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人と違う道を歩き、人と違うセンスを磨け
未開の地をひたすら進む、OS開発者の哲学とは

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/8/31

あまのじゃく的発想がOSASKにつながる

 川合氏のプログラミング哲学は「自分が楽をしたいけれど、コンピュータも楽をさせる」だ。つまり人間がコンピュータの方に歩み寄り、妥協するところは妥協するということだ。普通は人間の行動や考え方にコンピュータを合わせて、コンピュータに仕事をさせようとする。

 川合氏は「もちろん僕もそうなんですが、でも数値を16進数で考えておけば、コンピュータとコミュニケーションしやすくなります。だから僕の頭は基本的に16進数で考えているんです。コンピュータにとって簡単なことは結構エレガントなことなんじゃないかと思います」と話す。

 それは川合氏自身がソフトウェアを作る立場から、プログラミングを考えているからだ。

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 「自分で作るので、あまり長いコードは書きたくないということがあります。できるだけコードを短くしたい。それにあまりユーザー側に立って要求をしません。ある意味でバグを仕様と割り切ることもあります。もちろん気になるバグは取りますけど」

 そして川合氏が考えるいいエンジニアリング。それは「地に足が着いたエンジニアリング」だという。大きな目標を立てたはいいが、何からやっていいか分からない。これが地に足が着いていない状況だ。最初に大きな目標を持つことは重要だが、そこになかなか届かないからといってあきらめてしまうことはよくない。「自分ができることからスタートすることが重要」と川合氏は話す。

 また、「あまのじゃく的発想も大事」と川合氏。

 「例えば『1〜10の和を求めるプログラムを書きなさい』という問題があったとして、普通はfor文を使うと思うんですが、僕の場合、printfで55と表示させます。要は答えさえ出ればいいんだということです。そういう発想もアリだと思うんですよ」

 正攻法から一歩踏み込むと「『面白い』プログラマになれます」と川合氏はいう。「それは『良い』プログラマかどうかは分かりませんが、個性的なので周りに埋もれずに生きていけると思うんですよ。もちろん普通のプログラミングができるという前提ですよ」

 こうした正攻法から外れた発想が積み重なりOSASKにつながったという。

学生時代の経験を生かせ

 川合氏にエンジニアにとって必要なことを聞いた。

 「僕は小学校のころから、委員長とか班長とかそういうことをやらされてきたんですけど、いま思うとあり得ないくらいいい経験だと思います。ほかにも文化祭で店を出すとか、劇をプロデュースするとか、こういう学校の中での経験は、大人になってからだとなかなか体験できません」と川合氏は自身を振り返る。

 「学生時代にそういう経験をした人は『自分にもスキルがあるのか』と自覚してもらいたいですね」

 川合氏も学生時代のこうした経験から、人付き合いやコミュニティ運営のノウハウを得て、現在も役立っているという。「これまでの積み重ねから、自分の目の届く範囲だったら、メンバーがそれぞれ不満なく、かつ僕のやりたい方向に進ませるということができるようになりました」

SFを読め。そして自分と会社の間の妥協点を見つけろ

 「SFを好きになろう」。川合氏は若いITエンジニアに向けて、次のように話す。「SFの中にはエンジニア気質みたいなものが集約していると思うんですね。エンジニアとして生きていくためのヒントやセンスがたくさんあります。プログラマに限らず、エンジニアにはセンスが必要です。SFはそういったエンジニアに必要なセンスを磨いてくれると思います。ただ、それは僕が望むセンスであって、一般的にどうかは分かりませんけど」

 OSASKの開発コードには、ある有名なSF小説から名付けられたものもあるという。

 また川合氏は「うまく妥協してください」ともいう。「自分のやりたいことと、お金がもらえることはずれていると思うんですよ。自分がやりたいことをやりつつ、会社のやってほしいこともやれるという妥協点を見つけてください」

 自分がやりたいことと会社がやってほしいこと。この2つの関係のバランスを取ることはなかなか難しい。やりたいことだけを追い続けるのは、リスクが高く相当の覚悟が必要だ。その一方で、会社の仕事は面白くないけど生活するために仕方がない。そう割り切ってしまうのも寂しい。「自分から積極的にかかわれる何かがあればいいですよね」と川合氏はいう。

 「人に喜ばれることをしていれば、ひょっとしたら世の中の人が僕を必要としてくれるかもしれないじゃないですか。人の役に立っていれば、いずれ何とかなるんですよ。多分、甘すぎる考えですけどね」と川合氏は笑った。

 

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