国際競争時代に突入するITエンジニアに生き残り策はあるか?
日本人ITエンジニアはいなくなる?
第34回 テクノロジの世界展開に必要なのは、理念と伝える力
小平達也
2009/4/23
■理念を臆せず伝える力は、テクノロジのグローバル展開でも必要
本連載第33回でも述べたが、ユニ・チャームのような内需型産業のグローバル展開においては一般に「商品企画・研究開発」「生産」「販売」「アフターサービス」の一連のビジネスフローを海外で完結させる必要があり、海外で完結する比率が高くなればなるほど経営上から日々の業務に至るまでの意思決定の局面において判断基準となる「理念や考え方・行動規範」の浸透が重要になってくる。本連載第27回「松下電器産業の社名変更に見るグローバル戦略」でも触れたが、一般に日本企業は社風や価値観のPRが弱い、だがグローバル採用では、日本企業の人事担当者が従来の製品やサービスにおける自社の強み・認知度を十分活用する一方で、経営者の考えや社員の顔、自社が大切にしている価値観などを臆せずに前面に出していくことが求められると紹介した。これは採用だけでなく活用やシステム導入・運用についても同じことがいえる。
図2 ミッションなど「考え方」が必要な理由
理念が伝わっていない場合、現地のエンジニアにテクノロジで何ができるかを伝えたとしても「いわれたことしかやらない」「行動するまでに時間がかかる」「顧客の問い合わせを受けてもきちんとした説明ができない」「自分から仕事を取りに来ない」など、いわゆる指示待ち人間となってしまい、その人材の持っている能力を十分に引き出しているとはいえない状況に陥ってしまうのだ(図2)。推進する側も、受入れる側も「エンジニアだから技術面からシステム導入をすればそれでよい」ということでなく、その背景にある「価値観」「ミッション」「ウェイ」「イズム」といったものを言語化し(今回の事例では日本語・英語・中国語の3カ国語で言語化している)、国内・海外双方で理解・共有し、実施に移すことが大切だ。
今回はユニ・チャームのGmail導入事例を基にテクノロジのグローバル展開に必要な考え方を紹介したが、これらを担うのはほかでもない、職場で働く1人1人であり、各人がどこまで実際に理解・実行できているかが非常に大切になってくる。
今回のインデックス |
ユニ・チャーム、Gmail導入の背景 |
テクノロジのグローバル展開で大切なこと |
筆者プロフィール |
小平達也(こだいらたつや) ◆ジェイエーエス 代表取締役社長 ◆東京外国語大学 多言語・多文化教育研究センター コーディネーター養成プログラムアドバイザー ◆早稲田大学商学部学術院総合研究所 WBS研究センター 日中ビジネス推進フォーラム特別講師 ◆ジェトロ BJTビジネス日本語能力テスト外部化検討委員会 委員 大手人材サービス会社にて、中国・インド・ベトナムなどの外国人社員の採用と活用を支援する「グローバル採用支援プログラム」の開発に携わる。中国事業部、中国法人、海外事業部を立ち上げ事業部長および董事(取締役)を務めた後、現職。ジェイエーエスではグローバル採用および職場への受け入れ活用に特化したコンサルティングサービスを行っており、外国人社員の活用・定着に関する豊富な経験に基づいた独自のメソッドは産業界から注目を集めている。 現在、ブログ「グローバルに特化した組織・人事コンサルティング ジェイエーエス 小平達也」執筆中。 |
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