「転職には興味があるが、自分のスキルの生かし方が分からない」「自分にはどんなキャリアチェンジの可能性があるのだろうか?」――読者の悩みに応えるべく、さまざまな業種・職種への転職を成功させたITエンジニアたちにインタビューを行った。あなた自身のキャリアプラニングに、ぜひ役立ててほしい。 |
第1回 BtoBからBtoCへの転職――ミクシィのサービス開発現場へ
今回のテーマ:やりがいを求めて、BtoC企業へ転職 | ||
●転職者プロフィール 株式会社ミクシィ mixi事業本部 パートナーサービス部 開発グループ ビジネスソリューション開発チーム リーダー 向田英雄さん(35歳/転職3年目) 【仕事内容】 製造系3次元CG・CADソフトウェア開発 → ネットリサーチサービスの開発 → SNS「mixi」の課金系システム開発 【開発言語】 C、C++ → PHP → Perl |
「自分の手掛けたシステムを、多くのユーザーに使ってもらえること」――それは、ITエンジニアにとって大きな仕事のやりがいとなる。特に、不特定多数のユーザーの反応をダイレクトに感じられるという点で、多くのITエンジニアがBtoCサービスの開発に魅力を感じることだろう。
今回紹介する向田英雄さん(35歳)も、そう考えていたITエンジニアの1人だ。新卒でシステムインテグレータ(SIer)に入社し、8年間、製造系ソフトウェアの開発に携わった。
充実したエンジニア生活を送っていた向田さんだが、徐々に「BtoCのサービス開発に携わりたい」と感じるようになった。そして向田さんは思い切ったキャリアチェンジに挑戦し、その思いを実現させた。大手Webポータル企業への転職を経て、2007年、『株式会社ミクシィ』への転職を成功させたのである。
大手SIerで、BtoBのソフトウェア開発に8年間従事 「もっと多くのユーザーに使って欲しい」と感じ始める |
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新卒で入社した独立系SIerで、向田さんはクライアント先であるメーカーに常駐し、主に社内デザイナー向けのソフトウェア開発を手掛けていた。順調に経験を積み、上流工程はもちろん、常駐メンバーの管理業務も任されるようになっていた。順調なキャリアアップではあったものの、請負・常駐というスタイルでは、自身の将来像が見えにくいという不安があったという。
「BtoBでは、どうしても閉じた世界での開発になってしまいます。一部のユーザー向けではなく、もっと多くの人に自分の手掛けたシステムを使ってほしいと、心のどこかで思っていました。また、客先常駐の期間が長かったせいか、会社への帰属意識が薄れてしまっていました」
そこで向田さんは転職を考え始めた。あらためて自分のやりたい仕事や進むべき道を考えた結果、「BtoCサービスを提供している事業会社であれば、幅広い一般ユーザーの反応をダイレクトに感じることができる。自分の将来もイメージしやすいはずだ」という考えに至った。
転職先として頭に浮かんだのは、当時、勢いを増していたWebポータル系の企業。これまでとは違う環境で、経験のない分野のスキルが求められることに、不安がなかったわけではない。だが、「BtoCサービスを手掛けたいという強いモチベーション」と、「一から技術を習得していくだけの覚悟」はあったという。また、SIerで培った問題解決能力や折衝能力などは、新たな環境でも強みになると感じていた。
一度目の転職で、Web系の知識や主体性を習得 しかし、技術面に不安を抱えたまま管理職に |
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転職活動では主に、転職サイトのスカウトサービスや転職エージェントを利用した。客先に常駐していたため、平日に行われる採用面接のスケジュール調整だけでひと苦労。結局、あまり多くの企業を受けることはできなかったという。だが、向田さんはうまく時間をやりくりして転職活動を進め、無事希望していた大手Webポータル企業から内定を得ることができた。
Web開発の分野で求められるテクニカルスキルは、SIerとはまったく異なる。それまでCやC++をメインで扱っていた向田さんは、入社前からPHPやMySQLの学習を始めたという。実際に入社してからは、技術面での知識不足はもちろん、コミュニケーションの面でも新たに学ぶことが多かったそうだ。
「これまでは請負業務だったので、決まった担当者の下、受け身の姿勢で開発に取り組んでいました。ところが、新たな職場では、プロジェクトにかかわる部署やスタッフが多岐に渡るため、自ら積極的にコミュニケーションを図っていく必要がありました」
