第1回 かじったことは実務で習得、末永流Linuxの学び方
末永貴一(エイチアイ)
2009/3/13
「これからLinuxを学びたいけど何から学んでいいか分からない」。そんな人のために、@IT自分戦略研究所の人気筆者であり、講師としての経験も持つ末永貴一氏が、Linuxを効率よく学習できるお薦めの記事を紹介します。 |
昨今、全国の小中高校や官庁、地方自治体、企業などでLinuxの導入が進んでおり、Linuxに関連する業務もますます増えています。わたしはヒューマンインターフェイスの研究開発・コンテンツ開発会社に勤めていますが、あらためて振り返ってみるとLinuxを使うケースが多く、Linuxを案件で利用することは日常的です。
また、@IT自分戦略研究所が実施した読者調査の結果を見ても、Linuxが今後身に付けたいスキルの上位に入っており、読者のITエンジニアの皆さんの関心が高いことがうかがえます。
情報系の業務にはシステム開発・構築、組み込み機器の開発やWebサービスの企画、開発から運用までさまざまなものがあります。Linuxはそうした多様な業務で活用されています。今後、利用分野はさらに拡大していくことでしょう。
以上から、ITエンジニアの方がこれからLinuxを学ぶメリットは十分あると思いますし、Linuxスキルは近い将来においても役立つものとして考えることができると思います。
■どんな業務に就くにせよ、最低限押さえておきたいLinuxの基礎知識
実際にLinuxを学ぼうとしたときにどこから学んでいけばよいのかは大きな悩みどころだと思います。Linuxはあくまで環境です。一口に学ぶといっても、何をやりたいのかによって学ぶ内容は違ってきます。
例えば、システム開発の分野でも、どの部分にフォーカスするかによって学ぶ内容が変わってくるはずです。サーバアプリケーションをチューニングするのか、LinuxのOS自体をチューニングするのか、またセキュリティ機能を活用するのかなど、考えればきりがありません。とはいえ何をやるにしても共通に必要な知識や考え方というものはあるものです。皆さんにはまずそれを知っていただきたいと思います。
1つの提案として、以前「Linuxをいまから学ぶコツ教えます」で紹介した「Linuxを学ぶフロー」が参考になると思います。漠然とLinuxを勉強したいという方は、まずは以下の内容を学んでみてはいかがでしょうか。
上記の知識は、Linuxを利用したどのようなテーマに対しても共通基礎知識として役に立つと思います。ネットワークについては、目的によって利用しない場合も想定されます。しかし、サーバなどを利用しない場合でも、Linuxのネットワーク設定の知識が必要になることがあります。例えば、組み込み系の開発の場合、Linux環境でターゲットボードとPCを接続して開発を行うことがありますが、このときにネットワーク経由での接続を行うことがあるのです。
「Linuxをいまから学ぶコツ教えます」では、上記の項目に沿って、学習の基本的な流れを詳しく紹介しています。興味のある方はご覧ください。
■仕事と勉強を両立する秘けつ
当然ながら、仕事と勉強を両立するのは難しいことです。仕事で疲れているうえに、勉強時間を確保するのはなかなか大変だと思います。そういう方に、「ITエンジニアが語るわたしの勉強法 第1回 読んだ知識は仕事で身につける」が参考になるのではないでしょうか。 例えば次の個所。
以上のくだりは、可能であればぜひ実践していただきたいと思います。勉強が不十分な状態でもかまいません。得た知識を片っ端から業務で利用していくことで、真の実力となっていくことを実感できるでしょう。頑張ってください。
■勉強会の開催で学んだ知識が定着する
知識を定着させるためには、仕事と連動させるのが最も効率よく身に付く方法だと思いますが、必ずしも自分が学びたいテーマの仕事にありつけるとは限りません(どちらかというとない方が多いかもしれませんね……)。
そういった場合、自分が主催者となって勉強会を開催するという手が有効だと思われます。勉強会を開催するメリットとしては「勉強会の開催は『メリット>コスト』」の「勉強会を開催する意義」に挙がっています。技術を身に付けるには、自分で勉強会を実施してみるのがよいようです。
社外の人も含めて勉強会をすることに抵抗がある方は、まずは社内の人たちに呼び掛けて実施するのもよいと思います。他人が企画した勉強会に参加し、一緒に学ぶことも有効だと思いますが、少なくとも自分が身に付けたいテーマに関しては、自分自身で開催することが重要だと思います。自分以外の人たちを前に説明をすることが重要であり、それが知識をより深いレベルで定着させることにつながります。
わたし自身講師業務の経験があるのですが、その経験を通じて、「教える側に立つ方が教わる側に立つよりも勉強になる」ということを実感しました。人に何かを教える場合、教える内容よりもより広い知識や深い理解を必要とします。説明をする場合、内容を分かりやすく伝えるためには自分自身がちゃんと理解していないと相手にうまく伝わりませんし、自身の言葉として相手に伝えることが難しくなります。
また、受講者から、講義では説明しなかった応用的な質問をされる場合がありますので、やはり知識の範囲を広く持っておく必要があります。他人の前で説明するときに恥ずかしい思いはしたくないので、その緊張感が集中力を高め知識の定着を早めます。
このように、勉強会を開催し、自身が実施することによって得られるメリットは大きいといえます。
■多種多様なLinux資格
得られた知識を体系的にまとめるためや、成果として証明するためには、資格を取得してみるのがよいと思います。Linuxにはいくつかの資格があります。
Linuxの資格は、ベンダ系とベンダニュートラル系の大きく2つに分けられますが、どの資格を取得するかは悩みどころかもしれません。考え方としては、具体的な業務に関連して資格が必要であればベンダ系、Linuxに関する広範な技術知識を証明したいのであればベンダニュートラル系を選択するのが妥当です。例えば、RedHatのサーバ運用にかかわるため、業務上資格を持っておきたい場合、実技試験が中心であるRHCE(Red Hat Certified Engineer)を取得することになると思います。一方、日本で取得者が多いLinux資格といえばLPI認定です。LPIは実力に応じて複数のレベルに分かれており、レベルごとに幅広い知識が必要とされます。漠然とLinuxに関する資格を取得したいというのであればLPIがお薦めです。LPIについて詳しくは「LPI認定試験の傾向と対策」や「LPICに見るLinuxを学ぶ意味とは」を、各種Linux資格については「Linux認定資格・試験の世界」を参考にしてみてください。
■学びながら考えてほしい、知識の生かし方
せっかく学んだ技術は、実力として発揮されてこそ意義のあるものになると思います。Linuxを学ぶ際、何を学ぶかなど内容を考えることは大事ですが、学んだ知識をいかに自分のものにしていくかを考えながら学ぶことで、学んだことを着実に身に付けることができるでしょう。
筆者紹介 |
末永貴一(すえながよしかず)●エイチアイ 研究開発部 部長。ヒューマンインターフェイスの研究開発、コンテンツの開発を行うエイチアイで次世代技術の研究開発を行う業務を担当している。オープン系のシステム開発事業、教育事業を経て、自社独自の組み込み機器向け3Dリアルタイムレンダリングエンジンであるミドルウェアの「MascotCapsule」を中心とした開発に従事する。10年前にLinuxを知って以来、サーバ構築、開発、教育、執筆などさまざまな場面でLinuxにかかわるようになり、現在では組み込み開発でもLinuxを利用することがある。 |
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