第8回 この納期、1週間遅らせてくれないかなあ?
ナレッジエックス 中越智哉
2007/9/7
この春に大学を卒業し、ある中堅SI企業に就職した中山しんじ君。初めての経験にとまどいつつ、周囲のサポートを受けながら、社会人としてもITエンジニアとしても成長していきます。皆さんもしんじ君と一緒に歩んでみませんか。 |
猛暑の8月も過ぎ、ほんの少しずつですが秋に近づき始めた9月。システム開発の現場にとっては忙しい時期です。
9月は多くの日本企業の上期末に当たります。下期の始まる10月から新しいシステムを稼働させようと考える顧客が多いため、9月末が納期という案件が多くなりやすいのです。しんじ君の勤めるアットイットシステム社もその例に漏れず、9月末が納期の案件をいくつも抱えていました。
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■納期まであと1週間! 頑張れ、しんじ君
しんじ君も、9月中旬が納期のプロジェクトで奮闘していました。この案件では新システムへの移行準備の期間を確保するため、アプリケーション自体の納期は月末よりも早く設定されていたのです。
しんじ君 | 夏休みが終わったと思ったら、とたんに忙しくなったなぁ……。ほかのプロジェクトの人たちも、ほとんど毎日夜遅くまで残っているみたいだし。 |
納期がいよいよ1週間後に迫った日のことです。しんじ君は麻根主任に呼ばれ、明日からの業務内容について指示を受けていました。
麻根主任 | しんじ君、いよいよ案件もラストスパートだ。明日からは最終的なシステムのテストを始めるから、しんじ君もそちらに加わってほしいんだ。 |
しんじ君 | はい、分かりました。 |
翌日から、しんじ君はテスト作業に入りました。とはいっても、しんじ君は実装も担当しているので、担当個所で不具合が発見された場合、その対処も行わなければなりません。
ですが、初日は不具合もほとんど発見されることなく、順調にテストをこなすことができました。このまま何事もなくテストの全工程が進めば、納期よりも少し早くシステムを完成させられるかもしれないとしんじ君は期待していました。
しんじ君 | いまのところは順調だな……。テスト自体の量が多いから、あと2日はかかりそうだけど、それでも納期までは3日くらい余裕があるぞ。 |
■やはりバグ発覚。しんじ君、悩む
しかし翌日になって、しんじ君の実装した個所で、いくつか不具合が発見され始めました。その個所をテストしていた鮫島さんが、しんじ君のところへやってきます。
鮫島さん | しんじ君、この機能と、こっちの機能で、いくつかバグが出てるよ。 |
しんじ君 | そうですか、すいません。現象はどんな感じでしょうか? |
鮫島さん | うん、まぁ大したことなさそうなのが2〜3あるんだけど、それとは別にちょっと気になるのがあるんだよ。 |
しんじ君 | そうなんですか……。それで、どんな不具合ですか? |
鮫島さん | ここの金額の計算結果なんだけどさ、ほとんどのケースでは合ってるんだけど、なんかたまに合わないときがあるんだよ。 |
しんじ君 | たまに、ですか。 |
鮫島さん | そう、たまに。ちょっと再現性までは追求できなかったけど、それも含めて、テストがひと回りしたら修正頼むよ。 |
しんじ君 | はい。分かりました。 |
しんじ君のプロジェクトは1回目のテストをひととおり実施した後、不具合の修正に入りました。しんじ君の担当個所以外でもいくつか実装の不具合が発見されており、各メンバーはその修正に追われています。
しんじ君も自分の担当個所の修正を行っていました。鮫島さんの指摘のとおり、大半の不具合はケアレスミスによるもので、さほど時間もかからず修正することができました。しかし、鮫島さんが心配していた最後の不具合は、かなり難解なものでした。
しんじ君 | う〜ん、この金額、どうして合うときと合わないときがあるんだろう? いつも合わないんだったら、原因を見つけるのは結構簡単だと思うんだけど……。 |
しんじ君はコードを見直したり、アプリケーションを動かしてみたりして、その現象の再現性を特定しようとしました。しかしいくらやってみても、どういう条件になると金額が狂ってしまうのか、いっこうに手掛かりがつかめません。とうとうこの日は、原因を探るための試行錯誤を繰り返すだけで終わってしまいました。
しんじ君、「その言葉」をいっちゃあオシマイ…… |
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