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自分戦略研究室 Book Review

ITエンジニアにお薦めしたいビジネス書5冊

三宅信光
2003/10/1

連載「外資系コンサルタントのつぶやき」の筆者に、ITエンジニアにお薦めしたいビジネス書5冊を取り上げてもらった。いつもはビジネス書をほとんど読まないという驚きの日常を送る筆者が選んだ5冊とは?

 ITエンジニアに薦めたいビジネス書を紹介してほしいといわれたものの、正直いって困りました。私はあまりビジネス書を読まないのです。

今回取り上げた本
ザ・プロフィット
チェンジ・ザ・ルール!
わかりやすいマーケティング戦略
組織戦略の考え方
スターバックス成功物語

 本をまったく読まないわけではありません。どちらかといえば普通の人よりも多くの本を読んでいると思います。多いときには1日1冊以上のペースで読むこともあります。ただ、そのほとんどが小説か学術書の類であり、ITコンサルタントになろうとしている人向け、という本ではないのです。

 私がなぜビジネス書をあまり読まないのかというと、ほとんどは私の怠惰な性格に起因します。しかし、ちょっとだけ弁解すれば、本というのは自分が考えるきっかけにするものだという気持ちが私には強いのです。小説にはそのきっかけはありますし、学術書、思想書、古典にも私にとってさまざまなことを考える数多くのきっかけが埋もれています。ビジネス書にそれがないとは思いませんが、「読めば分かる」というような売り文句を見ると、その途端に「いらん!」と思う悪い癖があります。取りあえず私はいまを生きているのだから、今の世の中のことくらいは分かるよといった、変な自信があるのかもしれません。

 そんな私ですので、今回はITコンサルタント仲間にお薦めの本を紹介してもらい、それを読破しました。その結果、これまでの読書人生をちょっとだけ後悔することになりました。自分の思考を刺激してくれる本が多かったためです。さて、長口上はここまでとして、読みやすく、それでいて刺激の強かった本の数々を紹介したいと思います。

 今回紹介する5冊は、いずれもここ1〜2年内に発売された本ばかりです。本当はもっと古い本をとも思ったのですが、薦められた本を読むうちに、自分自身が面白いと思ってしまいました。

 いずれも読んで覚えるための本ではありません。皆さんの思考に刺激を与える良書だと思います。それでは、それぞれの本を紹介していきましょう。

  企業が勝ち残るためには

ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか

ザ・プロフィット
エイドリアン・スライウォツキー著、中川治子訳
ダイヤモンド社
2002年12月
ISBN4-478-37422-8
1600円(税別)

 『ザ・プロフィット』の副題には、「利益はどのようにして生まれるのか」とありますが、私はこの本は、「企業はどのようにして自らが勝ち残れる方法を見つけ出すのか」について書かれていると感じました。

 中身は小説仕立てです。経営に精通したマスターが若い有能な弟子にさまざまな利益モデルを1つ1つ伝授していく、という話に仕立てられています。何となく昔のカンフー映画などで弟子が折に触れて師匠の言葉を思い出す、というシーンを連想しました。

 話自体はまあ面白く、文章も平易で分かりやすくできていますから、簡単に読み進められますが、中身はなかなか濃いものです。実際に存在する企業のことも織り込まれているので、トレーニングするための助けにもなります。さまざまな参考書も紹介されていて、私もこの本の中でマスターが弟子に課した課題図書を何冊か読んでみました。

 本の内容自体は、目新しいことが書かれている印象はありません。しかし、網羅的にそして分かりやすく各業種で各企業はどのようにして利益を得ているのか、どのようなパターンで勝ち残りを図るべきなのか、といったことが解説されており、企業を見る場合の1つの指標を与えてくれる本だと思います。

  ITを利用して企業はどんな利益があるのか

チェンジ・ザ・ルール! なぜ、出せるはずの利益が出ないのか

エリヤフ・ゴールドラット著
三本木亮訳
2002年10月
ISBN4-478-42044-0
1600円(税別)

 『チェンジ・ザ・ルール!』は、『ザ・ゴール』シリーズの最新作で、これまでの中で一番面白いといわれ、読んでみました。こちらも『ザ・プロフィット』と同様に小説仕立てで読みやすい本です。そのため、きちんとした教科書的な本を好まれる人には向かないかもしれません。現在のIT業界に本当は何が求められているのかがを分かりやすく解説しています。いろいろな話が織り込まれていますが、中でもITを利用することで企業はどんな利益を得ることができるのかを明らかにしなければならない、という個所では、こんな当たり前のことが実はおろそかにされているのだ、と私も最近ようやく思うようになっていたので共感しました。

