第3回 「損した!」と思ったときこそ作る「トクするリスト」
樋口研究室
飯田佳子
2008/12/22
■休むことで、得られるものがある
私は彼女の話を聞いていて、感じたことがありました。そもそも男性と女性は、体の構造が違います。だから体力に差が出ます。男性にはできて、女性にはできないことがあります。「逆に、男性にはできなくて、女性にしかできないことがあるかもしれないな」。そう思ったのです。
PR:@ITジョブエージェント主催セミナー |
@IT自分戦略研究所の著者が多数出演 「プロジェクトリーダーのためのスキルとキャリア」 日時:2009年1月31日(土) 場所:ベルサール九段 参加費:無料 |
実際、子どもを産むというのは男性にはできない作業です。休みで仕事をロスしても、何かをゲインすれば、損失はプラスマイナスゼロでしょう。そういう考え方、彼女にイメージできるかな……。そう感じたのです。
そこで私は、彼女に提案してみました。「休むことで得することのリストを、私と一緒に作ってみない?」。彼女は、ちょっとびっくりした様子でした。
「トクするリスト、ですか?」
休むことで失うものについては、彼女の中でかなり分析されています。だからそのことは忘れて、休むことで得られる「体験」「思い出」「気持ち」「知識」について分析してみてはどうかと思ったのです。
そして彼女と私は、このリストを作り始めました。するとリストには、かなり面白い内容が挙がってきました。
・子育てや公園デビューを体験できる
それはもちろんですが、
・ママ友ができて、会社以外の知り合いが増える
・仕事人間である夫の興味を仕事以外に広げられる
・実家に戻って親族関係を強化できる
・安い子ども服をネットで探す時間ができる
など、いろいろな得するものが列挙されたのです。
このリストを見て、ぽつりと彼女がいいました。
「子育てって、自分だけではなくて、人や物のチームワークで行う作業なのですね」
なるほど!(と思ったのは私です) そういう意味では、子育てはプロジェクトのようなものですね。家族や親族、同僚など周りの人のサポート、助け合いがとても重要です。
「そういえば3年ぐらい、実家に帰っていなかったなあ……」
そういった彼女の顔は、ずいぶん明るくなっていました。お休みを取ることは、ひょっとしたら貴重なチャンスになるかもしれない! そうひらめいたようです。
■「損した!」と思っても、「実は得が隠れているかも」と考えてみる
自分にとって損に見えること、失敗したと思うことがあっても、それほど落ち込む必要はありません。「実はそのウラに得が隠れているかもしれない」。こういう考え方をすることが大切です。最初は損をしても、後になって10倍も20倍も得することがあるかもしれません。こういう考え方ができると、心のマイナスパワーの改善に役立ちます。
そのためにお勧めの方法が「得を見つける質問法」というものです。
「『○○』にとってお得なことは何?」という質問の「○○」の個所に、人や物を代入し、質問に答えていきます。そこから自分が得るもの、他人が得るものを探り、価値あるものを突き止める方法です。
図1 得を見つける質問法 |
まずは「○○」に「私」と入れて、その答えを考えてみてください。自分が手に入れられる新しい環境、価値、資産などが明らかになります。今回の事例でいうと、「私」はお休みを取る彼女です。彼女が手に入れるのはお子さん、会社以外の友人関係、地域・社会との関係などですね。
次に「○○」に「あなた」と入れてみてください。自分の近くにいる夫や友人、家族、同僚が手に入れるものを分析できます。今回の事例では、「あなた」に相当する人は彼女の夫です。彼女の夫が手に入れるものに、育児という新しい経験、愛情、思いやり、仕事に対する意欲アップなどが考えられます。
最後に「○○」に「みんな」や「会社」などを入れて、自分を取り巻く人たちが手に入れるものを考えます。今回「みんな」に相当する人は、彼女の親族や同僚、地域の人です。彼女のご両親は大いに喜ぶでしょうし、子育てする社員の増加による企業のイメージアップ、地域の活性化などが出てくるでしょう。
このことを聞いて、彼女がいいました。
「私は『損するリスト』ばかり作っていたのかもしれないですね。最初に『得するリスト』を作っていれば、もっと元気が出ていたかも!」
そのとおりです。何かを失うとき、損のリストはすぐに作れます。でも、同時に得のリストも作れると、心のパワーが回復します。
お休みの間は仕事ができませんが、復帰すればまた元気に働けます。キャリアが中断するだけで、キャリアを失うわけではありません。
この中断の時間は、男性は手に入れることができない貴重な時間です。手に入るときに思い切り良く手に入れて、何かをゲットすることが得策です。
「得を見つける」という発想をすると、ピンチをチャンスにつなげることができて、皆さんのメンタルヘルスが向上します。ぜひ、使ってみてください。
今回のインデックス |
手に入れたものを失いそう? 産休を取るのが不安なITエンジニア |
何かを失いそうなときこそ、「得するリスト」を作ってみる |
筆者プロフィール |
飯田佳子●樋口研究室の認定ITコーチ。会社ではプロジェクトの品質管理の仕事をしている。「システム構築には技術やプロセスも重要だが、もっと重要なのは人間の品質アップ」。そう信じて、日々、社員のパフォーマンス向上を目指している。 |
@IT自分戦略研究所の関連記事
ITエンジニアを襲う「新しいうつ」の正体とは?
連載:ITアーキテクトが見た、現場のメンタルヘルス
連載:ITエンジニアにも重要な心の健康
まじめな人ほどかかりやすい心の病
「ITエンジニア不健康伝説」は本当か
@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。
現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。
これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。