第9回 新藤愛大――「Spark projectは生活の一部」
岑康貴
2008/12/17
エンジニアにとって仲間とはどういう存在なのだろうか。極端なことをいえば、自分1人で作業が完結できてしまうエンジニアにとって、仲間とのコミュニケーションにはどんな意味があるのか。エンジニア同士のネットワークを通じて、エンジニアにとっての仲間とは何かを探る。 |
2008年3月、サイボウズ・ラボの竹迫良範氏からスタートした「エンジニアの輪」。竹迫氏はこのとき、次のようなことを話していた。
「すでにその傾向はありますが、小規模コミュニティが同時多発的にいろんな場所で形成されるだろうと思います。10〜20人くらいで集まって、ニッチでとがった話題について、共有するという動きが起こるでしょう。その1つとして、Shibuya系のコミュニティがあるような気がします。 Shibuya.pmやShibuya.jsは大きくなっていますが、例えば、Shibuya.abcというActionScriptのバイトコードだけについて語り合う場のように、非常に限られた話題について語る場ができると思います」
竹迫氏の言葉どおりとなったのはいうまでもない。2008年、多くのニッチなコミュニティや勉強会が立ち上がり、数多くのブログや動画共有サイト、「IT勉強会カレンダー」がそれらを可視化した。「コミュニティ活動支援室」では、こうした動きをさまざまな視点から紹介してきた。
2008年最後のエンジニアの輪は、竹迫氏が例に出した「Shibuya.abc」の中心人物に迫る。前回の末永匡(たすく)氏(参考:末永匡――Sennaとニコニコ大百科を作る偽プログラマ)からの紹介。日本のFlash/ActionScript界をけん引する若きエンジニア、新藤愛大(よしひろ)氏だ。
■Flash好きが、いつしか仕事に
「中学生くらいから、Flashに目覚めました」
新藤氏は現在20歳。すでにフリーランスで仕事をしており、@ITでもActionScriptライブラリに関する記事を執筆している。
仕事になったのは2007年から、と新藤氏は語る。中学生のころにパソコンを始めたが、それ以前から「ものを作ったり、絵を描いたりするのが好きだった」という。そのため、「パソコンで作るなら、アプリケーションよりゲーム」と考えた。Web上ではFlashゲーム全盛期。2000年のことである。
若き日の新藤氏はFlash制作にのめり込んだ。Macromedia FLASHのアカデミック版を購入し、Flashを作り続けた。2007年、ある制作会社から企業サイトのFlash制作を頼まれた。気付いたら仕事になっていた。
■閉鎖的なFlashをオープンに――Spark project
新藤愛大氏 |
その一方で、新藤氏はあるサイトを立ち上げた。それが「Spark project」である。
「日本において、Flashはライブラリの公開という文化がなかった。オープンソース文化が根付いていなかったんです。ライブラリを共有してもっとFlashを面白くしたいと思い、まずは自分で公開しようと始めたのがSpark projectです」
TracやSubversionを用意し、2007年初頭からはコミッタの募集も始めた。そんなに集まらないだろうな、と始める前は考えていた。ところが、募集を始めた翌日に反応があった。いままでなかったのが不思議に思えるほどコミッタは集まり、ライブラリは充実していった。
現在のコミッタは、「フリーランスと制作会社勤めの人が半々くらい」だという。きっと彼らは皆、Spark projectのようなオープンソースコミュニティを待ち望んでいたのだろう。
しかし新藤氏はそれだけでは飽き足らなかった。勉強会を開催しよう――そう考えた。
■ニッチなテーマの勉強会でも、人は集まる
Flashに関する勉強会やイベントは、決してなかったわけではない。だが、それらは概して「アニメーション寄り」だったり「Flex寄り」だったりした。Scriptをメインに据えた勉強会はまだほとんどなかったのだ。そこで2008年7月、新藤氏は「Spark project 勉強会」をスタートさせた。
Spark project 勉強会は現在、毎月開催している。毎回盛況で、募集開始からわずかな時間で定員に達してしまう。参加者は20代後半が多い。新藤氏にとって彼らは「お兄さん、お姉さんのような存在」だという。
また、ActionScriptのバイトコードに特化した勉強会「Shibuya.abc」も開催した。こちらは単発で、今後は不定期開催を予定している。
「竹迫さんや、はてなの舘野(祐一)さんと話していて、『やろうやろう』と盛り上がってしまったんです。バイトコードに興味のある人なんて何人もいるわけがないと思いきや、意外と人が集まってしまいました」
自身のサイト「BeInteractive!」で告知した際、新藤氏はShibuya.abcを「狂気の勉強会」と呼んでいる。「バイナリエディタを眺めてニヤニヤする」のが目的という、まさに狂気の沙汰(さた)の勉強会。だが、どれほどニッチなテーマでも、好きな人はいるところにはいるものである。
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