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現場で使えるメンタルヘルス改善講座

第3回 「損した!」と思ったときこそ作る「トクするリスト」

樋口研究室
飯田佳子

2008/12/22

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休むことで、得られるものがある

 私は彼女の話を聞いていて、感じたことがありました。そもそも男性と女性は、体の構造が違います。だから体力に差が出ます。男性にはできて、女性にはできないことがあります。「逆に、男性にはできなくて、女性にしかできないことがあるかもしれないな」。そう思ったのです。

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 実際、子どもを産むというのは男性にはできない作業です。休みで仕事をロスしても、何かをゲインすれば、損失はプラスマイナスゼロでしょう。そういう考え方、彼女にイメージできるかな……。そう感じたのです。

 そこで私は、彼女に提案してみました。「休むことで得することのリストを、私と一緒に作ってみない?」。彼女は、ちょっとびっくりした様子でした。

 「トクするリスト、ですか?」

 休むことで失うものについては、彼女の中でかなり分析されています。だからそのことは忘れて、休むことで得られる「体験」「思い出」「気持ち」「知識」について分析してみてはどうかと思ったのです。

 そして彼女と私は、このリストを作り始めました。するとリストには、かなり面白い内容が挙がってきました。

・子育てや公園デビューを体験できる

 それはもちろんですが、

・ママ友ができて、会社以外の知り合いが増える

・仕事人間である夫の興味を仕事以外に広げられる

・実家に戻って親族関係を強化できる

・安い子ども服をネットで探す時間ができる

など、いろいろな得するものが列挙されたのです。

 このリストを見て、ぽつりと彼女がいいました。

 「子育てって、自分だけではなくて、人や物のチームワークで行う作業なのですね」

 なるほど!(と思ったのは私です) そういう意味では、子育てはプロジェクトのようなものですね。家族や親族、同僚など周りの人のサポート、助け合いがとても重要です。

 「そういえば3年ぐらい、実家に帰っていなかったなあ……」

 そういった彼女の顔は、ずいぶん明るくなっていました。お休みを取ることは、ひょっとしたら貴重なチャンスになるかもしれない! そうひらめいたようです。

「損した!」と思っても、「実は得が隠れているかも」と考えてみる

 自分にとって損に見えること、失敗したと思うことがあっても、それほど落ち込む必要はありません。「実はそのウラに得が隠れているかもしれない」。こういう考え方をすることが大切です。最初は損をしても、後になって10倍も20倍も得することがあるかもしれません。こういう考え方ができると、心のマイナスパワーの改善に役立ちます。

 そのためにお勧めの方法が「得を見つける質問法」というものです。

 「『○○』にとってお得なことは何?」という質問の「○○」の個所に、人や物を代入し、質問に答えていきます。そこから自分が得るもの、他人が得るものを探り、価値あるものを突き止める方法です。

図1 得を見つける質問法

 まずは「○○」に「私」と入れて、その答えを考えてみてください。自分が手に入れられる新しい環境、価値、資産などが明らかになります。今回の事例でいうと、「私」はお休みを取る彼女です。彼女が手に入れるのはお子さん、会社以外の友人関係、地域・社会との関係などですね。

 次に「○○」に「あなた」と入れてみてください。自分の近くにいる夫や友人、家族、同僚が手に入れるものを分析できます。今回の事例では、「あなた」に相当する人は彼女の夫です。彼女の夫が手に入れるものに、育児という新しい経験、愛情、思いやり、仕事に対する意欲アップなどが考えられます。

 最後に「○○」に「みんな」や「会社」などを入れて、自分を取り巻く人たちが手に入れるものを考えます。今回「みんな」に相当する人は、彼女の親族や同僚、地域の人です。彼女のご両親は大いに喜ぶでしょうし、子育てする社員の増加による企業のイメージアップ、地域の活性化などが出てくるでしょう。

 このことを聞いて、彼女がいいました。

 「私は『損するリスト』ばかり作っていたのかもしれないですね。最初に『得するリスト』を作っていれば、もっと元気が出ていたかも!」

 そのとおりです。何かを失うとき、損のリストはすぐに作れます。でも、同時に得のリストも作れると、心のパワーが回復します。

 お休みの間は仕事ができませんが、復帰すればまた元気に働けます。キャリアが中断するだけで、キャリアを失うわけではありません。

 この中断の時間は、男性は手に入れることができない貴重な時間です。手に入るときに思い切り良く手に入れて、何かをゲットすることが得策です。

 「得を見つける」という発想をすると、ピンチをチャンスにつなげることができて、皆さんのメンタルヘルスが向上します。ぜひ、使ってみてください。


今回のインデックス
 手に入れたものを失いそう? 産休を取るのが不安なITエンジニア
 何かを失いそうなときこそ、「得するリスト」を作ってみる

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筆者プロフィール
飯田佳子樋口研究室の認定ITコーチ。会社ではプロジェクトの品質管理の仕事をしている。「システム構築には技術やプロセスも重要だが、もっと重要なのは人間の品質アップ」。そう信じて、日々、社員のパフォーマンス向上を目指している。

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