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Book Guide



 

■コミュニケーション
相手に通じる話をするには
1週間で実践 論理的会話トレーニング
●高島康司著
●アスカ・エフ・プロダクツ 2008年1月
●1470円(税込み) 4-7569-1156-0

 私感ではあるが、日本のコミュニケーションとは「察する文化」だと思うことがある。話す側は遠回しにいいたいことをほのめかし、「ああそうなのね」と相手に察知してもらう。雰囲気を醸し出して気持ちがシンクロすれば「通じた」実感が得られるかのようである。そうした空気と調和を重んじる文化の良しあしはさておき、話が通じるか通じないかは話す側よりも察する側に委ねられている。そうした文化で日本人は察する能力は鍛えられているが、説明する能力は鍛えられていないのではないか。
 そんな筆者の疑問に答えるかのように、本書の冒頭で「日本人は説明ベタで、外国人は話上手と言われる本当の理由」を説明している。その中の1つに「外国と日本では社会の基本的なルールが異なるため、要求される話し方が違っていた」とある。話し手の立場に見合った「らしい」話し方をすることが重視され、「中身がない話し方でも大丈夫だった日本」と著者は指摘している。
 しかしいまは違う。完全にそうした文化がなくなったとはいわないが、あらゆる場面において中身のある話をきちんと伝えることの重要性が高まっている。大事なことをきちんと相手に伝えるにはどういう話し方をすればいいか。説得力のある話ができるようにするには、何に気を付けるべきか。
 本書は1週間で訓練できるようにシンプルに説明し、会話サンプルも例示している。例えば分かりやすい話し方のポイントとは、第1日目に「具体的に話す」と「整理して説明する」の2点にあると指摘する。そして2日目以降は、さらにしっかり伝えるための技術「列挙」「時系列」「比較対照」などを順々に学んでいく。本書を読めば、相手に伝えるべきことをきちんと伝えられるようになるだろう。(ライター・加山恵美)

その立場になって考え、尊重すれば、人は動く
人を動かす
●デール・カーネギー著、山口博訳
●創元社 1999年10月
●1575円(税込み) 4-422-10051-3

 顧客のクレームに対応するとき、こちらが正しくても抗弁せずに、まず相手の話をじっくり聞いて同意することから始めるならばうまくいくだろう。パートナー社員にプログラムの訂正を依頼したいとき、頭ごなしにいうのではなく、相手が自然と自分の間違いに気付くように導けるならば、あなたの仕事はうまくいくだろう。また、社内の営業担当者の提案を検討するとき、「そんな仕組みは作れないよ」と切り捨てるのではなく、共に考えたうえでその結論に達するのならば、あなたの仕事はきっと、もっとうまくいくだろう。
 本書は「人を動かす」「人に好かれる」「人を説得する」「人を変える」ための原則を詳細に解説し、70年にわたって読み継がれている、いわば人間関係の古典である。この有名すぎる1冊をなぜあえて紹介しようと思ったかというと、最近、若いITエンジニアの友人が、自分の愛読書として薦めてくれたからだ。「ITエンジニアは大勢の人と接する。だから人間関係に気を配り、スムーズに仕事を進めることが重要」という。
 本書で著者は、自らの体験、周囲の人々の体験、歴史上の人物の逸話などから収集した興味深いエピソードを無数に織り込みながら、「命令をせず、意見を求める」「誠実な関心を寄せる」「聞き手にまわる」「笑顔で接する」「期待をかける」などの人を動かすための原則を、具体的に分かりやすく示していく。それらすべての根底にあるのは、相手の立場になって物事を考え、相手を尊重することで、相手は自ら動きたくなる気持ちになるということだ。
 ビジネスの場面で使えるヒントが詰まった本ではあるが、「人の気持を傷つけることで人間を変えることは絶対にできず、全く無益である」「幸福は外的な条件によって得られるものではなく、自分の気の持ち方ひとつで、どうにでもなる」など、人生のさまざまな場面に生かせる名言も豊富だ。折に触れて読み返したい1冊である。(@IT自分戦略研究所 長谷川玲奈)

上司とうまくガチンコ対決するには
その上司、大迷惑です。「困った上司」とかしこく付き合う傾向と対策
●松井健一著
●すばる舎 2007年8月
●1470円(税込み) 4-88399-654-9