ギャップに慣れるまでは苦労したが、自らスタッフをランチに誘うなど、周囲と頻繁にコミュニケーションを取るように努力した。そうして徐々に自分の殻を破り、開発現場での主体性を身に付けていった。
手掛けたのはネットリサーチ系のサービスだ。BtoBの要素を含んだサービスではあったが、Webに関われるという点で、大きなやりがいを感じていた。
だが入社して1年後、まだWeb系の知識やスキルが不十分の段階で、向田さんは管理職を任されることになってしまった。「技術面の経験に不安を感じたままメンバーを率いていくことに、大きな戸惑いを覚えました」と向田さんは語る。
二度目の転職で、BtoCサービス開発の醍醐味を実感 やりがいは大きく、将来のビジョンが明確に描けるように |
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自分のキャリアの方向性としてミクシィに目を向け始めたのは、ちょうど管理職に就いたころだ。「mixi」のサービスをユーザーとして使っているなかで、サービスの仕組みや、それを作り出す企業や人に対して興味を抱くようになっていた。
そして、管理職として関わっていたプロジェクトが一段落したころ、転機がやって来た。前回の転職時から登録したままになっていた転職サイトを通して、ミクシィの採用担当者から「一度お会いしませんか」というオファーが来たのである。タイミングの面でも、自身の志向の変化という面でも、まさに絶好のタイミングだった。向田さんは、すぐに面接に応じたという。
今後のキャリアビジョンについて語る向田さん |
「実際に会って話をする中で、自分が本来やりたかったのは、BtoCのサービスを一から作り上げる、新たな事業をみんなで立ち上げる――そういったことなのだと、あらためて確認できました。ミクシィならそれができると確信したんです」
「自分が本当にやりたいと思える仕事の方から、自分を見つけてくれた、そんな運命を感じました」と向田さんは話す。こうして向田さんは二度目の転職をかなえたのである。
Webポータル企業に勤めた2年間で、Web系の開発に多少は慣れていた。だが、ミクシィで主に使われている言語はPerl。入社後、再び、新たな言語を勉強する日々が始まった。ただし「課題を与えられながら、段階を追って技術を身に付けられたので、実務にはスムーズに入れました」と向田さんは語る。
現在はパートナーサービス部のプレイングマネージャとして、mixiアプリやmixiプレミアムに付随する課金系システムの開発・改修に取り組んでいる。周りには、高い技術力を持ち、最先端の技術知識に詳しいメンバーが揃っているため、刺激を受けることが多いという。向田さん自身、情報収集には余念を欠かさなくなった。そして何より、BtoCならではのやりがい――不特定多数のユーザーからのダイレクトな反応――を日々、肌で感じている。
「2008年末に『ミクシィ年賀状』というサービスがスタートし、多くのユーザーさんに使っていただきました。課金システムに関わっていると、どれだけの人がサービスを使っていて、どのくらいの売り上げになっているかという反響が、数字でダイレクトに分かります。大きなやりがいを感じますね。それに、ユーザーさんが日記でサービスについていろいろと書いてくれるんですよ。これも大変勉強になります」
BtoBからBtoCへ。思い切ったキャリアチェンジに挑戦した向田さんはいま、確かなやりがいと自身の成長を感じている。最後に、今後のキャリアについて聞いた。
「課金システム開発の経験を生かすという意味で、ソーシャル×コマース系の事業に携わってみたいですね。5年後、自分が40歳になるとき、ミクシィは間違いなく世界に進出しているはずです。そのとき、自分にどんな貢献ができるのか、常に考えるようにしています」
●株式会社ミクシィの人事に聞いた、向田さんの評価ポイント 前職、前々職でのマネジメント経験を評価しました。特にSIerでの経験からか、強い責任感を持っていたところも印象的でした。 スキルについては、SIer時代にLinux環境のシステムを体験しており、前職でWeb・オープン系のスキルを習得されていましたので、言語の細かな部分については入社後の習得で問題ないだろうと感じました。 弊社ではPerlなど新たな言語を習得してもらう必要がありましたが、スキルの幅を広げようという成長意欲があったためカバーできるであろうと判断しました。また、これまでマネジメント業務をこなしつつも、なお技術的な向上心を持ち続けた前向きな姿勢を高く評価しました。 |
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提供:マイナビ転職
企画:アイティメディア営業企画
制作:@IT自分戦略研究所 編集部
掲載内容有効期限:2010年3月31日