第10回 成果は自分の手で作る
樋口研究室
飯田佳子
2009/8/3
過酷な環境にさらされながら、常にコンピュータ並みの正確さを要求されるITエンジニアたち。メンタルヘルスをうまくコントロールするには? 樋口研究室の「ITコーチ」たちが、現場でいますぐ使えるメンタルヘルス改善のワザを教えます。 |
皆さんは、どんなときに「やりきった」「頑張った」と感じますか。プログラムが「動いた」、上司に「褒められた」、お客さまが「喜んでくれた」。こういう成果が出たとき、そう感じると思います。でも会社で任されるのは、楽しい仕事ばかりではありません。時にはイヤな仕事をやらないといけないときもあります。今回は、そんなパワーの出にくい仕事の現場でうまく自分のモチベーションをコントロールし、成果を出していく発想法を考えてみましょう。
■何をやっても文句ばかりいわれる
今回、登場するのはAさんです。Aさんは半年ほど前にグループリーダー(管理職)になったばかり。「仕事は慣れましたか?」とわたしが聞いてみたところ、Aさんから出てきた一言は次のようなものでした。
「仕事が面白くない……」
いつも明るいAさんなのですが、今日は少し元気がありません。
AさんにはPL(プロジェクトリーダー)として、たくさんのシステム構築の経験があります。成功した事例もたくさんお持ちです。そういうAさんなので、PLから管理職に転向したときもさほど心配していなかったそうです。チームを引っ張っていくという点では、プロジェクトでも会社の組織でも同じこと。いままでどおりでうまくいくはずだ。Aさんはそう思っていました。
でも、それがちょっと違っていたそうです。グループリーダーになってからというもの、メンバー(部下)からは仕事の割り振りが悪いといわれる、部長からは残業は絶対させるなといわれる、揚げ句の果てに会社からは賞与のカットをいわれる。Aさんは、何をやっても文句ばかりいわれているそうです。
「そんなときこそ、自分で乗り切ろう」。そう感じるのがAさんです。ビジネス書を買って読んでみたり、休日にセミナーに出てみたり、とにかく一生懸命やりました。
にもかかわらず。Aさんの仕事の状況は良くなりません。最近はイライラしていることが増えてきて、メンバーとの会話も減ってきているそうです。Aさんは、いいます。
「仕事、やりたくなくなってきた……」
こんな感じで少し心が乱れて疲れていたとき、Aさんはわたしのところにやってきたのです。状況がちょっと複雑。わたしも難しいケースだな、そういう思いがしました。
■モチベーションの違いは何?
Aさんは過去、現場でプロジェクトのメンバーを管理していました。でもいまは会社で組織のメンバーを管理しています。管理という仕事はどちらも同じ。なのに、どうしてこんなにモチベーションの差が出るのかな。わたしは少し悩みました。そのとき、Aさんがぽつりといいました。
「わたしの成果は何もない。そういう感じです……」
わたしは、それを聞いて、少し感じたことがありました。
現場の仕事はシステムを完成させて、お客さまの満足度を上げる。そういう仕事です。でも管理職の仕事は部下を育成して、同時に会社を成長させる。そういう仕事なのです。管理職の仕事は日々、改善を続けないと結果が出にくい。だからちょっと、成果が分かりにくい……。
Aさんは、グループリーダーになってまだ半年の新米管理職です。だから、すぐに目に見えてこない仕事の成果に不満を持っているのかな。そういうふうに、わたしは感じました。
そこでわたしは、素早くAさんの成果が出るようなものが何かないかなと考えました。もしあれば、それがAさんのモチベーションアップのきっかけになるかもしれない。そう考えたのです。そこでわたしはAさんに提案してみました。
「わたしと一緒に、Aさんの成果を作ってみましょうか」
Aさんは最初、きょとんとしていました。この人、何をいい出すの!? そんなふうに、見えていたかもしれません。でもわたしの言葉の「作ってみる」、これがAさんの心にヒットしたようです。Aさんは、いいます。
「できるのなら、ぜひ作ってみたいですね」
成果を作る作業がスタート |
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