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Book Guide



 

■キャリア、自分戦略
いつまでも現役でいるためには何が必要なのか
プログラマー現役続行
●柴田芳樹著
●技術評論社 2007年9月
●882円(税込み) 4-7741-3199-7

 IT業界で根強くいわれる「プログラマ35歳限界説」。それには、新しい技術に追従できなくなったり、若いころと比べて、気力や体力が衰え、激務に耐えきれなくなってしまうという加齢からくる限界、あるいはそれまでは現場で活躍していても、35歳くらいになるとマネジメントに主軸を移すことを求められ、プログラミングの一線から退いていくというキャリアとしての限界があるだろう。
  47歳で現役のプログラマとして仕事をしている著者は、「プログラマーとして一線で活躍できるかどうかは、年齢ではなく、『その人がソフトウェア開発に対してどのように取り組んできたか』という姿勢に大きく左右される」と加齢ではなく、個人の能力次第と一蹴する。
  著者は現役続行に必要な7つの能力として、「論理的思考力」「読みやすいコードを書く力」「継続的学習力」「コンピュータサイエンスの基礎力」「朝型力」「コミュニケーション力」「英語力」を挙げる。プログラマとして活躍し続けるには、多くの知識を吸収すること、そして知識の吸収を継続的に続ける必要があるということを、自身の経験を交えながら解説する。
  また『ソフトウェア開発の名著を読む』(技術評論社)という著書もある著者らしく、本書では各所で、数多くのソフトウェア開発の名著からの引用があり、多くの参考文献の情報を得ることができる。
  プログラミングが好きで、「ずっとプログラマを続けたいが……」と悩むITエンジニアや、これからIT業界に足を踏み入れようとする学生に読んでほしい1冊だ。(@IT自分戦略研究所 千葉大輔)

エンジニアの自立指南書
SEのための「どこでもやれる力」のつけ方 管理者としてもフリーとしても大成できる自立と協調の極意
●野口和裕著
●技術評論社 2008年1月
●2079円(税込み) 4-7741-3366-3

 著者である野口和裕氏は@IT自分戦略研究所への寄稿やイベントで講演をするなどしているので、記事を読んだり顔を見たことがある人もいるだろう。そんな野口氏は本書で、自身の経験を織り交ぜながら、エンジニアとして成長していくために必要なことを分かりやすく説いている。
  本書の重要なテーマであり、メッセージの根幹にあるのが自立と協調である。野口氏は会社員を13年経験してフリーエンジニアとなった。退社してフリーエンジニアとなった野口氏は、フリーエンジニアが一般的にいわれるように安定した職業ではないことを実感した。だがよくよく考えると、会社員も安定してはいないということに気付いたという。保証された安定、絶対的な安定というものは存在しないということだ。
  こうした部分は冒頭に述べられている。この主張の趣旨は危機感をあおるのが目的ではなく、自立を促すための大切な前提となるのではないだろうか。フリーエンジニアのように雇われない立場でも、会社員のように雇われている立場でも、絶対的な安定はないのだから自立が必要になる。だが自立は孤立ではない。エンジニアとして個を確立すること、つまり自立したうえで周囲と協調することが大事で、そうなるにはどう考えていけばいいかが著者の言葉で丁寧に説いている。
  本書最大のポイントとして掲げられているのは、4つの原則、3つのスキル、3つの基準だ。第1部で、4つの原則が解説されている。続く第3部で3つのスキルが説かれ、第3部で3つの基準が明かされる。それぞれは、年齢が上がるにつれて必要になることだと、野口氏は本書で指摘する。4つの原則、3つのスキル、3つの基準が何か気になる、そんな方に本書をお薦めしたい。(ライター 加山恵美)

来るべき30代へ向けての基礎を固める
エンジニアが30歳までに身につけておくべきこと
●椎木一夫著
●日本実業出版社 2005年10月
●1470円(税込み) 4-534-03984-0

 エンジニアに限らず、若いころに経験したことや身に付けたことは、後々になって必ず自分の財産として生きてくる。逆に考えると、若いころにどんなことを経験し、どんな知識や能力を養うことができたのか。それが、将来の自分自身の仕事や人生を決定すると考えてもよいかもしれない。
  本書は元エンジニアの大学教授である著者が、自分自身の経験を基に学生や若手のエンジニアに向けて、就職に対する考えや30歳までに身に付けておくべき知識や能力、またそれらがなぜ必要かということを解説している。
 著者は「最先端の技術は10年もたてば古くなる」といい、若いエンジニアに求められているのは、「基礎学力」と「考える力」「基本的スキル」だと主張する。そうした能力を日ごろの学習や仕事の中で養いながら、自分自身の将来を考えることが必要だ。
 本書は学生まで含んだ若い人に対して書かれているため、ある程度経験を積んだ社会人にとっては少々当たり前というか、すでに知っている内容が多いように見えるかもしれない。また、筆者の実体験による価値観や、日ごろ見聞きしたことからの主張がなされているので、必ずしも読者自身が置かれている状況に重なるとは限らない。しかし、ここに書かれている基礎的な知識やエンジニアのマインドは、初めての転職活動や転職先でのコミコミュニケーション術など、広く利用できる内容が多い。
 これから社会人にという学生には、会社やエンジニアという職業について知ることができる1冊であり、社会人にとっては振り返りや、今後の自分を考えるための1冊となるだろう。(@IT自分戦略研究所 千葉大輔)

