就職を考えるに当たって、郡さんはIT業界を中心に業界研究を始めた。アルバイトでJavaによるソフトウェア開発に触れたことが、IT業界で仕事をしたいと考える契機になったのだ。
「データサイエンスの研究では、データをまとめる前に『眺める』という作業があります。でも、大規模データの場合、人間の目ではなかなか見切れませんし、目的の解析までたどり着くのに時間がかかります。そのため、中身を見ないで解析に入ったり、解析結果を導き出すプロセスが作る人ごとのオリジナルになってしまうことが課題でした。プログラムを組むことによって、一次データから加工までの流れが誰にでも確認でき、解析自体の信頼性が確保できるというのは、すごいなあと思いましたね」
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まずはIT業界の企業について知ろうと、郡さんはIT業界の合同セミナーやフォーラムなどで10社ほどの話を聞いた。その中の1社だったTISのことは、IT系のメディアで記事を読んで、知っていたという。
データサイエンスの研究をしていたのなら、そのまま研究職に進むという道もあったのではないか、と問い掛けると、郡さんは「向かないと思っていたんです」と答える。
「どちらかというと、人と話をしたり、集団で仕事をするのが好き。ずっと1人で黙々と作業をするのは、長く続くとつらいだろうなと思いました」
1人で考え抜いて出すアウトプットと、複数人で議論を重ねた上で出すアウトプットでは、パフォーマンスに大きな差が出るはず、とも郡さんは語る。
選考プロセスは書類選考、Web適性試験、2回の面接という順番で進んだ。面接における郡さんのコンセプトは「取り繕わず、自分をさらけ出す。大学での経験や考えたことをすべて話し、自分を理解してもらう」だった。普通だったら隠すようなマイナスのことも話したという。
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「開発だけでなく、要件定義や設計に 興味がある」と語る郡さん |
「例えば、ある資格を取ろうとして、途中でやめたという話をしました。勉強していて、自分の思っていた内容と違うな、と感じたので……」
人事担当者も、この「正直に自分を知ってもらおうとする姿勢」に好感を持ったのだという。加えて、アルバイトを通じて開発だけではなく、要件定義や設計も経験していること、単純に開発だけではなく設計を面白いと感じたという点を評価。SIerの仕事に適性があると考え、2010年5月末に内定を出した。
“内定ブルー”には陥らなかったのだろうか。郡さんはほとんど悩まなかったと語る。
「実際の業務は、入社してみないと本当に理解するのは難しいと思います。入る前に思い悩むよりも、自分が選んだ会社に入ってどれだけ頑張れるか、モチベーションを高く維持できるか、どんな仕事が割り当てられても高いパフォーマンスが出せるよう自分自身を管理できるか、の方が重要ではないでしょうか」
入社したらどんな仕事がしたいか、という質問に対して、郡さんは「上流のシステム設計に興味がある」と答える。顧客の抱える問題は何か、本当に必要なのはどんなシステムなのかを一緒になって考える仕事がしたいそうだ。
システム開発に関しては、スペシャリストよりも、ゼネラリストを目指したいという。要件定義からテストまで、どの工程も満遍なく経験し、それぞれの内容を理解して、プロジェクト全体を眺められるようなエンジニアになりたい、というのが、現在の郡さんの目指す方向性だ。
年齢についても考えている。
「学部卒の新入社員は23歳。一方わたしは大学院まで行っていますし、途中で留年もしていますから、26歳からの社会人スタートです。この3年の差をいかに埋めるかは意識しています。同じスピードで走っていたら、差は一生、縮まりません」
入社してしばらくは、利益を生むことができず、勉強するだけの社員でしかない。早く利益貢献できるようになるのは当然として、いかに学部卒の同期との「3年の差」を埋めるかを考えなければならない、と郡さんは感じているという。「単純に頑張る、というだけでは駄目でしょうね。計画を立ててスキルを身に付け、自分を高めていきたい」と意気込みを語る。
最後に、ITエンジニアを目指して、これから就職活動を始める「後輩」へのアドバイスをもらった。
「就職活動では、あまり世の中に出回っている情報には頼りませんでした。セミナーで直接話を聞いたり、アルバイトの現場でリアルな話を聞いたり、というのが一番参考になったと思います。あとは、Web適性試験が設けられている場合が多いと思うので、対策をしておくと慌てなくて済むのではないでしょうか。わたしは対策をしていなかったので、苦労しました(笑)」
実際に仕事を始める来年4月までに基本情報技術者試験の資格を取ろうと、勉強し始めているという郡さん。入社する前から、郡さんはすでに走り始めているようだ。
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