先達を見つけ、自分なりの勉強会を開催せよ
千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2008/2/18
■会場手配も大変
勉強会を開催するには準備が必要だ。重要なのは会場の手配。勉強会の内容や規模によるが、勉強会を開くに当たって欠かせないという条件はあるのだろうか。
「勉強会を開催している場所は、ネットにも繋がっていないし、最初はプロジェクターもありませんでした。でも、無いなら無いで何とかなるものです」と上川氏。山根氏も「必要なのは、勉強会を開催する人にとって負担にならない費用で分かりやすい場所、というくらい」と同意する。
その一方で岩松氏は「会場の予約がしやすいかどうか」ということも考える必要があるという。「会場によってはその会場に直接行かないと団体の登録ができないところとかありましたね。1回やると次からはWebで予約できるのですが」
会場によっては2カ月ほど前から予約しないといけないケースもあるという。そのためあらかじめ人数の規模感を把握しておくことも重要だ。
■勉強会での困りごと
イベントごとに付き物なのがトラブル。これまで勉強会を開催する中で困るようなこともあるだろう。上川氏はまず「参加人数」について悩んだという。
「キャンセルする人がどのくらいいるのか、あるいは当日に飛び入りで参加する人がどのくらいいるのかが読めませんでした。あまり多いと会場に入りきれなくなりますし、用意している資料も足りなくなります。これは何回か回数をこなさないと読むのが難しいので、最初は結構困りました」と話す。
イベントを開くとさまざま人がやって来る。中にはお互い見知った顔があれば、まったく新規で参加する人もいる。いろいろな人が集まるだけに、そこでトラブルが生じることもある。
山根氏はある出来事が印象に残っているという。「『自分が思っていた勉強会と違うから参加費用を返してほしい』という人がいました…参加費用と言っても500円なんですけどね(笑) 有志が集まる勉強会に、『お客さま』のつもりで来るのは違うんじゃないかと思いましたね」
勉強会に対する考え方は人それぞれかもしれないが、主催する側と参加する側がそれぞれ考えている勉強会の方向性が違うことは、お互いにとって不幸なことだ。
「『自分たちの考えていることはこうだよ』という雰囲気をいかにして作るかが重要で、東京エリアDebian勉強会では、事前課題を出してもらうことでその問題について、みんなで考えようというふうにハンドリングしています」と上川氏は話す。
■勉強会の成果
勉強会を開催するようになってから、勉強会参加者の中でパッケージのメンテナーになった人や、翻訳の活動を始めた人、Debianで使われているソフトウェアに興味を持ち、そちらの開発を始めたという人がいるという。勉強会という存在がさまざまな人に刺激を与えている。
小林氏も勉強会がきっかけでパッケージのメンテナンスをするようになったのだという。「翻訳は以前からやっていたのですが、パッケージというどこから手を付けていいのか最初のうちは分かりませんでした。教えてもらったツールを使いながらちょっとずつ勉強していったという感じですね」
岩松氏も「勉強会が自分にとって大きなプラスになっている」という。
「内勤が中心のエンジニアだと、人前に出て何かを発表するという機会はそれほどありません。資料を作るためにもすごく勉強になります。発表すると自分のだめなところが見えるし、周りの人が自分の発表に対して突っ込みをいれてくれます。もし、質問に答えられなくても後で調べて、次回に発表したり、ブログに書いたりといったことが自分のプラスになっています。そういうことを何回も繰り返し練習させてもらえる場だと思いますね」
■続けるための秘訣は
物事はそれを始めることが大変だが、続けることはもっと大変だ。東京エリアDebian勉強会は、2005年の1月から開始からまる3年が経過した。勉強会を長く続ける秘けつのようなものはあるのだろうか。岩松氏は「上川さんの人徳」と「仕事の振り方がうまいこと」を挙げる。小林氏や山根氏もそれに同意する。
「上川さんは、きついというときには『ちょっとつらいかも』と結構白旗を出すんですけど、これに対して『じゃあ、私がやりましょうか』という人が必ずいるのは、上川さんがこれまでやってきたことの成果だと思います。人徳ですね。」(岩松氏)
山根氏も「『さぁ、やれ!』というとみんな引いてしまうし、かといって自分で抱えすぎてしまうとつぶれてしまう。中心となる人のバランス感覚が重要だと思います」と舵取り役の重要性を強調し、上川氏も「頑張りすぎないことが大事」という。
また上川氏は「ロールモデル」の重要性を挙げる。「カーネル読書会とかほかに長く続けているところを見て、『こういうことをやっているのか』と参考にしています」
自分の関心にうまく当てはまる勉強会やイベントがある場合には、そこで同じ問題意識や関心事を共有する仲間と楽しみながら参加するといいだろう。しかし、もっと自分が関心を持っている分野のイベントに参加したい、あるいは自分がいってみたいイベントがなかなかないという人は、自身でイベントを開催してもいいだろう。上川氏がいうように、まずはロールモデルとなるイベントを参考に、自分たちに合った形式にしていくことが効果的だ。自分自身にとっていいフィードバックが得られるかもしれない。
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