第7回 溝口浩二――コードを愛する「動画中継職人」
岑康貴
2008/10/7
■動画中継職人――ニコニコ動画とTechTalk.jp
2008年1月ごろから、溝口氏は技術系イベントでのテクニカルトークを動画撮影するようになる。
Ustream.tvで生中継し、ニコニコ動画にアップロードしてアーカイブ化する。溝口氏はニコニコ動画の開発メンバーである戀塚(こいづか)昭彦氏の担当マネージャであり、ニコニコ動画の運営会社であるニワンゴの取締役も兼務しているため、ニコニコ動画を使ってみようと考えたという。
さらに2008年6月、溝口氏は「TechTalk.jp」というWebサイトを立ち上げる。「日本の技術系プレゼンテーション参加者のためのハブサイト」であるこのWebサイトは、技術系カンファレンスや勉強会などでのテクニカルトークの動画やイベント告知、動画撮影やアップロードのノウハウなどがまとめられている。
「勉強会など、技術系のイベントは増えていたのですが、どんなものがあるか分からなかった。それに、動画で見たいなと思いまして」
とはいえ、どのような形でやればよいか、アイデアがなかったという。しかしちょうどこのころ、「YAPC::Asia 2008」をきっかけに、「perl-users.jp」をはじめ、さまざまな「技術系ハブサイト」の立ち上げブームが起きた。その流れに乗って、「ノリで作ってみた」のだという。プログラミング用のブログを持っていたのだが、動画で埋まっていってしまったので、すみ分けを行いたい、という意図もあった。
TechTalk.jpは今後もマイペースで更新を続けていくという。「全国で動画撮影者が少しずつ増えてきているので、そういう人たちにもこのWebサイトを使ってもらえたら」と溝口氏は語る。
■会場から生中継
動画を撮影し、TechTalk.jpを運営する理由は何だろうか。
「基本的には、自分のため。利己的です。動画を撮るのが楽しくなってきてしまったんです」
撮影は主にMacBookのWebカメラで行う。画面のキャプチャと合成し、Ustream.tvでライブ配信している。Ustream.tvは配信しながら録画できるので、「一粒で二度おいしい」のだという。
専用の高額な機材を使用するわけではない。かなりお手軽な印象だ。だが、「突き詰めると、結構面倒なところもある」と溝口氏。
「面倒くさいのは、動画を撮って、帰ってきて、アップロードするところ」
勉強会の終了後は、参加者がブログに感想のエントリを書くことが多い。このときに、動画を合わせて張ってほしい。つまり、それまでに間に合わせなければならないのだ。
そのため、最近は撮っている横で、別のマシンで並行してアップロードを行う。つまり「実は話を聞いていない」のだと溝口氏は笑う。
「後から動画で見ることになる。話をリアルタイムで聞いていないので、懇親会で盛り上がることができない。それが寂しいですね」
しかし、それでも「楽しい」と話す。勉強会の場には、小さいものなら30人くらいしかいない。だが生中継をしていると、その向こう側に100人、200人と見ている人がいて、チャットで話している。溝口氏は「実は会場にいながら、気持ちとしてはそちら側にいる」のだ。そうしてその場の参加者以上の人数で話せるのが楽しい、と語る。また、後に動画に対してコメントがつくのも楽しいポイントだという。
■「運営スタッフと一緒に」が楽しい
あまりスピーカーとして活動するつもりがない、という溝口氏のスタンスは、こうして「動画中継職人」となったことでより鮮明になった。溝口氏は、「どちらかというと、運営と一緒に活動しているイメージ」だと説明した。そちらの方が面白いのだという。
「今年のLightweight Language系はすべて制覇しています。YAPC::Asia、Ruby会議、PHPカンファレンス、Lightweight Language Futureの4つですね。Pythonはまだないので、それがそろえば完ぺきなのですが」
もはや「撮影スタッフ」と化している溝口氏は、運営している人たちと仲良くなれるのが楽しいと語る。一緒にイベントを運営する楽しみを享受しているという。「Tシャツももらえるし」(溝口氏)
さらに、こうして半ば運営スタッフとなると、「一番いい席に座れる」のも隠れたメリットだという。撮影スタッフなのだから当然といえば当然だ。
もし技術系の勉強会やカンファレンスに行くことがあったら、最前列をのぞいてみよう。もしかすると、溝口氏が「動画中継職人」として陣取っているかもしれない。
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