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幸せな「エンジニア」ライフの理由

かずひこ
2007/12/17

自らのアイデンティティを「オープンソースプログラマ」と定め、オープンソースと自分の可能性を追いかけるために海を渡って8カ月。現在は非常に幸せな日々を送っているというかずひこ氏。なぜ幸せな仕事ができているのか、これまでを振り返った。

 今年の4月にフランスに渡り、Nexediというフランスの会社でオープンソースERP「ERP5」の開発に参加して、早くも8カ月がたちました。日本を発つ前は、どんな未来が待っているのか不安でいっぱいでしたが、いまはフランスでとても幸せなエンジニアライフを送っています。この幸せな状態があまりにも普通となっているので、普段は特に「自分が幸せだ」ということを意識しないのですが、なぜ私は幸せなのか、一度じっくり振り返ってみることにしました。

まっすぐオープンソースに向き合える

 以前、「アイデンティティはオープンソースプログラマ」という記事で書いたように、私はオープンソース・プログラマとして生きるべくNexediに転職しました。実際に働き始めると、オープンソース、そしてソフトウェアの自由に対して本当にまっすぐ向き合っている会社だと強く感じました。

 例えば、CEOのJean-Paul Smetsは、フランスの官僚から転身してNexediを創業し、「ERP5」を生み出した人ですが、EUにおけるソフトウェア特許反対運動の主要メンバーとして実際に成果を挙げ、しかも世界で初めてオープンソースとビジネスに関する書籍を書きました。

 CTOのおくじさんは、ブートローダの「GNU GRUB」の開発をはじめ、数多くのオープンソースソフトウェアの開発に長年携わっています。その活動を通じておくじさんと知り合ってNexediにやってきた社員もいます。私もその1人です。

 先日入社したばかりの新人に「なぜこの会社を志望したの?」と聞くと、「自由なソフトウェアのために仕事ができるから」との答えが返ってきました。Nexediには、サムソンのオーディオプレーヤーを持っている社員が多いのですが、そのうちの1人に「どうしてサムソンにしたの?」と尋ねると、「Ogg Vorbisに対応しているから」と即答しました。ちなみに私も同じ理由でサムソンのオーディオプレーヤーを愛用していますし、私の妻はiPodのファームウェアを「RockBox」というオープンソースのものに書き換えてOgg Vorbisで音楽を楽しんでいます(参考記事「Ogg Vorbisのデータを再生するには」)。

 さらには、社員が使うノートパソコンは購入後、ハードディスクの中身をすべてLinuxに書き換えるだけでなく、同梱されているWindowsのCD-ROMはメーカーに返送しています。最近はWindowsがバンドルされていないノートパソコンが少しずつ出てきましたが、早くこういった手間を掛けずに済む日が来ればいいなと思っています。

 Nexediにとっては、オープンソースは単に「使って便利なもの」ではなく、会社の中心となるポリシーであり、社員同士で自然に共有している考え方です。そして、ソフトウェアの開発モデルとしてもビジネスモデルとしても、オープンソースはより優れているという考えの下に、ERP5をオープンソースのERPとして作り続けています。

 皆さんの中には、日々の仕事はプロプライエタリだけれど、趣味の時間にオープンソースのコミュニティにかかわっているという人もたくさんいるでしょう。でも私は、自分の持てる限りの能力を、すべてオープンソースのために注ぎたいと思っています。このようにまっすぐにオープンソースと向き合える環境で働けるのはとても幸せなことです。

いいものを作って届けられる

 2つ目の幸せの理由は、仕事そのものが技術的にとても興味深いことです。転職をした理由はいろいろありますが、ERP5に対する技術的な関心も大きな要因です。

 ERPは、人やモノやお金など企業におけるさまざまなリソースを一元的に扱うシステムです。そのため、開発においては単に機能を満たすだけではなく、パフォーマンスやスケーラビリティ、可用性についても高いレベルが求められます。もともと私は、主にホームユースを想定したWebアプリケーションを中心にオープンソースでソフトウェア開発をしていました。しかし、2006年におくじさんと会ってお話をしたときに、ERP5がそれらの技術的課題にいかに取り組み、いかに実現しているかをいろいろ聞いて、その奥深さに強く引かれました。

 Nexediには、日々の研究開発を通じてERP5をより良い製品にするベンダとしての役割と、ERP5をクライアントのビジネスに合わせて実装するシステムインテグレータ(SIer)としての役割の両方があります。システムインテグレーション(SI)の業務をすることによって、さまざまなビジネスにおけるクライアントのニーズを知っていますし、一方でベンダとして自社製品について深く知り尽くしています。

 オープンソースであることは、ERP5の大きな特徴の1つですが、オープンソースであるかどうかに関係なく、純粋に最良のソリューションだと判断されてクライアントに採用されていることはエンジニア冥利(みょうり)に尽きます。

 クライアント向けのプロジェクトの中に技術的な課題を見つけ、その課題を解決することで製品そのものの質が向上します。製品の質が向上すれば、そこからまた新しいビジネスの可能性が生まれてきます。そんなベンダとSIerとのいいとこ取りが、私の日々の仕事です。

 そんな仕事をしていく中で、ベンダとしても、SIerとしても、高い技術力がないと本当にいいものは決して作れないということを強く実感しています。技術力が低い会社には逆立ちしてもできないことを私たちはやっている、そう思える仕事をしていることは大きな誇りです。


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