安全な開発素晴らしいエンジニアたちの生態
ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち
●ポール・グレアム著、川合史朗訳
●オーム社 2005年1月
●2520円(税込み) 4-274-06597-9

 プログラミングを楽しみ、優れたソフトウェアを作り上げる素晴らしいエンジニア=ハッカー。プログラミングを志す人には、ITエンジニアなら誰もが知っている有名なハッカーや、あるいは名前は知られていないが、自分の身近にいるハッカーにあこがれる人が少なくないだろう。
  優れたハッカーたちに共通する特徴はあるのだろうか。
  自身も優れたハッカーである著者が、自分の経験や周囲の観察によって得られた、ハッカー独自の考え方や哲学、はたまたものづくりに必要とされるセンスや、ソフトウェアの変化、ベンチャービジネスで必要なことまで、多岐にわたる話題を取り上げている。
  優れたハッカーは人と違うことを考えている。本書を読むとそう思わずにはいられない。それは「オタク的」、あるいは「あまのじゃく的」という、一般的な常識や社会的な通念にとらわれない自由な発想から、優れたソフトウェアやサービスが生まれる。「ハッカーは規則に従わない。それがハッキングの本質なんだ」。そう著者は記している。
  「ハッカー」や「ハック」というと、IT業界以外のところでは、他人のPCに侵入したり、データを改ざんしたりという悪い意味で使われることが多い。それはハッカーやハックに対する無知や、ハッカー自身がとっつきにくい存在であることからきているのかもしれないが、本書を読めばいかにハッカーが、プログラミングを愛し、自分のやりたいことに集中しているか分かるだろう。
  本書は純粋な読み物としての面白さはもちろんのこと、ハッカーを理解する、またハッカーになりたい人に最適の1冊だ。(@IT自分戦略研究所 千葉大輔)

99人の偉人が送る、働くことへのエール
働く理由 99の名言に学ぶシゴト論。
●戸田智弘著
●ディスカヴァー・トゥエンティワン 2007年7月
●2730円(税込み) 978-4-8171-9224-0

 自分が働くことについて「なぜ働くのか、なぜその仕事を選んだのか」と質問されたら、どれだけ自分の言葉で確信を持って答えられるだろうか。もちろんこの問いへの答えを持つことは任意である。答えを持とうと持たざると、その中身が高尚だろうと陳腐だろうと、それを考えようと考えまいと、働くことだけならできる。
  だが考えてみてもいいだろう。著者は仕事について思い悩んでいたときにアメリカの心理学者、ドナルド・E・スーパーの言葉に出合った。「仕事とは自分の能力や趣味、価値観を表現するものである。そうでなければ、仕事は退屈で無意味なものになってしまう」
  加えて著者はこう読者に語りかける。「人生は、あなただけに与えられた応用問題」と。人生も、その中で多くを占める働く時間も、それぞれに与えられた応用問題なのかもしれない。それぞれが自分固有の問題に向き合い、自分が可能な範囲で対処するために自分なりの答えを出して行動に移す。だから働く理由についての考えも十人十色でいい。
  だがおそらく自問自答だけでは答えは出せないのではないだろうか。価値観とは実体験や見聞から形成されていくからだ。そこで本書を通して99人の著名人の声を聞いてみるのはどうだろう。
  本書では99人の著名人の仕事に関する名言をまとめている。それぞれの人生や業績のうえに発せられた言葉の数々だ。働くことを考えるうえではっとするようなエッセンスをうまく抽出している。発言者は古今東西から幅広く集めている。名言の1つひとつが、自分自身へのエールと思って読んでみてはどうだろうか。少し勇気がわいてくるはずだ。(ライター・加山恵美)

