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2011年度新卒採用を振り返る
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第2回 「就活セミナーに出るくらいなら、勉強会に行こう」


岑康貴(@IT自分戦略研究所)
2010/7/13

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オープンであれ、というメッセージ

 修士課程1年の夏、井上さんはKLabが主催する学生向けのプログラミングコンテスト「天下一プログラマーコンテスト」に参加した。これが井上さんにとって初めての正式なインターン参加になった。

 24時間のWeb予選で、井上さんはある「秘策」を実行した。

 「周りはみんな、CやC++で挑んでいるわけです。でも僕は同じ土俵じゃとても勝てない。だから、PythonやRubyで挑んでみよう、と(笑)」

 残念ながら予選敗退となったが、後日、社員から井上さんに連絡がきた。「良かったら、KLabでアルバイトしてみない?」という誘いだった。

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 井上さんにとって、1社目の「会社体験」は、「受託開発」の厳しさを知る体験だった。たとえ汚いコードであっても、納期にきちんと間に合わせる、というのが重要だった。だからこそ井上さんは「きれいなコードが書けない」というコンプレックスを持っていた。「次は、高い技術力を持った人に学ぶ機会を作ろう」と考えていた井上さんにとって、KLabでのアルバイトは渡りに船だった。

 Webサービスのアプリケーションは、通常の業務アプリケーション以上に保守性が必要とされる。ベータバージョンでリリースし、ユーザーの声をもとに改修を繰り返すからだ。KLabでの「保守性の高い、きれいなコードを書く」という高い意識に触れた井上さんは、大いに驚き、触発されたという。

 もう1つ、KLabで学んだことは「オープンであることの重要性」だった。

 「オープンであることは良いことだ、ということを学びました。あるとき、『きれいなコードが書けないんです』と先輩に相談したんですよ。この本を読むと良いよ、とか教えてくれるのかなと思ったら、『ブログとか日報とかに、そのとき学んだこと、感じたこと、気になったことをすべて書き出して、いろんな人に見てもらうといいよ』とアドバイスされたんです。自分で書いて、それを公開して、見てもらうことの重要性は、幾度となく教えられました」

 「オープンであること」の一環として、勉強会に参加するエンジニアを見ていた井上さんは、「自分もフットワークを軽くして、どんどん勉強会に参加しよう!」と決断する。

勉強会とTwitterが就職活動の肝

 自分の名刺を作り、エンジニアの勉強会に参加するようになった井上さん。勉強会では必ず何かを質問し、懇親会にも積極的に参加した。懇親会では「学生であること」「エンジニアになりたいということ」を話し、「働くってどういうことなのか」「エンジニアってどういう存在なのか」を聞いて回ったという。

 「セミナーや採用サイトでは聞くことのできない、現場のエンジニアの『本音』が、勉強会では聞くことができました。就職活動として、勉強会はこれ以上ないくらいに良い場ですよ」

 もちろん、最新の技術の勉強にもなる。このころから、井上さんの就職活動は完全に「勉強会への参加」と同義になった。インターンにも参加したが、よりリアルな現場の声が聞けるのは勉強会だったという。

 「インターンは、1部屋に集めて課題を与える『イベント型』が多かったように思います。だから、そこまで現場のことがリアルに分かるわけじゃない。参加できるならした方がいいけど、期待し過ぎない方がいいかもしれませんね。それより勉強会に参加した方が、ずっと良い」

 Twitterも、現場で働くエンジニアたちとコミュニケーションを取る上で役に立ったという。エンジニアが実際に日々、どんな仕事をして、どんなことを考えているのかを、Twitterを通じて知ることができたのは大きかった、と井上さんは語る。

逆求人イベントでアピール

 2009年12月、井上さんはある就職活動イベントに参加した。大学院生向けの就職情報サイト「アカリク WEB」が主催する逆求人イベントだ。通常の就職活動イベントとは異なり、学生がプレゼンテーションを行って、企業の採用担当がコンタクトを取るという形式である。「これがなかったら、就職活動はもっと苦労していたかも」と井上さんは振り返る。

 「30分くらいのアピールタイムがあって、学生がプレゼンテーションをします。理系修士向けのイベントなので、みんな真面目に研究の話をするわけです。でも僕は、このインタビューでお話ししたようなことを話しました。人前で話すのは大好きですから、楽しんでプレゼンテーションができました」

 すぐに、複数のWeb企業の採用担当者から連絡が来たという。井上さんはそれらの採用担当者と仲良くなり、食事に誘ったりしながら、情報交換に努めた。

 「2次面接免除という会社も多かったですよ。こういう場でアピールできて、採用担当の方と仲良くなれたのは、大きかったと思います」

 面接でも、自分がどんなことをしたいか、将来どんなエンジニアになりたいか、という「夢」を語ったという井上さん。「Webの世界の人は、『アツい』人が多いですから、夢を話すとすごく喜んで聞いてくれるんです」――そう就職活動を振り返る井上さんは、とても楽しそうだ。

 「就職活動は、すごく面白かった。勉強会も楽しかったし、Web系のベンチャーは若い人材を求めているので、こちらの話をすごく熱心に聞いてくれます」

■□■

 井上さんの「就職活動」は、異端に見えるかもしれない。だが、事実、井上さんは複数社から内定をもらい、自分の「夢」に向かって一歩を踏み出し始めた。「就職活動はこうでなければいけない」という固定観念に囚われる必要はないのだ。

 「大切なのは『フットワークの軽さ』だと思います。就活セミナーだけじゃなくて、勉強会にどんどん参加してみるとか。僕がIT業界就職ラボで『記事を書きたい!』と手を上げたのも、それによっていろんな人と出会えたり、自分をアピールできると考えたから。『フットワークの軽さ』は、働き始めてからも重視していきたいですね」

◇◇◇

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