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第1回 コミュニティは「知り合い系」から「出会い系」へ変化する

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2008/3/12

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アイデンティティと承認欲求

 「コミュニケーションを考えるとき、アイデンティティの確立と密接に結びついていると感じます」と竹迫氏は話す。

 「『高校三年生』という歌が流行ったようにかつては、中学、高校卒業時に就職か進学かを選び、自分のアイデンティティを確立しようとしたように思います。いまは取りあえず、大学に進学する人が多いですし、中には大学院、社会人になっても自分の行く先をどうするか決めかねている。人生のモラトリアムです。ただ、それは悪いことではなく、それだけ時代が豊かになって、選択肢が増えたということです。選択肢が増えるとうれしいこともあるが、逆にどれか1つを選ぶまでに時間がかかります」

 竹迫氏は「アイデンティティというのは、『承認欲求をどう満たすか』という部分ともかかわる」という。承認欲求には、自分が望むあるべき姿に重なっているかという自己承認とほかの人から認められたいという他者承認がある。かつては家族や会社の存在が他者承認を得られる場所だったが、いまはネットでも他者承認を得られる。

 「ある場所でなかなか認められないエンジニアが、ほかの場所にいって『あいつはすごい』ということを認めてもらえるのが、エンジニア同士のつながりのいいところだと思います」と竹迫氏はいう。そうした「あいつはすごい」といってもらえる場を求めてコミュニケーションをしているのかもしれない。

同じ価値観を持っている誰かを見つけたい

 エンジニアのコミュニケーションについて、竹迫氏は次のように話す。

 「エンジニアは作ったものが最終的な判断になるので、社会的なバックグラウンドは関係なしに語り合えます。また、自分で作ったものを見せて『これ面白いだろ』を共有したいというのはあるかもしれません。一般的に『クリエイター』と呼ばれる人たちは、もうちょっと広い層に受けるものを考えると思いますが、エンジニアの場合、同じエンジニアにしか価値が分からないというものも多いです」

 例えば、Web系でサーバサイドの開発を行っているエンジニアは、なかなか外からは見えにくい部分を開発している。そういった場合、その仕事の価値や『これ面白いだろ』というのは、やはり同じことをやっているエンジニアにしか分かってもらえない。

これからのエンジニアコミュニケーション

世代によってコミュニケーションの質が違うという竹迫氏。若い世代では互いに前提となる共通知識を踏まえたうえで、短い言葉でコミュニケーションをするという。

 では、竹迫氏はこれからのエンジニアのコミュニティ、あるいはコミュニケーションはどう変化していくと考えているのだろうか。

 「すでにその傾向はありますが、小規模コミュニティが同時多発的にいろんな場所で形成されるだろうと思います。10〜20人くらいで集まって、ニッチでとがった話題について、共有するという動きが起こるでしょう。その1つとして、Shibuya系のコミュニティがあるような気がします。Shibuya.pmやShibuya.jsは大きくなっていますが、例えば、Shibuya.abcというActionScriptのバイトコードだけについて語り合う場のように、非常に限られた話題について語る場ができると思います」

 少人数でニッチな話題の共有ができるようになる。それもさまざまな地域で。「いい時代」と竹迫氏はいう。かつては、特定の地域で特定のものごとに関心を持っている人たちをどうやって集めるかということは悩みの種だったという。「いまは検索技術も発達していますし、ネットでつながりやすくなったのかなと思います」

 また、小さなコミュニティができて、そこで完結するのではなく。竹迫氏のようにいくつものコミュニティと横断的につながるハブのような存在の人も、今後一層増えてくるだろう。

仲間の存在とは

 竹迫氏にとってエンジニアという仲間の存在をどうとらえているのだろうか。

 「考えたことなかった」と前置きをしつつ、「お互いに認め合える関係だと思います。いろんな価値観の人がいることは尊重される」と竹迫氏は話す。

 「私自身のポリティカルな話をすると、権威主義はあまりなじめません。なので、小規模の技術コミュニティや勉強会は上下関係がなくフラットです。年の差や役職、会社の規模に関係なく同じ話題で語り合えるので面白い」

 「自分自身はShibuya.pmでの発表。それが大きな節目だったかもしれません。それがなければ、会社の中で閉じて仕事をしていたかもしれません。ただ、それはそれで1つの形だとも思います。ライトニングトークなど、勉強会やイベントで初めて講演することを公園(講演)デビューと呼んでいますが、自分は公園デビューしてよかったなと思いました。積極的に外に出ることでいろいろな人と知り合えましたから」

 そう竹迫氏は自身の経験を振り返る。エンジニア同士のつながり、それは自身の人生を変えた大きな存在であり、そしていまもなお、刺激を与え続けてくれる存在なのかもしれない。

 

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