 上司とは部下の上に立つ存在。ならば技量も人柄も「上」であるべき、部下ならそう思いたくなるものである。これは部下としての理想かもしれない。だが得てして現実はそうではない。「なぜ、あんな決断を」「なぜ、きちんと指示してくれないのか」と部下が上司に不満や怒りを抱えていることは多い。
  著者は自身の経験から推測して「30代から40代はじめのこれから企業を背負わなければならない中堅・若手社員の80%近くが、自分の上司に不平不満を鬱積(うっせき)させている」と述べている。部下の理想が高すぎるのだろうか。とにかく上司に不満を抱えているのは大多数だといえる。
  こうした不満が我慢できるうちならいいが、鬱積しすぎると暴発や無気力という悪影響が生じることもある。場合によっては転職も1つの解決策ではあるが、転職だと一時しのぎにしかならず、転職先で再び不完全な上司と直面することも起こり得る。会社という組織で働くうちは、上司や部下とうまく付き合う処世術が必要になるということだ。
  そこで本書では嫌な上司をうまくかわす方法や、うまく反論する方法をアドバイスしている。「ダメな上司でも付き合い方がある」と著者はいう。もし上司から困った問題を突きつけられたら「YES・BUTの原則」で対処せよとのこと。まずは「YES」と肯定するが、「BUT」と問題点を指摘し反論するのだ。また意味のある反発はどんなケースか、反発せず冷静に分析する必要性についても説いている。
  上司からの攻撃回避や反撃ができるようになると、周囲といい人間関係が築けるようになるだろう。加えて自分が上司になったとき、部下に反感を持たれにくい上司になれるかもしれない。(ライター・加山恵美)

58個の工夫から話し上手になろう
誰でもすぐに身につく上手な話し方
●斎藤ますみ著
●日本能率協会マネジメント 2007年6月
●1365円(税込み) 4-8207-1707-3

 いまメールや伝言板といったコミュニケーションツールがすっかり日常に定着している。普段から文字や記号による意思疎通に浸りきってしまうと、生身の人間とじかに話すアナログなコミュニケーションがおっくう、または苦手になったりしていないだろうか。
  本書は話し方をブラッシュアップするためのコツをまとめている。話し言葉は耳で聞くため、声の抑揚や高低に関するアドバイスが多い。例えば、文章の句点(。)では息継ぎをして、読点(、)では約1秒の間を開けることとある。ただし長すぎると分かりにくいので、1文はひと息で話せる長さにすること、読点は多用しないのもコツとある。
  また強調すべきところを間違えると悪い印象を与えかねない。「副詞を強調するとイヤミに」「接続詞を強調すると押しつけがましく」「助詞を強調すると子どもっぽく」聞こえてしまうおそれがあるそうだ。
  ほかにも「漢語より和語」とある。例えば漢語の「低減」は、話し言葉だと聞き手には「ていげん」と聞こえるので「提言」など別の言葉を想像してしまうこともある。そのため「少ない」という和語で表現した方が確実に伝わるというわけだ。
  日本語の使い方の指導もある。「ごぶさたしております」と「お久しぶりです」では同じようだが、その背景にある態度などに違いがある。本書はこうした細かい項目ごとに簡潔にまとめられており、巻末にはチェックリストもある。本書は心構えからテクニックに至るまで、具体的で分かりやすいアドバイスをしているので、意識して実践してみれば効果を実感できるだろう。(ライター・加山恵美)

物事をいくつもの見方で眺めてみよう
ダメなものは、タメになる
●スティーブン・ジョンソン著、乙部一郎監修、山形浩生、守岡桜訳
●翔泳社 2006年10月
●1890円(税込み) 4-7981-1163-5

 子どものころ、テレビゲームをやりすぎてゲーム機を親に隠された覚えがある。親たちの間には、当時からテレビゲームに対して「何となくよくないもの」という意識があった。そしてそれはいまも変わっていない。
  本書はテレビゲームに限らずテレビやインターネットなど、負の側面ばかりが強調される現代の「大衆メディア」を考えるときに、これまでと違った視点を与えてくれる。本書では「大衆メディア」が、私たちの知的能力を高めているということを説明している。ゲームやドラマ、映画といった創作物は時代を追うごとに、その設定や複数のキャラクターのストーリーが入り混じるなど複雑化している。また創作物を楽しむために必要な知識も増えてきている。しかし、私たちはそうした複雑な創作物を、いつの間にか読み解けるようになっている。
  著者のスティーブン・ジョンソンは、次のように述べる。「今日のポピュラー文化は、正しき道を教えてはくれないかもしれない。でもそれは僕たちを賢くしてくれているのだ」
  「大衆メディア」に限らず、現代社会において「新しいもの」には厳しい評価が下されることが少なくない。その評価の中にはある程度当を得ていることものある。しかし必要以上に悪い部分を見るのではなく、それが持つ良い部分も併せて評価の俎上(そじょう)に載せることがフェアだと思う。そのうえで「新しいもの」と自分たちの関係性を考えることがより重要だ。
  本書は偏らずにフェアな視点で物事を見る重要性を喚起させてくれる。現代の「大衆メディア」の語られ方に違和感を持っている人、そして何より子どもを持つ親にぜひ読んでもらいたい1冊だ。(@IT自分戦略研究所 千葉大輔)

