第10回 成果は自分の手で作る
樋口研究室
飯田佳子
2009/8/3
■成果を作る作業がスタート
そのときから、わたしと一緒にAさんの成果作りがスタートしました。成果を作るには、Aさんの仕事のどのような題材を取り上げるのか、考えないといけません。
最初にわたしはAさんに、成果として出来上がったらメンバーや会社が喜ぶ、分かりやすいものがないか、考えてもらうことにしました。手に持てるとか、目で見て分かるとか、そういう形になっていた方が成果として分かりやすいからです。Aさんは、いいます。
「あります。チームで共有する情報データベースです!」
素早く出てきましたね。Aさんのチームのメンバーは、それぞれが同じような資料を重複して作っていて、ほかの人が再利用できず、みんな困っているそうです。これは題材として、ピッタリですね。
次にわたしは、そのデータベースが完成したときに、その量や数が大きくなる方法がないか、考えてもらうことにしました。会社の成果は数字で判断されることがほとんどです。成果は大きければ大きいほど良い。そう思ったからです。Aさんはいいます。
「メンバーが持っているドキュメントをすべて、データベースに、ぶち込みましょう!」
なるほど。最初はなんでもいいので、資料をアップロードさせて、登録の数を増やす。後からみんなで整理するのも、良い方法ですね。
最後にわたしは、メンバーのみんなが満足するように、そのデータベースを使っていると楽しいと感じる、何か面白い仕掛けを加えることができないか、考えてもらいました。Aさんはいいます。
「ドキュメントが参照された数をポイント加算して、上位取得者には部門賞を出しましょう!」
Aさんは、だんだん管理職魂(だましい)が出てきたみたいです。自分の作った資料がたくさんの人に役に立っていたら、本当に気持ち良いと思います。これでオーケーです。
わたしとAさんの作業は、Aさんのメンバー全員を巻き込みながら進んでいきました。そして、3カ月後、情報共有データベースは晴れて完成にこぎ着けました。ここを見れば、Aさんの指示も分かるし、メンバーの状況も分かるし、会社の方針も分かります。
この情報共有データベースをきっかけにして、Aさんの部門の作業効率がアップしたそうです。この状況は部長や周りの部署にも伝わりました。ほかの部門から「このデータベースを使わせてほしい」、そういう問い合わせもあるそうです。
評判の良いデータベースが完成して、Aさんも久しぶりに「やりきった」「頑張った」、そう感じたそうです。Aさんはいいます。
「成果は自分で作る。この意識が重要ですね」
そうなのです。成果は自分で作る、作り上げる。そういう積極的な意識があって初めて手に入るものなのです。
■成果は自分の手で作る
「仕事をするからには成果を出したい」。皆さん、そう思うでしょう。でも現実は、面白くないと思う仕事や意味がないと感じる作業がたくさんあると思います。ここでイヤな思いばかりしていると、自分のモチベーションも上がりません。
そういうとき、あなた自身が成果を作ろうと意識することが大事です。そういうときに、以下の「成果を生み出す3つの意識」を使って、自分の成果を作り出す作業を始めてください。
成果を生み出す3つの意識 |
1.形を作る意識
成果は人が目で見て分かりやすいとか、手に持って触りやすい、図や表で説明しやすい……、そういうものを意識して作るようにしてください。漠然とした気持ちや思いだけの成果は、あなたには見えるのですが人には見えないからです。
2.量や数を集める意識
次に、成果はきちんと量や数で数えられて、強く、大きく、堅くなるように意識して作ってください。数値で表せると、表やグラフなど資料にも残せるので、多くの人が成果の内容を理解できるようになるからです。
3.気持ちを込める意識
最後に、成果には、多くの人に役に立つとか、ほかの人にも勧めたくなる感動や共感(気持ち)を盛り込むように意識して作ってください。もし会社やメンバーの満足度が向上すると、あなたの成果が会社での評価(貢献度)アップに発展していくからです。
面白くない仕事だ、つまらない作業だ。そう思い続けると、なかなか成果は表に出てきません。自分の行動は形になって初めて、人に見えるようになるからです。「この仕事や作業を続ける価値があるのかなあ」。そう感じたら、ぜひこの方法を試してみてくださいね。
さて、この連載はいったんここで終わります。次回から、あなたの仕事の改善にすぐに役立つスキルや手法を解説する連載を始めます。引き続き樋口研究室をよろしくお願いいたします。
今回のインデックス |
何をやっても文句ばかりいわれる |
成果を作る作業がスタート |
筆者プロフィール |
飯田佳子●樋口研究室の認定IT コーチ。会社では、プロジェクトの品質管理の仕事をしている。システム構築には技術やプロセスも重要だが、もっと重要なのは人間の品質アップ。そう信じて、日々、社員のパフォーマンス向上を目指している。 |
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