国際競争時代に突入するITエンジニアに生き残り策はあるか?
日本人ITエンジニアはいなくなる?
第30回 会社が海外進出したら? ITエンジニア、5つの備え
小平達也
2008/9/22
■情報システム部門のグローバル対応 5つのポイント
先にも述べたように、情報システム部のグローバル展開といっても国内で活用しているベンダに、海外でも引き続き依頼する場合や、現地社員を採用して育成していく場合までさまざまな形があるが、読者も皆さんの所属する情報システム部が海外展開する場合、知っておいた方がよい5つのポイントをご紹介する。
その1:自社のグローバル戦略を理解する
グローバル戦略といっても、
「海外で生産して日本で販売」(日本市場型)
「日本で生産したものを海外で販売」(海外市場型)
「海外で生産したものを海外で販売」(海外完結型)
などいくつかのモデルがある。まずは自社のグローバル展開のモデルがどれに当たり、どれくらいのボリュームをどれくらいの時間軸で対応しようとしているのか適切に理解することが必要である。
その2:海外・現地事情や政治背景を理解する
自社・自部署が事業展開する国・地域の事情を情報システム部門としても理解をしておく必要がある。通信インフラ事情以外にも、例えば中国では反政府的なキーワードは検索できない、など本連載第28回「外交のプロに学ぶ、自分を『伝える力』」の中でもご紹介したようなその国の事情・政治背景を理解しておくことは大切である。
その3:現地スタッフとのコミュニケーション
自社の社員か、ベンダの社員かを問わず、実際のオペレーションに携わる現地スタッフとのコミュニケーションはITエンジニアといえども必要事項である。コミュニケーションを通じて、仕事を任せる相手の技術力や業務知識、問題発生時の対応方法や思考プロセスなどを把握しておくことはトラブル対応の観点からも必須といえる。
その4:現地スタッフのエンジニアとしてのキャリア・志向性を理解する
その3と関連するが、海外では1〜3年でのジョブホッピングは当たり前であり、1年間で労働人口の5%しか転職しない日本とは大きく異なる。「育てたと思ったらすぐに辞められた」など、ある意味当然のこととして起こるのである。円滑に業務を遂行するためにも学歴、職務経験、キャリアの志向性(スペシャリスト志向かマネジメント志向か)などを理解しておくと、双方がWIN−WINの関係を築きやすくなる。
その5:最低限、英語でのプレゼンテーションはできるようにしておく
一般に日本のITエンジニアで英語の堪能な人材は少ないがそれでも、最低限「自己紹介、自分の専門性、業務内容」については英語で説明できるようにしておくことは必要だ。海外事業の拡大とともに現地社員は増加するわけだが「本社の情報システム部門の○○さんは一体どんな仕事をしているのか分からない」などといわれかねない。英語でのプレゼンテーションは現地のスタッフとのコミュニケーションを円滑にするのみならず、あなた自身のキャリアにとってもチャンスが広がることになる。まずはA4用紙1枚程度の分量で構わないのでとにかく喋れるようになっていた方がよい。
以上、情報システム部のグローバル対応のための5つのポイントをご紹介した。ご存じのとおり情報システム部を取り巻く環境はこの10年で激変した。ノンコア業務がアウトソースされることはもはや常識ともなりつつあり、管理部門の中でもとりわけ情報システム部が真っ先にその洗礼を受けているわけだが、このような環境の中で「自社業界・業務知識に強いエンジニア」としてグローバルに対応できるようになることは自分の強みをより強化していくことにもなるだろう。
今回のインデックス |
情報システム部のグローバル化における課題 |
情報システム部門のグローバル対応 5つのポイント |
筆者プロフィール |
小平達也(こだいらたつや) ◆ジェイエーエス 代表取締役社長 ◆東京外国語大学 多言語・多文化教育研究センター コーディネーター養成プログラムアドバイザー ◆早稲田大学商学部学術院総合研究所 WBS研究センター 日中ビジネス推進フォーラム特別講師 ◆ジェトロ BJTビジネス日本語能力テスト外部化検討委員会 委員 大手人材サービス会社にて、中国・インド・ベトナムなどの外国人社員の採用と活用を支援する「グローバル採用支援プログラム」の開発に携わる。中国事業部、中国法人、海外事業部を立ち上げ事業部長および董事(取締役)を務めた後、現職。ジェイエーエスではグローバル採用および職場への受け入れ活用に特化したコンサルティングサービスを行っており、外国人社員の活用・定着に関する豊富な経験に基づいた独自のメソッドは産業界から注目を集めている。 |
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