自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |

ITエンジニアを続けるうえでのヒント〜あるプロジェクトマネージャの“私点”

第7回 中心は「ココロ」、リーダーシップトライアングル

野村隆(eLeader主催)
2005/9/23


将来に不安を感じないITエンジニアはいない。新しいハードウェアやソフトウェア、開発方法論、さらには管理職になるときなど――。さまざまな場面でエンジニアは悩む。それらに対して誰にも当てはまる絶対的な解はないかもしれない。本連載では、あるプロジェクトマネージャ個人の視点=“私点”からそれらの悩みの背後にあるものに迫り、ITエンジニアを続けるうえでのヒントや参考になればと願っている。

縦軸のWhyはリーダーシップ

 おかげさまで、この連載も7回目となりました。だいたい毎月1回掲載しているので、連載開始から半年たったことになりますね。半年を区切りと考え、これまでの連載をいったん振り返りたいと思います。

 本連載第1回「WhyとHow、どちらで悩みますか?」では、ITエンジニアの悩みへの回答として、Howの横軸とWhyの縦軸を念頭に置いてキャリアを考えることと、Whyの縦軸の重要性を説明しました。

 その後の連載で、Whyの縦軸でいかに能力を身に付けていくべきかということを解説しました。具体的には「考える力」と「行動力」の重要性、失敗を恐れない精神が行動力を後押しすること(第2回「なぜ『決めただけではダメ』なのか?」)、学校教育における「減点主義」のマイナス面(第3回「失敗を恐れず行動しよう」)、マイナス面を補うための「真の学問」の考え方(第4回「現場で学び、将来への不安を減らす」)を紹介しました。

 連載第5回「リーダーシップは生まれつきの才能ではない」では、リーダーシップを身に付けられるかどうかは心構え次第であることを説明しました。前回の連載第6回「正しい行いは将来を変える」では、陰ながら善い行いをすれば自分自身が改善されるということを説明しました。

 こうやって連載を振り返ると、縦軸のWhy、いい換えればリーダーシップについて、視点といい方を変えて説明してきたとご理解いただけるのではと思っています。

 今後も継続して、Whyの縦軸での能力を付けるためのリーダーシップを解説したいと思っていますが、このまま続けると漫然とリーダーシップを語ってしまうのではという懸念があります。この懸念を払しょくするために、リーダーシップを一定整理・分類して、リーダーシップの構成要素についての私の理解を明確に皆さんと共有し、今後の解説の基礎にしたいと考えました。

リーダーシップトライアングル

 私のリーダーシップに対する理解は、以下の三角形で表現することができます。三角形なので、名付けてリーダーシップトライアングルといいます。

図1 リーダーシップトライアングル

 リーダーシップトライアングルは、特にSI(システム開発)プロジェクトにおけるリーダーシップについて、一定汎用的に考え方をまとめたフレームワーク(枠組み)とご理解ください。

 フレームワークの構成要素を個別に説明しましょう。

 リーダーシップの基礎はCommunicationなので、下のレイヤに置きました。

 リーダーシップの各種教科書にも、リーダーシップとコミュニケーションは表裏一体、切っても切れない関係にあると書かれています。私もこの点は同意します。プロジェクトが大人数になればなるほど、メンバーとの対話が増えるでしょうし、適切にコミュニケーションすることも重要となります。「黙っておれについてこい」というスタイルでは、メンバーはリーダーが何を考えているのか分かりません。

 プロジェクトでは、さまざまなバックグラウンド(経歴や能力のことです)を持った人が集まって、一定期間に与えられたミッションを完遂することが求められます。電子メール、口頭、書面など方式を問わず、対話を通じて共通認識を持つことが重要となることは論を待たないでしょう。問題は、いかに効果的・効率的にコミュニケーションをしていくかということになります。

 さらにいうと、効果的・効率的なコミュニケーションは重要ですが、コミュニケーションの手続きの改善にばかりこだわってしまうと、本質的なことが見えなくなります。次回以降、SIプロジェクトにおけるコミュニケーションの本質についても解説します。

リーダーシップの3要素

 Communicationの上に3要素が載ります。3要素は左からVision、Love、Managementです。それぞれを簡単に説明しましょう。

・Vision

 リーダーたるもの、Vision、つまり先の見通しを提示して部下を率いなくてはいけないということは、概要としてはご理解いただけると思います。先の見通しを何ら示さずに、ただ単に「頑張れ!」「働け!」では、リーダーではないですよね。

 同時に、リーダーがキャリアのビジョンを示すことも、特にSIプロジェクトにおいては重要だと考えます。SIプロジェクトにおいて作業に従事しているのはITエンジニアが多いでしょう。彼らにキャリアのビジョンを提示することは重要です。

 なぜかというと、ITエンジニアはキャリアのビジョンを示され、自分のキャリアにプラスになると理解すれば、作業に専念できるものだからです。いまの仕事が将来のキャリアアップにつながるという説明を怠るリーダーは、なぜ作業者が真剣にならないのかと不満をいうようになってしまいます。

・Management

 特にSIプロジェクトにおいては、進ちょく管理、品質管理が重要な要素を占めます。SIプロジェクトでは通常、ソフトウェアを設計・開発・テストします(当然ですが)。ソフトウェアの特性として、目で見て確認できないという点が挙げられます。

 人間の視覚は、いわゆる五感のうち、最も発達している感覚だと思います。ソフトウェアは、視覚を使って確認できず、状態が把握しがたいという特性を持ちます。ですから、ソフトウェア開発においては、可視化して管理することが重要となります。管理、すなわちManagementが重要となるのです。

・Love

 ここまで説明すると多くの人は、CommunicationをベースにVisionとManagementがあれば、Leadershipをその上に載せられると考えがちです。しかし、私の理解は違います。確かにリーダーシップの教科書には、VisionとManagementが重要だと書かれています。しかし、VisionがあってManagementができても、自分自身と部下・上司の「ココロ」(心)の管理ができない人はリーダーたり得ないと私は考えています。

 このココロの考え方を、リーダーシップトライアングルの中心に据えました。言葉としてはLoveですが、男女の愛とか、好き好きという恋愛感情とは異なります。Loveとは儒教でいう仁愛です。他者への思いやりの心、自分の感情をコントロールして正しく生きる精神とでもいいましょうか。詳しくは次回以降で説明します。

 これらの3要素、Vision、Management、そしてLoveがそろって初めて、その上にLeadershipが成り立ちます。この考え方がリーダーシップトライアングルです。

 次回以降、リーダーシップトライアングルの個別構成要素を解説します。次回はCommunicationを解説する予定です。ご期待ください。

 なお、私が主催するブログサイトはリーダーシップトライアングルの構成要素、Communication/Vision/Management/Loveによってトピックが分類されています。興味のある方は参照してくださるとご理解が深まるかと思います。サイトトップページの右上に分類が表示されています。

筆者プロフィール
野村隆●大手総合コンサルティング会社のシニアマネージャ。無料メールマガジン「ITのスキルアップにリーダーシップ!」主催。早稲田大学卒業。金融・通信業界の基幹業務改革・大規模システム導入プロジェクトに多数参画。ITバブルのころには、少数精鋭からなるITベンチャー立ち上げに参加。大規模(重厚長大)から小規模(軽薄短小)まで、さまざまなプロジェクト管理を経験。SIプロジェクトのリーダーシップについてのサイト、ITエンジニア向け英語教材サイトも運営。

ITエンジニアを続けるうえでのヒント バックナンバー

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。