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2011年度新卒採用を振り返る
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第1回 どう生き延びた? “激戦”といわれた2011年度新卒採用


金武明日香(@IT自分戦略研究所)
2010/7/12


「非常に厳しい」といわれた2011年卒の新卒採用だが、実際はどうだったのか。採用活動がひと段落したいま、2011年度卒新卒採用における企業の動きと学生の動きを振り返る。リクナビ、マイナビの責任者に話を聞いた。

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 「全体的に採用数は抑制」「厳選採用傾向が続く」――2011年度卒の新卒採用は、2010年度卒以上に厳しいと予測されていた(参考:「2011年新卒採用「不況でも新卒採る、ただし学生を厳選」)。

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 実際のところはどうだったのか。リクルート リクナビ編集長の岡崎仁美氏、毎日コミュニケーションズ 就職情報事業本部 HRリサーチセンター センター長の栗田卓也氏に、2011年度卒新卒採用における企業と学生の動きについて、詳しい話を聞いた。

特集:2011年度 新卒採用を振り返る インデックス


求人倍率は下がった。でも、内定率はそれほど変わらず

 「思っていたより、復調の兆しが見えた」――岡崎氏と栗田氏は、2011年度卒の新卒採用についてこう振り返る。

 2009年末までは、新卒採用を行う企業数が前年の実績を下回っていた。ところが、2010年に入ってから、採用を見合わせていた企業が採用方向に舵を切り、前年を上回るペースで採用を始める動きを見せたのだという。

 まず、求人倍率について見ていこう。ワークス研究所が実施した「ワークス大卒求人倍率調査」によると、2011年度卒の求人倍率は前年の1.62倍から1.28倍に低下した。2009年度卒の倍率は2.14倍、2010年度卒は1.62倍と、2年連続で2割ずつ求人倍率が減っている(表1)。この数値を見ると、「やはり2011年度卒の就職活動は非常に厳しかった」ように見える。

年度卒 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
求人倍率 0.99 1.09 1.33 1.30 1.35 1.37 1.60 1.89 2.14 2.14 1.62 1.28
表1:大卒求人倍率
求人倍率=求人総数÷民間企業就職希望者数
(ワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査 2011年卒」より)
岡崎仁美氏
リクルート リクナビ編集長
岡崎仁美氏

 だが、岡崎氏は「この数値を見て右往左往したり『自分たちは損をした』と思わないでほしい」と語る。確かに、ここ数年の経過を見れば、求人倍率は下がっている。しかし、2000年代を俯瞰(ふかん)すると、実は1.28という数値はそれほど悪くないことが分かる。むしろ、飛び抜けて高い2008年度卒、2009年度卒の方が異常値だといえよう。

 従業員規模別に見ると、1000人以上の従業員を抱える大手企業の倍率は、ここ10年ほど0.5倍前後を推移している(図1)。つまり、学生に人気が有る大手企業は、10年前からずっと「狭き門」で、求人を控えたのは従業員規模が1000人以下の中小企業であることが分かる。


求人倍率
図1:求人倍率の推移
(ワークス研究所「新卒求人倍率調査 2011年卒」より)

 求人倍率は2010年卒、2011年卒と2年連続で2割減だが、全体の内定率は求人倍率ほど変動していない(図2)。リクルートの調べによると、6月初頭時点での内定取得率は46.8%。文理別では、文系が47.1%、理系が46.0%だ。これらの数値は、昨年同時期における2010年度卒の内定状況とほとんど変化がない。

内定率と求人倍率の推移
図2:内々定率と求人倍率の推移
内定率:文部科学省・厚生労働省「大学など卒業(予定者)の就職(内定)状況調査」(10月1日時点)
求人倍率:ワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査 2011年卒」

 「新卒採用数は減ったものの、一定数の募集はありました。また、大手企業を筆頭として復調の兆しが見えているため、2012年度卒は順当にいけばさらに回復するでしょう」と、岡崎氏は分析する。

企業は「短期集中」の採用活動。秋募集は減少?


栗田卓也氏
毎日コミュニケーションズ
就職情報事業本部
HRリサーチセンター
センター長 栗田卓也氏

 次に、企業がどのような採用活動を行ったかについて見ていこう。2011年度卒の新卒採用において、全体的に企業は早期化を控える傾向を見せた。また、今年度は採用活動を短期で終わらせる企業が増えたという。

 毎日コミュニケーションズ「2011年度卒マイコミ新卒採用予定調査」によると、企業が内定を出すピークは4〜5月。6月までに採用活動を終了させる予定の企業は、2009年度卒が43.8%、2010年度卒が51.1%、2011年度卒が61.2%と、年々増加する傾向にある。

 また、今年度も昨年度と同様、「量より質」の厳選採用方針を取る企業が多かったという。「企業は総じて質重視のため、無理して量を採用する必要性をあまり感じていません。ある程度の採用予定数に達したら、採用活動をやめる企業は多い」(栗田氏)。結果として、「秋採用などの後半採用数は例年より減るだろう」と、栗田氏は予測する。

IT業界は、他業界に比べて積極的に内定を出した

 去年、栗田氏は「今年は他業界が採用を控える分、IT業界は堅実に人を採用するだろう」という予測していたが、これはおおむね当たっていたようだ。

学生が内定を得た業界
1 繊維・化学・薬品
2 ソフトウェア・情報処理
3 クレジット・信販・リース・その他金融
4 食品・農林・水産
5 電子・電気機器
表2:学生が内定を得た業界
(「11年卒マイコミ学生就職モニター調査:4-5月の活動状況」より)

 IT業界は、他業界に比べて多くの内定を出した。業界別に内定をもらっている数を見てみると「IT業界」は「薬品」業界についで2位と、かなり積極的な採用意欲を見せている(表2)。IT業界の新卒採用は「比較的ゆっくりとした採用スケジュール」「3〜4月に集中して内定を出す」という特徴があったという。

内定をもらえる学生、もらえない学生

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