 『ザ・プロフィット』と比較すると世界が少し狭い気もしますが、IT業界の人であれば、身につまされる話が多いと思います。あなたの会社はお題目を並べるだけで、クライアントに製品を売りつけていませんか。

  マーケティングの理論と実例を平易に理解できる

わかりやすいマーケティング戦略(有斐閣アルマ Basic)

沼上幹著
有斐閣アルマ
2000年4月
ISBN4-641-12086-2
1800円(税別)

 『わかりやすいマーケティング戦略』はとても面白い本の1冊です。マーケティングには興味がない、という人でも一読されることをお薦めします。マーケティングの基本的な考え方に触れられることはもちろんですが、何よりも会社が市場を分析する際の基本的な考え方に触れられます。そして解説も平易です。マーケティングの入門書としても、また、戦略とは何か、を考えるきっかけにもなり得る本だと思います。

 そうはいっても、人によってはあまりにも平易で、物足りなく感じるかもしれませんが、身近な実例も引用されており、理解の助けになる良書だと思います。筆者はある大学の教授ですが、いかにこの著者が常に世の中の動きに興味を持ち続けているかが分かります。大学教授ですが理論面ばかりに走りすぎるわけでもなく、かといって現実の現象面だけに流されることもなく、という見事なバランス感覚で書かれています。

  組織についてきちんと勉強したことがない人に

組織戦略の考え方 企業経営の健全性のために

沼上幹著
ちくま新書
2003年3月
ISBN4-480-05996-2
700円(税別)

 『組織戦略の考え方』は、『わかりやすいマーケティング戦略』と同じ著者です。組織論を戦略的な視点で展開しています。組織を考えるうえでの基本的な考え方も解説されていますし、『わかりやすいマーケティング戦略』ほどではありませんが、実例を挙げた平易な書き方は共通しています。

 本書の第7章「トラの権力、キツネの権力」では、自分を振り返って思い当たることもいくつかあり、忸怩(じくじ)たる思いに駆られました。コンサルタントとして、あるいは企業人として組織論は避けて通れない重要な問題です。また、大抵の人が一家言ある分野だと思いますが、案外きちんとした組織論を学んだことはない人が多いのではないでしょうか。そんな人には格好の入門書になると思います。『わかりやすいマーケティング戦略』」もそうですが、本書も本来難しい話を分かりやすく解説し、かといって単なるハウツーモノにしていない、バランスのいい本です。

  散りばめられたエッセンスがお薦め

スターバックス成功物語

ハワード・シュルツ、ドリー・ジョーンズ・ヤング著、小幡照雄、大川修二訳
日経BP社
1998年4月
ISBN4-8222-4113-0
1800円(税別)

 「スターバックス成功物語」あらかじめお断りしますが、私はいわゆる成功者の「いかにして自分は成功したか」的な話は大嫌いです。最近でも某エンターテイメント系の経営者が書いた本を薦められたのですが、まったく読む気にならず、人から借りたその本はいまだにデスクの上に眠っています。その本を読んだ同僚から「読まなきゃよかった」という話を聞いて、「ほら見ろ」と思ったりしています。

 本書もある意味そうした系統の本に入ります。最初はそうした本だと思わずに読み始めたのですが、読み始めてすぐに気がつき、放り出そうかと思いました。でも、読みやすかったこともあり、そのまますらすらと読み進め、「悪くもないかな?」と思うようになりました。

 しょせんはスターバックスを成功に導いた自慢話といえるでしょうが、この著者の情熱、それと会社とは本来どうあるべきかという点に対する見識に引かれました。利益至上主義とも思えるアメリカの市場で、題目だけかもしれませんが、品質と人材(社員レベルでの)を企業の最も大事な成功要因とした考え方は新鮮さを感じます。もっとも、私自身はスターバックスが高い品質のコーヒーを提供している、と感じたことはありませんから、今1つ実感がわかなかったのは事実ですが……。

 とはいえ、本書は単なる成功談やさほど刺激を感じない部分も多く、また長すぎて(1段組で約460ページ)、途中で飽きてしまうこともあるかもしれません(実際私自身、2度ほど読むのを中断しました)。が、ところどころに散りばめられたエッセンスは一読に値すると思います。

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