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国際競争時代に突入するITエンジニアに生き残り策はあるか?
日本人ITエンジニアはいなくなる?

第31回 金融危機をチャンスに変える、日本企業の人材戦略

小平達也
2008/11/11

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日本企業への再評価の機運高まる

 前ページでは企業の動きを解説したが、アジアの新興国を中心に、人材意識にも影響が出つつある。かつて中国では、人々の就職先が国営企業から民営企業中心に移る中で、いわゆる外資金融的な「短期間・成果主義」が若者を中心に受け入れられてきた経緯がある。

 インドでもIT輸出の95%がアメリカの金融機関向けであるということからITサービス産業に従事する高学歴者の中には同様の志向があった。これらがグローバルスタンダードとして語られ「だから、人気のない日本企業は」と常々いわれてきたわけだが、最近中国やインドの若者と話をすると「米系大手金融機関に入社した大学の同級生はいま大変」「短期間・成果主義は魅力的だがリスクが大きいことが分かった」などというコメントを聞くようになった。中長期的に雇用が安定している日本企業への再評価の機運が高まっている。

 先にも触れた「グローバルで徹底的にやり抜く企業」にとって、この流れは国内外問わず、優秀な人材を自社に取り込むチャンスであり、これまで以上に丁寧に自社のHRブランディングを考える時期であろう。その際、いわゆる大企業と中堅企業ではその方法論が異なるので注意が必要だ。

●グローバルHRブランディング

大企業(特に消費者向け製品に関連している企業)の場合:

 トヨタ、パナソニック、ソニーのように日本企業というベースがありながらも、すでにある程度世界で認知されている企業は、独自の存在感があり、ブランディングができている場合が多い。あえて「日本企業」という主語は使わずに「当社は」という主語にして「自社の事業モデル・雇用形態」などを正々堂々とPRをするのがよい。

中堅企業の場合:

 中堅企業の場合は、上記大企業のようにすでに国際的な認知をされている場合は少なく、また自社の製品自体が消費者にあまり認知されていないとすると、自社名だけで採用力を高めることは難しい。むしろ、主語を「日本企業である当社は」として世界で認知されている日本企業へのイメージを後ろ盾にして採用PRをした方がよい。

外部環境の変化、組織としての対応、そして自分戦略

 今回述べてきた金融危機という劇的な環境変化の中、皆さんの企業ではどのような対応を考えているだろうか。これをグローバル展開の千載一遇の機会ととらえ積極果敢にアクセルを踏むのだろうか、それとも長い冬への備えとして身仕度を粛々と進めているのだろうか。今回は外部環境的な話であったが、ITエンジニア個人としてこの外部環境と自社の組織対応の中で、どのような方向性で成長をしていくかを考える参考にしていただければ幸いである。

 

今回のインデックス
  危機に直面する世界経済と日本企業の採用動向
 この危機日本企業にとってチャンスととらえるHR戦略

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筆者プロフィール
小平達也(こだいらたつや)
ジェイエーエス 代表取締役社長
◆東京外国語大学 多言語・多文化教育研究センター コーディネーター養成プログラムアドバイザー
◆早稲田大学商学部学術院総合研究所 WBS研究センター 日中ビジネス推進フォーラム特別講師
◆ジェトロ BJTビジネス日本語能力テスト外部化検討委員会 委員

大手人材サービス会社にて、中国・インド・ベトナムなどの外国人社員の採用と活用を支援する「グローバル採用支援プログラム」の開発に携わる。中国事業部、中国法人、海外事業部を立ち上げ事業部長および董事(取締役)を務めた後、現職。ジェイエーエスではグローバル採用および職場への受け入れ活用に特化したコンサルティングサービスを行っており、外国人社員の活用・定着に関する豊富な経験に基づいた独自のメソッドは産業界から注目を集めている。

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