第7回 溝口浩二――コードを愛する「動画中継職人」
岑康貴
2008/10/7
エンジニアにとって仲間とはどういう存在なのだろうか。極端なことをいえば、自分1人で作業が完結できてしまうエンジニアにとって、仲間とのコミュニケーションにはどんな意味があるのか。エンジニア同士のネットワークを通じて、エンジニアにとっての仲間とは何かを探る。 |
コミュニティで活躍するエンジニアたちの輪。7人目の今回は、「otsune」こと大常昌文氏(参考:大常昌文――「懇親会でしか出ない話」こそ面白い)から紹介された、ドワンゴ 溝口浩二氏だ。
「coji」の名で活動する溝口氏。技術系カンファレンスなどの会場、その最前列にて彼を見掛けたことはないだろうか。テクニカルトークを動画撮影し、「Ustream.tv」を利用して生中継しつつ、「ニコニコ動画」にもアップロードする「動画中継職人」、それが溝口氏だ。
このような活動を始めたきっかけは何なのか。また、溝口氏はなぜ、テクニカルトークの「動画中継」をし続けているのだろうか。
■コードが分からないマネージャにはなりたくない
ドワンゴ 研究開発本部 総合情報システム開発部 部長 溝口浩二氏 |
「コードが分からなくなるのはまずい、と感じました」
溝口氏は現在ドワンゴの研究開発本部に籍を置いている。マネージャという立場だ。ニワンゴの取締役も兼務している。
もともとはプログラマだった。以前の会社は下請け多層構造の末端企業で、たまたま常駐先が、設立初期のドワンゴだった。そのまま、1998年にドワンゴに転職。プログラマとして活躍していたものの、携帯電話向けコンテンツ事業に参入する段階で、「ケータイ向けのサーバを立てられる人がいなかった」ため、溝口氏が担当することになった。こうしてインフラ寄りの業務にシフトする。2000年ごろのことだ。
やがて、マネージャとしての仕事がメインとなる。「セールスエンジニアのようなこともやった」という。さらに、2005年には京都に転勤となった(注)。
(注)2008年10月現在、京都にドワンゴの事業拠点はない。 |
溝口氏には、ある焦りがあったという。それが「コードの最前線から離れていること」だった。
「コードが分からないとまずい。それはマネージャとしてもそうだし、個人としてもそうです。最近のコードの流れについていけないマネージャはまずいし、もともとプログラミングが好きだったこともあって、コードの最前線に触れたいと思うようになりました」
仕事としては、プログラミングからは離れていた。だが、ブログ全盛時代となり、多くのエンジニアが自らのブログでコードを「さらしている」のを見て、うらやましくなった。
■勉強会に参加し始めた京都時代
当時の京都で初めて参加した勉強会が、京都女子大学で開催された「Ruby勉強会」だった。「かずひこ」こと塩崎量彦氏などがいたという(参考:アイデンティティはオープンソースプログラマ)。
何度か参加した後、2007年4月に東京へ戻ってきた。そのまま、Rubyつながりで「Rails勉強会」などに顔を出すようになった。
しばらくプログラミングから離れていたが、こうした勉強会への参加を通じて、再びプログラミングの最前線に触れられるようになった。その結果、気付いたことがあった。
「技術の浅い部分、表層は時代とともに変わっていっていますが、深い部分は変わっていないんだな、と思いました。Web系の表層部分をやっていらっしゃる方々も派手で面白いのですが、深い部分をやっている方も面白いんですよね」
だが、自分でスピーカー側に回ることは「ほとんどない」という。自社のセミナーなどで話す程度だ。営業支援の経験があるので話すことは苦ではないが、スピーカーとして積極的に活動はしていない。
2008年9月13日に行われたイベント「エンジニアの未来サミット」でも、溝口氏はUstream.tvによる生中継を行った。Ustream.tvのチャットや、会場からのメールでの投稿が「ニコニコ動画」のようにスクリーン上にコメントとして流れる仕掛けを取り入れ、会場を沸かせた(参考:「自分の人生は自分で決めること」―エンジニアの未来サミット)
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■「勉強会は楽しいから行く」
溝口氏にとって、勉強会やイベントはどのようなものなのだろうか。当初の目的どおり、技術のトレンドについていくためのものなのか。溝口氏は否定する。
「楽しいから行く。映画を見るより楽しい。自分の好きな『技術ネタ』で盛り上がれる人ばかりが集まっている、楽しい場」
カメラ好きがカメラを持って集まるのと同じだ、という。この感覚は、「趣味だから」といい切った、ひろせまさあき氏の考えに近い(参考:ひろせまさあき――勉強会は「取りあえず行っちゃえ」)。
趣味のようにとらえている人の方がパフォーマンスが高い、と溝口氏は語る。かける時間が段違いだからだ。
コミュニティで出会うエンジニア仲間と同僚は、さながら「趣味の仲間と仕事の仲間という違い」だろう、と溝口氏は語る。
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