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 スマートフォン&ソーシャル業界の転職者にインタビュー

スマソ系エンジニア転職市場Watch!

第4回 「スマホ開発の経験は武器になる」、確信を持って会社を辞めた元大手企業エンジニア

IT業界の転職市場は、回復傾向にある。特に、スマートフォン&ソーシャル業界の求人意欲は活発だ。本連載では、スマートフォン&ソーシャル業界への転職に成功したエンジニアにインタビューし、「生の声」を聞いていく。転職を考えているエンジニアの参考になれば幸いだ。

 これからスマートフォンアプリの技術は武器になる――そう確信して会社を辞めた当時、浜野聡さん(仮名:33歳)はスマートフォンアプリ開発の経験は全くなかった。

浜野聡さん

【今回の転職者】浜野聡さん
(仮名:33歳、転職1年目)
株式会社コロプラ
ジオメディアグループ
【転職前】
(1)携帯電話のファームウェアの開発
(2)Webメッセンジャー、ソーシャルプラットフォームの開発
(3)iPhone・Androidアプリの開発
 ↓
【転職後】
Android版位置ゲー「コロニーな生活☆PLUS」の開発

 だが、半年のフリーランス期間中に独学でスマートフォンアプリ開発の技術を身に付け、日本最大級の位置登録ゲーム※「コロニーな生活☆PLUS」を展開するコロプラへ、アプリ開発エンジニアとして見事、転職した。

※携帯電話の位置情報機能を利用したゲームのこと。

 「コロニーな生活☆PLUS」は2003年のサービス開始以来ずっと個人運営だったが、ユーザーの拡大に伴い法人化し、現在も成長を続けている。浜野さんは2010年にリリースしたAndroid版「コロニーな生活☆PLUS」の開発・改善に関わっている。

 もともとは大手IT企業で、アプリ開発とは無関係の仕事をしていたという浜野さんが、仕事を辞めてまでスマートフォンアプリ開発へと転向した理由は何なのか?

  新卒入社の企業で仕事が減り、安定した大手企業を求めて転職

 浜野さんは大学院を卒業後、新卒入社した企業で、携帯電話(フィーチャーフォン)のファームウェアの開発に3年ほど従事していた。CやC++などのプログラム言語を駆使して、充電やライトといった機能の開発を手掛けていたという。しかし、第3世代携帯電話への切り替わりや、大手海外メーカー製・携帯電話の台頭などによって、だんだん仕事が減っていった。そこで、浜野さんは転職を考え始める。

 「次は、安定した大きな会社に行きたいと思いました。特に、私は“離れた人とコミュニケーションを取ることができる”Webサービスに興味を持っていました。当時はメッセンジャーをよく使っていたので、こうしたWebサービスの開発に携われたらいいなと考えました」

 そんな時、そのメッセンジャーサービスを作っていた大手Webポータルサイトの企業Webサイトで採用情報を見つけた。転職を決意した浜野さんは、迷わず応募。面接では、自身がメッセンジャーのユーザーであること、その開発に関わりたいという意思を伝え、無事採用が決まった。

  大手ポータルサイト企業で、Web系の開発スキルを積む

 Webサービスの会社へ転職して数年間、浜野さんは希望どおりメッセンジャーの開発に携わることになる。メッセンジャーの他には、SNS機能を持ったプロフィールサービスの開発に関わり、PHPでのフロントエンド作成や、C++でソーシャルプラットフォーム構築といった業務を手掛けた。

 「大手企業なので、多くのユーザーに自分の手掛けたサービスを使ってもらえることはとてもうれしかったです。また周りには優秀なエンジニアたちがたくさんいたので、彼らと仲間意識を持って協力し合える環境が魅力でした」

 仕事は充実していたが、入社して4年半が経過したころから再び、転職を考えるようになる。安定した環境だったので、ずっと在籍する分には問題はなかった。しかし、会社が大きい分、意思決定に時間がかかる、大きなプロダクトのほんの一部分にしか関われない、開発よりも社内調整に時間がかかる――といった課題が見えてきたという。

  フリーランスとして、独学でスマートフォンアプリを開発

 もっとスピーディーに、ユーザーと近い距離での開発に専念したい――。そんな風に考えていた時に、フリーランスでITシステムに関する営業・企画を手掛けている浜野さんの妻から、「最近、スマートフォン関連の開発案件が急増している」という話を聞いた。

 「スマートフォン関連の開発はまだ歴史が浅いので、チャレンジするなら今だと思いました」

 当時、浜野さんはスマートフォン関連の開発スキルを全く持っていなかった。しかし、「需要があるなら、取りあえずやってみよう」と考えた。「一度スキルを身に付けてしまえば、もし次の会社に行く時が来ても必ず武器になる」という確信があったという。

 とはいえ、まったく新しい分野の開発に取り組むのだ。会社の仕事とは両立できない。浜野さんは思い切って会社を辞めることを決断、フリーランスとしてスマートフォンアプリの開発に専念することにした。妻が獲得してきたスマートフォンアプリ案件を、未経験の浜野さんが1人で開発・実装するというチャレンジングな仕事が始まった。半年間で、iPhone用ゲームアプリとAndroid用投資家向け株価情報アプリの2つを開発した。

 「全くのゼロからのスタートだったので、最初は開発環境の構築から始めました。入門書やWebの記事を読んでは基本を勉強し、独学で開発にいそしむ日々でした」

 周りに質問できず、テストしてくれる人もおらず、開発は常に1人。疑問点はWebを検索したり、リファレンスを読んだりしながら解決していった。当然、最初からスムーズにいくはずはなく、顧客側から「うまく動かない」と言われては直したことが何度もあったそうだ。

