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IT勉強会入門

第5回 400kmの旅をしよう――北海道学生IT勉強会事情


小野寺大地(室蘭工業大学情報工学科)
2009/11/27

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■ 「SAMIT」開催と、その後の変化

 2009年4月に室蘭工業大学に編入をした筆者は、前述の学生と協力して、すぐに学生IT勉強会の立ち上げに向けて動き始めました。「やりたい」というだけでは、何も実現できません。「やろうぜ!」という人間がいて、初めて実現できるのです。

 こうして立ち上げたIT勉強会が「SAMIT」です。筆者がもともとRuby寄りな人間だったため、勉強会の使用言語をRubyとし、Rubyとよく似た軽量言語であるPythonとRubyとの相互書き換えを第1回のテーマにしました。

 告知はブログとTwitter、ATNDを利用しました。高専時代のような内輪の緩い勉強会ではなく、きちんと告知を行い、参加登録制にしたのです。すると、遠方からの参加者が現れ始めました。中には500km離れた場所から参加登録してくれた人までいました。「これはいいかげんなことはできない」と、非常に焦りを覚えました。自らIT勉強会を企画する場合、「会場確保」と「告知」はしっかりやりましょう。内容は後付けでどうにでもなります。

 第1回「SAMIT9.05」(筆者注:数字はUbuntuのバージョン名と同じ規則です)が終わってから、身の回りに変化が起きました。北海道のITコミュニティを支援し、オープンソースカンファレンス(OSC)北海道の現地運営を行っている一般社団法人「LOCAL」の方から、驚くようなお話をいただいたのです。

 「LOCALに加入して、LOCALの学生部として学生IT勉強会を運営していきませんか?」

 筆者は迷わずLOCALに参加し、北海道の学生IT勉強会を盛り上げるべく活動し始めました。

■ OSCで学生ができること

 OSC北海道には一般で参加する予定でしたが、開催直前にスタッフになりました。実際に学生が行うことのできる「OSCの手伝い」についてお話しします。

 OSCに限らず、大規模なイベントで普通の学生ができることはかなり限られますが、何もすることがないわけではありません。例えば、OSCの会場準備は前日から行います。そこで筆者は、前日に現地入りし、机の配置や、来場者に配るための冊子の用意などを行いました。実際のところ、この「冊子の用意」はかなり時間がかかります。イベント当日は、会場の案内など、できることを自分で見つけてどんどんやっていきました。

■ 地方IT勉強会とは旅行である

 筆者はOSC北海道で知り合った北海道の学生に、「一緒に北海道の学生IT勉強会を盛り上げていきましょう!」と声を掛けました。その甲斐あってか、北見工業大学と北海道情報大学の学生が、それぞれ「mintech」「HiuIt」という学生IT勉強会を立ち上げました。

 ちなみに、SAMIT(室蘭工業大学)はRubyとUbuntu Linux。mintech(北見工業大学)はUbuntu LinuxとC言語、コードゴルフなど。HiuIt(北海道情報大学)はRuby on Railsやfont、eclipseなど。それぞれの扱う内容や勉強会形式はバラバラです。

 ところで皆さんは、室蘭や北見が北海道のどの辺りにあるかご存じでしょうか。SAMITとmintech、それぞれの主要メンバーは、勉強会のたびに、この2つの町の間を移動しています。地方IT勉強会とは、旅行そのものです。どういうことかは、地図を見てもらえれば分かると思います。


大きな地図で見る

 距離は408km、所要時間は6時間オーバーです。この距離を泊り掛けで行くわけで、参加者は旅行気分で望む必要があります(日帰りをした日もありましたが……)。

 大体、朝5時出発で昼の11時くらいに着きます。お昼ご飯を先方の大学の人と一緒に食べて、13時から勉強会スタート。内容は前述のとおりで、終了後は懇親会へと移行します。

 「こんなに移動するのであれば、オンライン勉強会にしてしまった方がいいのではないか?」――そう思う読者の方もいるでしょう。しかし、参加者からはそのような意見はまったく聞こえてきません。

 オンラインによる「金額的な負担の少なさ」や「参加のハードルの低さ」は確かに魅力です。しかし、無茶な移動をしてでも遠方の勉強会に参加することには、それを補って余りある楽しさがあります。現地で出迎えてくれる学生がいて、現地のおいしいものが食べられるのです。「勉強会」と聞くと堅苦しいイメージがありますが、「勉強会+旅行」と考えれば、遠方の勉強会にも容易に参加できるのではないでしょうか。

■ 学生がIT勉強会に参加することのメリットと得たもの

 筆者はこのように、さまざまな形でIT勉強会にかかわってきました。学生がIT勉強会に参加するメリットとして、次のようなものがあると思います。

  • 刺激になる!
  • 就職活動につながる(かもしれない)
  • たくさんの人と会うことができ、飽きない!

 もちろん、勉強になるというのもメリットの1つです。学校で習うことは、幅が広いけれど、浅いことばかりです。ですが、勉強会に参加すると、興味を持った分野を深く知ることができます。

 しかし、やはり何よりも大切なのは、人と人との「縁」です。自分1人では、学生勉強会の運営はできません。あのOSCも、さまざまな人が運営に携わって、調整を重ねて実現しています。さまざまな活動を通じて得られた「縁」は、本当に大切であると感じています。

■ 「技術」と「人付き合い」のいいとこ取り

 「400kmの距離をものともせずに勉強会に参加する」という話をしましたが、これは極端な例にすぎません。身近に勉強会があれば、それに参加すればいい。もしなければ、作ればいいだけです。オンライン勉強会も増えてきていますので、そこから始めてみるのもいいでしょう。勉強会で地元の仲間を見つけて、一緒に新しい勉強会を立ち上げる、といったことも考えられます。勉強会は遠い存在ではなく、身近で気軽な存在だと思ってください。

 技術は自力である程度までは身に付けることができます。ですが、人付き合いは1人ではできません。「技術」と「人付き合い」、両方のいいとこ取りができるのが、勉強会の魅力なのではないでしょうか。

● 告知

 11月28日(土)に札幌市産業振興センターにてLOCAL学生部総大会を行います。北海道の学生のための共同勉強会です。

記者プロフィール
小野寺大地(おのでらだいち/id:onodes)

室蘭工業大学情報工学科3年に在籍。普段はRubyを使い、IRCbot開発やデータの可視化などを行っている。

ブログ:onodes’s Memo

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