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人と違う道を歩き、人と違うセンスを磨け
未開の地をひたすら進む、OS開発者の哲学とは

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/8/31

 「プログラミングは趣味です」。そう断言するのは「OSASK」の開発者 川合秀実氏。川合氏はこの「趣味」に人生を賭けて取り組んでいるITエンジニアだ。

なぜOS開発への道を進んだのか

OSASK計画 代表 川合秀実氏

 川合氏がPCに触り始めたのは小学4年生のとき。BASICを使ってゲームソフトを作っていた。雑誌に載っているコードを打ち込んだり、図書館にあったPCの本をひたすら読んで、勉強したという。川合氏とPCの長い付き合いはこのときから始まった。

 PCに長く慣れ親しんだ人でも「OSを開発する」というところまでは、なかなか至らない。川合氏はどういう経緯でOS開発をすることになったのか。川合氏がOS開発を志したのは中学生のころ、そして実際に開発を始めたのは大学生時代からだ。

 「もともと、OSを作りたいという気持ちはありました。僕が作ればよりよいものができると漠然と考えていました」と川合氏は話す。MS-DOSやOS-9といったOSに親しんできた川合氏は「そのくらいのものならば2〜3年でできそうだ」と考えていたという。大学院に進んだのも、修士課程の間でOSASKが作れると考えていたからだ。「いま思うとばかですよね。無知のなせるわざですけど」と川合氏は笑う。

開発に集中する日々

 数年でできると考えていたOS開発だったが、やはり大学院在学中には完成させることができなかった。大学院卒業後も川合氏はOSASKの開発に専念した。

 「大学生のころから奨学金をずっと使わずにためていました。将来、このお金がなくなるまで好きなことをして暮らそうと思っていたんです。大体の人はお金が入ったら『何に使おう』と考えると思うのですが、僕の場合は『あとこれくらいは生活できるな』という感覚なんです。それでお金がなくなったら、どんな人生でもいいので適当に仕事をしようと。それまでは好きなことをしようと考えていました」

 しかし、大学時代からためてきた貯金は奨学金の返済などで残り少なくなってきた。川合氏はOSASKのML(メーリングリスト)に相談を投げかけた。

「MLのメンバーがいろいろと『こんな仕事はどうだ』とか『こんなアルバイトはどうか』と、いろいろと考えてくれたんですね。結局は『IPAの未踏ソフトウェア創造事業に申請してみよう』ということになりました」

 未踏ソフトウェア創造事業に申請し、未踏本体では採択されなかったが、未踏ユースに採択された。「もしダメだったら、どんな仕事でもいいから取りあえず働きながらOSASKの開発を続けよう」。そう覚悟していたという。

誰もやらないことをやるから価値が生まれる

 2000年4月に正式にスタートしたOSASK計画は、2001年にソースコードを公開してからはOSASKの開発コミュニティの参加者も増えた。川合氏によると未踏ユースの採択では、このコミュニティも評価されたという。

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 それまでほぼ自分1人で開発を進めてきたが、コミュニティが大きくなるにつれて川合氏の考え方にも変化があった。

 「そもそも自分のために作っているのに、人が手伝ってくれることはあり得ないことです。ありがたいのと同時に申し訳なく思いました。この人たちにどういう見返りがあるだろうか。そう考えました。だから、OSASKだけではない汎用的な技術を学べる場を作りたいとか、ほかの人の要望を多少は聞こうという気になりました」

 OSASKのコミュニティに参加している人には、中学生や高校生など若い人が多い。普通の開発コミュニティでは大学生でも「若い」といわれるが、OSASKでは「お兄さん」という立場だという。しかし、川合氏自身も「なぜ若い人が多いのかよく分かりません」と首を傾げる。「理系離れ」がささやかれる中、珍しい現象である。

 川合氏の著書『30日でできる! OS自作入門』(毎日コミュニケーションズ刊)は、こうした若い層の育成も視野にいれている。川合氏は同著のあとがきでこう記している。

この本は中学生でも読めるようにしようと全力をつくしました

『30日でできる! OS自作入門』(川合秀実著、毎日コミュニケーションズ刊)

 川合氏は「理系離れ」といわれる現状について、次のように話す。

 「そういう状況だからこそ、理系に行くべきです。みんながやらないことをやるから希少価値になるんです」

 多くの人が歩く道を歩んでも、その道でトップになれるとは限らない。むしろ、人が多い分だけ優秀な人も多く、競争が激しいだろう。「そういうところでは多分僕には勝ち目がないんです。みんなが行かない日陰の方に突っ込んでいくと何をやっても成果になります。OSを作ってつくづくそう思いましたよ」


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