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国際競争時代に突入するITエンジニアに生き残り策はあるか?
日本人ITエンジニアはいなくなる?

最終回 アフリカ人エンジニアは日本を目指す?
――シスコシステムズ×JICA×東京大学。産官学連携でアフリカIT人材を育成

小平達也
2009/9/30

第35回1 2次のページ

ITエンジニアの競争相手が海の向こうからやってくる。インド、中国、それに続くアジア各国。そこに住むエンジニアたちが日本人エンジニアの競争相手だ。彼らとの競争において、日本人エンジニアはどのような道を進めばいいのか。日本だけでなく、東アジア全体の人材ビジネスに携わる筆者に、エンジニアを取り巻く国際情勢を語ってもらった。

 「ITの進化とグローバリゼーションがもたらす仕事と所得の平準化に対応するためには、個人の高付加価値化が必須である」という考えのもと、2003年11月にスタートした本連載。今回で第36回の最終回を迎え、次回から新シリーズに入る。今回は連載の区切りとして、日本における海外高度人材受け入れ推移と政策を振り返るとともに、産官学が連携して進める新たな取り組みと今後の可能性について見ていきたい。

日本における海外エンジニア受け入れの現状

 後から振り返ると、21世紀初頭の日本の雇用情勢は文字どおり「山あり谷あり」であった。

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 新卒採用の変遷だけを見ても、1990年代から始まった「就職氷河期」が2005年にようやく終わり、2006〜2007年は一転、人手不足による売り手市場で、企業にとって採用が難しい「採用氷河期」となった。新卒、第二新卒、場合によっては博士課程修了者などの第三新卒という言葉まで飛び出した。その後、2008年9月のリーマンショックとそこから始まった世界同時不況の影響を受け、再び現在の厳しい情勢となっている。

 海外に目を向けてみると、2001年に中国が、2007年にはベトナムがそれぞれWTO(世界貿易機関)に加盟するなど、アジアの新興国が単なる製造拠点から市場へと大きく変ぼうを遂げつつある。一方で中国では、大学卒業後半年過ぎても失業状態にある卒業生は73万5600人に上ると推計されている(2009年、就職青書)など、雇用情勢では楽観視できない状況である。この間、日本で働いている海外エンジニアの登録人数推移を見ると、2万3210人(2004年)、2万9044人(2005年)、3万5135人(2006年)、4万4684人(2007年)、5万2273人(2008年。数字はすべて法務省入国管理局)と着実に増加しており、5年で倍増していることが分かる。

 日本における外国人ITエンジニアなど海外高度人材に関する基本方針については、2005年3月に発表された「第3次出入国管理基本計画」において、専門的、技術的分野の外国人労働者、つまり海外高度人材は一層積極的に受け入れていく方針である。海外高度人材獲得のための具体的な施策としては、経済産業省が「アジア人財資金構想」を、文部科学省の協力の下2007年度から進めている。これは優秀な留学生の日本への招聘(しょうへい)や日系企業での活躍の機会を拡大するため、産業界と大学が一体となり、留学生の募集・選抜から専門教育・日本語教育、就職活動支援までの人材育成プログラムを一貫して行うものである。

 また、文部科学省は留学生30万人計画に基づき「国際化拠点整備事業(グローバル30)」を進めている。初年度に当たる2009年度には13大学を採択した。この事業は大学の機能に応じた質の高い教育の提供と、海外の学生が日本に留学しやすい環境を提供する取り組みである。英語による授業の実施体制の構築や、留学生受け入れに関する体制の整備、戦略的な国際連携の推進など、わが国を代表する国際化拠点の形成を支援することで、日本人学生を留学生と切磋琢磨(せっさたくま)させ、国際的に活躍できる高度な人材を養成することが目的である。

 省庁間で連携した取り組みとしては2008年12月、河村建夫内閣官房長官(当時)より「高度人材受入推進会議」が主宰され、2009年5月に報告書「外国高度人材受入政策の本格的展開を」が取りまとめられた。ここでは海外高度人材受け入れ政策を国家戦略と位置付け、政府内部に統一的な政策立案・遂行体制を確立する。併せて外国高度人材の民間における受け入れ支援体制を強化するなど、10の基本的考えに基づいて基本目標と戦略を構築すべきとしている。