 「今思えば、つくづく危ない橋を渡っていましたね。フリーランスの半年は、本当にスリル満点でした。でも、この半年間で、スマートフォン開発ならではの面白さを見つけることができました。開発環境が無料で手に入り、1人で開発から納品までを手掛けられるのは非常にエキサイティングなことだと思いましたね」

  「コロプラ」なら、これまでの経験を生かせると確信

 半年1人で仕事をしてみた結果、何もかも1人でやらなければならないというプレッシャーもあって、浜野さんは「もう一度会社で働こう」と思うようになった。会社勤めを辞めて半年のブランクがあったが、転職活動に対する不安は特になかったという。

 「スマートフォンアプリを作った実績は、必ず強みになるという確信がありましたから」

 転職先を選ぶ基準は3つあった。「スマートフォンまたはWebエンジニアとしてこれまでのスキルを生かせること」「大き過ぎない会社でスピード感を持って開発できること」、そして「自社で面白いサービスを展開している会社であること」。エージェントを利用して複数社を検討する中、コロプラに出合った。

 「GREEやMobageといったソーシャルゲームが流行している中で、“位置ゲー”という独自の軸でサービスを展開している点に面白さを感じました。また、実際にゲームをやってみて、ユーザー同士の距離感の近さや交流の温かさにも興味が湧きました」

 同社は、Webサービスを基にスマートフォンアプリの開発にも取り組んでいるため、ちょうど自分の経験にもマッチしている。そう感じた浜野さんは、すぐにコロプラへの応募を決意。Webポータル会社時代のソーシャルプラットフォーム開発の経験や、フリーランス時代のスマートフォンアプリ開発の経験を強くアピールして無事に内定を獲得し、2010年11月に転職した。

  技術力だけでなく、企画力も求められる環境に苦戦

 コロプラに入社して最初は、Webサービス側のゲーム開発に関わった。PHPを使用しての開発だったため、技術的にはスムーズに慣れていくことができた。しかし、ゲームならではの“企画”の部分には苦労したという。

 「コロプラでは、企画担当、プログラム担当と業務が分かれておらず、皆で一緒にアイデアを出します。ただ言われたままを作るだけではなく、『どうやったらユーザーに使ってもらえるのか』を考えることが、とにかく大変でした」

 「企画部分では、現在もまだ十分に力を発揮できていない」と語る浜野さんだが、アイデア力を磨くために自分なりに意識していることがあるという。それは、「ユーザーの反応に応じて、すぐに別の対策を練るというサイクル」だ。

 Webサービスでは、アイデアをサービスに反映した結果が、数字としてダイレクトに、素早く返ってくる。アイデアがうまくいけばそれはやりがいとなるし、うまくいかないなら次のチャレンジをすればよい。このサイクルを回していくことがポイントだと浜野さんは語る。

 このスピーディーなサイクルは、社内の意思決定の速さがあってこそ実現できる。「ユーザーの反応を見て、改善検討を行って実装するまでのスピードは、これまでの会社と比べ物にならない」そうだ。

  技術志向から顧客志向へ――充実感を覚える日々

 Webサービス側でゲーム開発の一通りの仕組みを学んだ後、浜野さんは自分の希望でスマートフォンアプリの開発部門へと移った。現在はAndroidアプリの開発に携わり、ユーザビリティ向上のためのさまざまな改修を手掛けている。

 「スマートフォンユーザーは急増しています。自分の改善した部分が、多くのユーザーの楽しみに直結していることは、やりがいであると同時に強い責任を感じています。日々レビューを見ながら、次はどう改修すればいいか、こんな仕様はどうかと考えています」

 コロプラに転職してから、「技術志向から顧客志向へと意識が変わった」と浜野さんは語る。技術ありきでプロダクトを作ることも大切だが、ユーザーが求めていること、不満に思っていることを見つけてプロダクトに反映していこうという意識が、サービスを提供する上では何よりも大切なことだという。

 浜野さんはもっとスマートフォンアプリのユーザビリティを上げたいと考えている。また、いずれはチーム体制を強化するという「仕組み作り」にも関わっていきたいそうだ。

 「開発は個人プレイになりがちですが、チームプレイの方がもっと良いものができると思うんです。これからスマソ業界を目指す人にも、ユーザーのニーズや反応にしっかりと向き合う姿勢を持ってほしい。そして、良いサービスを生み出していってほしいですね」

 スマートフォンアプリ開発への思い切ったシフトチェンジで、新しいキャリアの道が開けた浜野さんの顔は、今後挑戦したいことへの期待に満ちていた。

●コロプラの人事に聞いた、浜野さんの評価ポイント

 これまでの経歴で、ソーシャルプラットフォームのオープン化とスマートフォンアプリの開発に取り組んでいた点を評価しました。

 当社では上流・下流と担当工程を分けていないため、すべての工程に対応できるという点も評価につながりました。仕事を辞め、職歴にブランクがあったという点については、「スマートフォン開発に取り組みたい」という明確な理由と、フリーランスでの経験があったので、特に気にはなりませんでした。

 当社では、さまざまな部門との交流が求められます。その点、浜野さんは自己主張と協調性のバランス感覚が優れているため、入社後はしなやかに働いていただけるだろうという期待がありました。


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