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新人しんじ君、IT業界へ

新人しんじ君、IT業界へ

最終回 これまでの失敗と学び。明日からも頑張ります!

ナレッジエックス 中越智哉
2007/10/15

自分の昔のコードを見ると、直したくなるけど

 会社に戻ったしんじ君は、今日の打ち合わせの議事録の作成と、打ち合わせ内容を反映するために資料の修正を行いました。修正をしていたところ、前回の案件で作成したモジュールの内容を調べる必要が出てきました。今回の案件には、前回の案件と似ている機能が一部含まれていたからです。

しんじ君 う〜ん、やっぱり前に書いたコードを見ると、どうしても直したくなるなぁ……。でも、開発の最中に作り直しをすることにはそれなりのリスクがあるから、慎重にしないといけないんだ。

 過去のコードを眺めていると、しんじ君はいつもいろいろなことを思い出します。コードの作り直しを試みて、予想外の機能にまで影響してしまったことや、修正途中のコードがあるのを報告せずに怒られたこと、難しいコードの修正をすべて自分でやろうとして納期に間に合わなくなりそうになったことなどです。

エピソード4 会社への報告は、こんなに重要
 → 第4回「すぐ直すから、報告しなくてもいいよね?

エピソード6 プログラムを「作り直したい」と思ったとき
 → 第6回「この汚いコード、明日までに書き直しちゃえ!

エピソード8 納期はなぜそんなにも重要なのか
 → 第8回「この納期、1週間遅らせてくれないかなあ?

仕事では、「これで十分」ということはないんだ

 そうこうしているうちに資料の作成も終わり、しんじ君はほっと一息ついていました。そこへ、面田さんが通りかかりました。

面田さん やあ、しんじ君。調子はどうだい?
しんじ君 はい、おかげさまで今日は順調です。
面田さん そうか、それはよかった。最近は、しんじ君が相談にくる回数も減ったから、あまり話す機会がなかったような気がするね。
しんじ君 そういえば、そうかもしれませんね。
面田さん それだけ、しんじ君が一人前の社会人になってきたっていうことかな。
しんじ君 は、はい! ありがとうございます。

 しんじ君は出来上がった資料を、麻根主任にメールで提出しました。ほどなくして、しんじ君は麻根主任に呼ばれました。

しんじ君 麻根主任、お呼びでしょうか。
麻根主任 ああ、さっき出してもらった資料なんだけど。
しんじ君 何か、まずかったでしょうか……。
麻根主任 いや、よくできてるよ。別に直すところもないから、このまま遠藤さんに送ってかまわないよ。
しんじ君 そうですか……、ありがとうございます。
麻根主任 私に呼ばれたから、何か指摘されると思ったかな?
しんじ君 ……はい。
麻根主任 ハハハ、そういえば、しんじ君が遠藤さんに面白いメールを送って、大騒ぎになったこともあったっけ。
しんじ君 あ、はい……、そんなこともありましたね。ほんと、何も知らなくて。
麻根主任 まぁ、それもいい経験だよ。実はさ、しんじ君を呼んだのはその資料のことより、次の作業の話をしたかったからなんだよ。明日からは……。

エピソード3 ビジネスメールの正しい書き方
 → 第3回「お客さまへのメール、こんな感じじゃダメですか?

 そんなわけで、今日のしんじ君は順調に仕事を進められたようです。帰りがけに、上野部長もしんじ君に声を掛けてくれました。

上野部長 しんじ君、最近は調子はどうだね。
しんじ君 はい、おかげさまで、なんとか。
上野部長 うむ、それは結構。この半年で、君もずいぶん頼もしくなったね。
しんじ君 あ、ありがとうございます。
上野部長 だが、このくらいで満足してはいかんよ。君が面田君や鮫島君のようになるには、もっといろんなことを経験する必要がある。
しんじ君 はい。
上野部長 仕事においてはこれで十分、これで終わりということはほとんどないんだよ。常に、より良いものを求めていく姿勢が大事なのだよ。
しんじ君 はい、これからも頑張ります!

 この半年で、上野部長のいうとおり、ずいぶん頼もしくなったしんじ君。しかしITエンジニアとしては、まだまだ歩き始めたばかりです。これからもいろいろな失敗、経験をしながら、社会人として、ITエンジニアとして成長していくことでしょう。

 「社会人は日々、何かを見つけて成長していかないといけないってことなんだな。う〜ん、なんだかますますやる気が出てきたなぁ。よし、明日からも頑張るぞ!」

 しんじ君は意気揚々、駅に向かう道を歩いていくのでした。その視線の先にはぼんやりとでも、自分の将来の姿が浮かんでいるのかもしれませんね。



しんじ君のお話はこれでひとまず終了です。ですが近いうちに再登場の予定もありますので、お楽しみに!

今回のインデックス
これまでの失敗と学び。明日からも頑張ります! (入社直後の思い出)
これまでの失敗と学び。明日からも頑張ります! (納期は「絶対」)
これまでの失敗と学び。明日からも頑張ります! (仕事に「これで十分」はない)

筆者プロフィール
中越智哉●北海道出身。北海道大学大学院電子情報工学専攻修士課程修了。在学中はJavaとLinuxに熱中。卒業後、Javaの仕事にあこがれ、1999年にテンアートニに入社。Java の受託開発案件や教育事業、コンサルティングなどを幅広く担当した後、2006年2月に同社を退社。同年3月にナレッジエックスを設立。 JavaをはじめとするIT開発技術の教育に奔走する。趣味は自転車と草野球、そして毎日欠かさない耳かき。

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