 これらは海外ITエンジニアなどに代表される海外高度人材受け入れに関する政策であるが、こうした国の政策に強い影響を与えているものの1つが経済界からの要望であろう。特に日本経済団体連合会(日本経団連)は2004年に発表した「外国人受け入れ問題に関する提言」において激化する人材獲得競争において海外高度人材受け入れの円滑化を要望しており、その後も「人口減少に対応した経済社会のあり方」(2008年)、「競争力人材の育成と確保に向けて」(2009年)などで継続的に提言を続けている。

日本の産官学の連携によるアフリカITエンジニア育成支援

 外部環境の変化とともに、政府・経済界・大学はより一層、海外ITエンジニアなど海外高度人材の受け入れを進めている。そんな中、今年の6月末、アフリカから2人のモザンビーク人ITエンジニアが来日した。モザンビーク(正式名称:モザンビーク共和国)と聞いても一般の方にはイメージが分かないかもしれない。無理もない。アフリカ大陸の南東部に位置し、人口2289.4万人(2008年)の同国に在留している日本人は124人(2008年)、一方、日本に在留するモザンビーク人は24人(2009年)というレベルである。これを海外各国に長期在留している日本人数と比較してみると、中国は12万7905人、フィリピンは1万4424人、ベトナムは5613人、インドは2819人、サウジアラビアは1092人(すべて2007年、法務省入国管理国)である。これらの国々と比較して同国の124人という在留日本人数はいかにも少なく、日本との関係性が低いことはこの点だけを見ても分かる。

 そんな「遠いアフリカの国」モザンビークであるが、実は同国はアフリカではルワンダ共和国とともにIT立国を目指している国でもある。モザンビーク政府は、同国におけるICT(情報通信技術)人材の育成を目的として、モザンビークでは初のICT専門高等教育機関として設立された、モザンビーク情報通信学院(Mozambique Information and Communication Technology Institute、通称MICTI)の教員2人に対する技術協力の要請を日本政府に挙げてきた。これを受け、日本の政府開発援助(ODA)のうち「技術協力」「有償資金協力」「無償資金協力」を一元的に担い、アフリカのICT分野における人材育成を行うJICA(国際協力機構)は、シスコシステムズ日本法人および東京大学に協力を依頼。JICA、シスコシステムズと東京大学の3者が連携し、3週間、東京大学大学院にてトレーニングを提供したのである。

 来日した2人はMICTIの教師であり、現地のICT第1世代ともいえるエンジニアである。日本側では彼らに実践的な技術だけでなく、優れた教授法なども提供する。彼らは、自分たちに続く“モザンビークのICT第2、第3世代”を育成するという使命を持っている。同国のIT産業振興のためにも基調な人材なのである。

 シスコシステムズでこの取り組みに対応しているのが「シスコ ネットワーキング アカデミー プログラム」である。これは1997年に開設した非営利プログラムで、世界各地の教育機関を通して、グローバルな経済活動に不可欠なインターネット技術を学生たちに提供するものである。同プログラムは現在、世界160カ国以上、9言語で展開されている。現在、同プログラムの卒業生の多くがITエンジニアとして各地のネットワーク構築やサポートに当たっている。

 シスコシステムズは今回のトレーニングをCSR(企業の社会的責任)の一環と捉え、カリキュラムと教材を無償提供している。実際のトレーニングは、「Next One Billion」を合言葉に、現在インターネットに接続できていない人々をつないでいくことを目標に研究活動をしている東京大学大学院 情報理工学系研究科が主に担当した。シスコ技術者認定CCNP(Cisco Certified Network Professional)取得のための各種項目のほか、帰国後、シスコ ネットワーキング アカデミーの教員として必要となる実践的な知識や技術を教育した。

図1 シスコシステムズ―JICA―東京大学による産官学連携スキーム


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