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国際競争時代に突入するITエンジニアに生き残り策はあるか?
日本人ITエンジニアはいなくなる?

第33回 成長企業ユニ・チャーム、情報システム部の海外展開

小平達也
2009/2/24

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戦略理解、技術知識の向上と必要な「価値観の共有」

 グローバルISマネージャー会議に参加したメンバーに共通するのはその高いロイヤルティーだろう。アジアのITエンジニアは一般に離職率が高いことで有名であるが、同会議への参加者の勤続年数は4〜15年と、平均勤続年数が10年近い。この動かしがたい事実は同社 情報システム部のグローバル展開にとっては非常に心強いものだろう。人材の定着に関しては、その背景には給与、上司・同僚・顧客などとのコミュニケーション、社内におけるキャリア可能性などいろいろな変数があり、バランスマネージメントが大切であるが、同社の場合、これらを踏まえたうえで「市場と顧客に対し、常に第一級の商品とサービスを創造する」という企業理念と「日本からアジア、そして世界に通じる吸収体製品事業のリーディングカンパニーを目指す」(ユニ・チャーム 社長 高原豪久氏)という経営トップの思いが共有されていることは想像に難くない。

 実際、グローバルISマネージャー会議開催に当たっては高原社長から直々に講話を聞く機会があるとともに、参加者1人1人が社長と一緒に写真に納まるという非常に温かく配慮に富んだ対応をしている。また、会議初日のオリエンテーションでは各国から参加したメンバーに対して以下のようなメッセージが伝えられた。「急速に事業を拡大しているからこそ、『一体感』という単語・思いを大切にしたい。日本語の『一体感』を英語で直訳するとfeeling of oneness やsense of belonging、sense of togethernessになりますが、ユニ・チャームおいては、『Feelings that you care about the others』というような「相手を思いやる気持ち」が込められています。社長はじめ全社員が日々感じ、共有する『わが社の一体感』は世界中どこに行っても同じであり、それは日本語でそのまま『Ittai Kan』なのです」(ユニ・チャーム 情報システム部 大山千春氏)

図3 全体オリエンテーションで背景や狙いとともに「一体感」(Ittai Kan)の重要性について話す情報システム部 大山氏

 筆者も期間中、研修講師をしたのだが、驚くべきことに中国・台湾・韓国・タイ・インドネシア・サウジアラビアなど各国からの参加メンバーが極めて適切に、上記大山氏の言葉にあるような「わが社における一体感」という概念を理解していた。これはすごいことである、と感心すると同時にユニ・チャームのグローバル展開の強さの秘密を垣間見た思いであった。

図4 日本ビジネス理解セッションと、参加者各グループから出された「Ittai Kan」

グローバル戦略構築に必要な「グローバルリソースポートフォリオ」と「価値観の共有」

 今回、ユニ・チャームのグローバル展開をご紹介したが、中期的な日本国内の人口減少化、短期的には急速な円高を踏まえると、今後、不動産、銀行、人材、小売り、食品、外食、レジャーなどあらゆる内需型産業で同様の動きが見られるだろう。いままで国内対応だけをしてきたITエンジニアはそれぞれの職場で大きな挑戦に直面する可能性が高い。今回取り上げたケースは本社と海外現地法人という、連結経営の中での話であるが、オフショア開発など、「経営者から見たグローバルリソースの最適活用」という視点では「国内」「海外」という軸と「正社員などの内部資源」「派遣社員、ベンダなどの外部資源」という軸に分けて整理でき、ジェイエーエスではこれを「グローバルリソースポートフォリオ」(GRP)と呼んでいる。

  国内 海外
内部資源
(I)
国内・内部資源型
・海外人材活用
・日本人社員グローバル化
(III)
海外・内部資源型
・現地採用人材の活用
 
外部資源
(II)
国内・外部資源型
・派遣社員
・ベンダへの開発、運用委託
 
 
(IV)
海外・外部資源型
・非連結対象の現地関連会社社員
・オフショア開発
・BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)
図5 グローバルリソースポートフォリオ―最適活用4分類―

 短期だけでなく中期的に外部環境が大きく変化していく中で、4分類のリソースポートフォリオを基に、どのITリソースを確保し活用するかという視点が非常に大切になる。グローバルリソースを最適に活用するためには、単に制度的に構築・統合を進めるだけでなく、ユニ・チャームのケースのように「規範」「価値観」「ウェイ」といったものをグローバル全体で、どこまで共有し、実行に移すことができるかが非常に重要になってくる。当然これは日本にいるITエンジニア1人1人にとってもその理解と実行はいままで以上に重要になってくる。

 

今回のインデックス
  日本企業グローバル展開モデルの4分類
 グローバル戦略構築に必要なこと

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筆者プロフィール
小平達也(こだいらたつや)
ジェイエーエス 代表取締役社長
◆東京外国語大学 多言語・多文化教育研究センター コーディネーター養成プログラムアドバイザー
◆早稲田大学商学部学術院総合研究所 WBS研究センター 日中ビジネス推進フォーラム特別講師
◆ジェトロ BJTビジネス日本語能力テスト外部化検討委員会 委員

大手人材サービス会社にて、中国・インド・ベトナムなどの外国人社員の採用と活用を支援する「グローバル採用支援プログラム」の開発に携わる。中国事業部、中国法人、海外事業部を立ち上げ事業部長および董事(取締役)を務めた後、現職。ジェイエーエスではグローバル採用および職場への受け入れ活用に特化したコンサルティングサービスを行っており、外国人社員の活用・定着に関する豊富な経験に基づいた独自のメソッドは産業界から注目を集めている。

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