思います。 |
面田さん | やっぱり、そうか……。私も同じ現象になったことがあるんだけど、この言語の実行環境のバージョンが2.3だと、ほかのソフトのインストールで必ずエラーが出るんだよ。2.2とか2.4なら大丈夫なんだけど。 |
あら太君 | そうなんですか? 元から2.3が入っていたので、いいやと思ってそのまま使ってしまったんですが。 |
面田さん | そうだよね。うちの会社ではあらかじめ2.3が入ってるからね。 |
鮫島さん | へぇ〜、そんな原因だったとはね……。 |
しんじ君 | じゃあ、このソフトをほかのバージョンにして入れ直せば大丈夫ですね。 |
面田さん | うん、たぶんね。 |
あら太君 | 皆さん、ありがとうございます。じゃあそれでもう一度試してみます。 |
こうしてあら太君は、面田さんのアドバイスで環境構築を行い、検証用のWebアプリケーションのサンプルプログラムの動作を確認することができました。そして、期日までに予定していた作業を完了。無事、1人プロジェクトを完了することができたのです。
■1人プロジェクト完了。あら太君、お疲れさま!
あら太君は調査の結果を、システム開発部のミーティングで報告しました。
あら太君 | ……このフレームワークには、以上のような特徴があります。最初に挙げた問題点に注意すれば、採用の利点は大きいと思います。 |
鮫島さん | なるほどね、そういう製品なんだ。だいたい分かったよ。 |
麻根主任 | この内容を基にして、採用するかどうかを決定しよう。あら太君、ご苦労さま。よく調べてくれたな。 |
あら太君 | はい、ありがとうございます! |
麻根主任 | 進ちょく管理のしんじ君もご苦労さま。 |
しんじ君 | はい。いえ、あら太君が上手に進めてくれて、何かあったときには早めに相談してくれたので、進ちょくにはまったく問題ありませんでした。 |
あら太君 | 先輩、ありがとうございます! |
麻根主任 | おいおい、私よりしんじ君にほめられる方が、よっぽどうれしそうだな。 |
あら太君 | はい、えっ、いえ……。 |
一同 | (笑う) |
会議終了後、あら太君は上野部長に声を掛けられました。
上野部長 | あら太君。 |
あら太君 | はい、上野部長。 |
上野部長 | 今回はよくやってくれた。初めての1人プロジェクトはどうだったかね? |
あら太君 | はい、先輩方に助けていただきながらですが、なんとかやり遂げました。 |
上野部長 | そうか。 |
あら太君 | ちょっとだけ……自信ができたような気がします! |
上野部長 | それは良かった。これからも頑張ってくれよ。 |
あら太君 | はい! |
いくつかの失敗をしながら、少しずつ成長するあら太君と、その成長を助けつつ、自分も先輩エンジニアとして成長するしんじ君。2人の迷コンビの活躍(?)は、きっとこれからも続いていくことでしょう。
今回のインデックス |
あら太君、初めての「1人プロジェクト」開始 |
あら太君、先輩の助けを借りつつ、1人プロジェクト完了! |
筆者プロフィール |
中越智哉●北海道出身。北海道大学大学院電子情報工学専攻修士課程修了。在学中はJavaとLinuxに熱中。卒業後、Javaの仕事にあこがれ、1999年にテンアートニ(現・サイオステクノロジー)に入社。Java の受託開発案件や教育事業、コンサルティングなどを幅広く担当した後、2006年2月に同社を退社。同年3月にナレッジエックスを設立。 JavaをはじめとするIT開発技術の教育に奔走する。趣味は自転車と草野球、そして毎日欠かさない耳かき。 |
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