論理的でも伝わらなければ意味がない
論理思考の「壁」を破る
●出口知史著
●ファーストプレス 2006年6月
●1600円+税 4-903241-03-3

 いわゆる「ロジカルシンキング」など論理思考をテーマにした本が最近よく出回っている。本書はその先にある実践的な話だ。論理思考を導き出した後に直面する壁があることを指摘し、それをどう克服するかがテーマとなっている。
  著者は「論理思考は万能薬ではない」と、本書の冒頭で断言する。相手が自分と異なるロジックで考えていたり、違う立場や価値観を抱えていたりすると、合意形成が困難になる。ここが本書で指摘するところの「論理思考の壁」だ。
  こういうときに大切な視点について、筆者はまず「問題意識や考えを共有」することを提案している。論理的な結論を伝える際に、そもそもの問題点や問題の周辺にある背景を周囲と共有しなくてはならないという。そうでなければ伝わるものも伝わらない。スタート地点が違えば導き出される解は食い違うのも当然だ。
  本書では論理的な結論を伝えようとしてもうまく伝わらない相手のパターンをいくつか示している。例えば結論だけでロジックが欠ける結論押付型、事実から意味を引き出さない思考停止型、偏見でミスリードする視野狭窄(しやきょうさく)型だ。それぞれのケースにおいて結論の実行や問題解決を阻害する要因を指摘し、どう対処していけばいいか説いている。
  論理思考は理論の世界であるが、それを実行に移すには周囲への確実なコミュニケーションが必要となる。やはり人間同士、それぞれ感情もあれば土台となる考え方も違う。実際には考え抜いた提案でも伝える場面で苦労する人は多いことだろう。せっかくの論理思考を価値ある提案として生かすために必要な1冊である。(ライター・加山恵美)

開発現場で使える英語を身に付けよう
相手にYesといわせるSEの英会話「超」入門――シーンで納得!プロジェクトに効くフレーズとコツ
●二上貴夫著
●技術評論社 2006年5月
●本体1680円+税 4-7741-2773-6

 ITエンジニアとしてプライオリティの高いスキルの1つに、「コミュニケーション能力」がある。システム開発の現場では、顧客企業の担当者としっかりと話し合って要件定義ができる人材、その内容を開発メンバーに正しく伝えてプロジェクトをマネジメントできる人材が求められている。裏を返せば、それだけ「コミュニケーション能力不足」のITエンジニアが多いということ。日本語での「効果的なコミュニケーション」すらおぼつかないのに、ましてや「英語で伝えて」となったらどうすればいいのか。
  そんなときに「システム開発の現場で役立つ英会話集」として、そばに置いておきたいのがこの1冊。あるプロジェクトにアサインされた駆け出しSEの「優希君」と一緒に、システム開発の過程を進みながら、現場で役に立つ英語での質問や受け答えの方法、会話のフレーズなどを身に付けていこうというもの。
  海外企業との「共同開発プロジェクトの始まり」から設計・実装・試験とシステム開発の工程ごとに必要な会話例がまとめられているほか、「これだけは覚えておこう!」という必要最小限の例文など、「即効性」のある内容も盛りだくさん。英語でのコミュニケーションの必要に迫られている人とっては、この本で勉強したことがそのまま現場で生かせれば、今後の勉強の励みになるかもしれない。
  実際、国内で仕事をしているITエンジニアにとっては、英語でドキュメントのやりとりさえできればいいのかもしれない。が、海外のソフトウェア開発会社や外資系IT企業への転職などを視野に入れている人向けの「入門書」としてお薦めする。(ライター・下玉利尚明)

■7月4日のオススメ
会話を工夫して世渡り上手になろう!
「なぜか、人の心をつかむ話し方」が身につく本
●樺旦純著
●同文舘出版 2006年6月
●1400円+税 4-495-57151-6

 仕事柄、ITエンジニアによくインタビューする。ITエンジニアには比較的寡黙な人が多い。あまり公の場に登場することもなく、開発や研究に専念しているとこの傾向は顕著である。当方としては何とか工夫していろいろと話し掛けるからいいのだが、普段から言葉数が少ないと損をしていることもあるのではないだろうか。
 持っている技術や腕は素晴らしく、人の心をつかむことができれば生きていくうえで得をすることもあるだろう。そういうことが得意な人を世渡り上手と呼んだりする。会話が上達しても技術が上達することとは関係ないが、会話で仕事が円滑に進めば苦労は減るかもしれない。生活に余裕がうまれるかもしれない。
 
本書では人の心をつかむためのちょっとした事実やテクニックが紹介されている。例えば、会話で相づちをより多く打つと相手がより多く話してくれる傾向があるという実験結果が示されている。また名刺交換で相手に名前を覚えてもらうための好例や、クレームで怒り心頭となっている客を鎮めるためのコツなど実践的な話も多い。
 こうしたコツは本能的に持ち合わせている人もいるが、知識として蓄えて多少練習を重ねれば誰でも身に付く。「人付き合いは苦手」と思うかもしれないが、これもちょっとしたテクニックだと思えばいい。ITエンジニアなら得意のテクニックだ。システムをチューニングしたらパフォーマンスが良くなるのと同じように、会話に工夫をこらしたら好印象を持ってもらうことができる。会話をちょっとでもチューニングしたら、それはきっと日常に良い変化をもたらすことだろう。(ライター・加山恵美)


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