もう面接で、ウソをつかなくてもいい
転職面接必勝法
●細井智彦著
●講談社 2007年3月
●1365円(税込み) 4-0621-3918-9

 @IT自分戦略研究所とJOB@ITが2007年5月に実施した読者調査によると、読者全体の37.3%が「現在」から「1年以内」または「近い将来」の転職を考えている。また42.3%が「良い話があれば」転職を考えたいという。これら多くの転職を意識しているITエンジニアに、一読をお勧めしたいのが本書だ。
  タイトルこそマニュアル本のようだが、本書は転職活動の単なる手順を解説した本ではない。転職面接の本質、正体というべきものを提示し、ビジネスパーソンが普段仕事で心掛けていることを応用して、面接ひいては転職に成功する方法を紹介している。
  著者は冒頭で、自分をより良く見せようと面接でウソをつく必要はない、大切なのは「一貫性」だと述べる。自分の希望に沿って、一貫性のある「骨太の転職ストーリー」を確認しておき、面接でそれを伝えること。そのための方法を中盤の3章にわたって解説しており、読み進めながら考えることで一貫した「転職理由」「志望理由」「自己PR」が出来上がる仕組みになっている。
  もう1点著者が冒頭で強調しているのが、転職活動を自分を売り込む「ビジネス」と考えること。これらのシンプルで分かりやすく、しかも本質的な考え方は、転職は面倒だと考えている人や、面接に気が重い人の苦手意識を取り除いてくれることだろう。
  面接などの慣れない場面では、自分が本当に思っていることしか話せないものである。本書にあるような方法で「自分が本当に思っていること」を補強しておけば、面接そのものにはもちろん、今後の自分のキャリアを考えるうえでも役立ちそうだ。(@IT自分戦略研究所 長谷川玲奈)

面接では質問する側になろう
転職者のための「自分に合う」会社の見抜き方
●谷所健一郎著
●九天社 2007年5月
●1365円(税込み) 4-8616-7178-7

 転職希望者は、企業に「採用されるか、されないか」、つまり「選ばれる」側と思ってしまいがちだ。確かに採用の判断は企業側にあるといっていい。だが本書の著者は、転職希望者に「企業を『選ぶ』スタンスであるべきなのだ」と発想の転換を促している。
  端的にいえば就職活動(転職を含む)は消極的・受動的ではなく、積極的にということだ。不採用を恐れて「不用意な発言は控えよう」と守りに徹したとしても、それが良い結果をもたらすとは限らない。むしろ良い意味で印象づけることができず、不採用となってしまうことだってあるだろう。著者は「面接官に質問しないから、不採用になるのだ」と断言する。
  著者は人事部長として1万人以上と面接した経験から、転職に関して多くの書籍を執筆している。本書の冒頭には転職成功の王道とは「自分にふさわしい企業か見極めること」と記している。まさしくそのとおりだろう。自分に合う企業に採用されれば、その転職は成功といえる。
  そこで重要となるのが、応募先の企業が自分に合うかどうかだ。この見極めを誤ると新天地で転職を後悔することとなり、転職は失敗となる。再び就職活動を強いられる羽目にも陥るだろう。これを繰り返すと泥沼にはまる。
  本書では応募、訪問、面接のそれぞれの段階において、自分と企業の相性を見極めるポイントを列挙して解説している。特に面接における態度や質問を重点的に取り上げているのが特徴だ。面接官は採用担当者と経営者の両方を想定し、それぞれにおいて将来性、経営体質、労働環境、自己実現の可能性を見極めるための効果的な質問について説いている。本書を読んで転職の成功者となろう。(ライター・加山恵美)

本当に、病は気から!
ITエンジニアの「心の病」 技術者がとりつかれやすい30の疾患
●酒井和夫、立川秀樹著
●毎日コミュニケーションズ 2005年6月
●1764円(税込み) 4-8399-1711-6

 本書は心の病に関する本だが、『ITエンジニアの「心の病」 技術者がとりつかれやすい30の疾患』というタイトルからも分かるように、心の病だけではなく、技術者がかかりやすい病気も紹介している。とはいえ、どの病気も心が問題となって、かかりやすくなるような疾患ばかりだ。ただし、病気自体を詳しく知りたいのであれば、ほかに適している本があるかもしれない。
  類書にない本書の特徴は、病気の説明に割かれているPART2ではなく、その後に続く「PART3 危ない兆候を見逃すな! 気づくことからはじめよう」と、「PART4 『心の病』の予防法」にある。
  PART3では、病気の危険な兆候として、(1)気分の変化に現れるシグナル、(2)身体症状として現れるシグナル、(3)行動異常・感覚異常に現れるシグナル、(4)自殺を予告するシグナルを挙げる。そしてPART4で心の病にならないための6カ条を掲げる。それは、(1)自分自身の心にも気付きを、(2)なんといっても休養の時間を確保すること、(3)「適度のいい加減さ」で自分を守ろう、(4)逃げていると自己破壊に陥りやすい、(5)コミュニケーションをあきらめない、(6)改善のキーパーソンを探せ、というものだ。さらに、ストレスを解消する手段を持とうと著者は呼び掛ける。
  心の病にならないためには、日ごろからの心掛けがいかに重要かが、本書を読むとよく分かるはずだ。部下を持つマネージャやリーダーにお薦めしたい1冊だ。(@IT自分戦略研究所 大内隆良)

日々学び、発見し続けるITエンジニアの成長物語
研修では教えてくれない 開発現場で必要な24のチカラ
●山野寛著
●翔泳社 2006年3月
●1890円(税込み) 4-7981-1034-5

 「技術力だけではなく、提案力や交渉力といったようなノンテクニカルスキルをもつエンジニアが必要とされてきています」(本文より)。確かにそのとおりだ。しかし、果たしてどんなスキルが必要なのか、業務に追われる中、どうやって身に付けたらいいのかと迷う若手エンジニアも多いのではないだろうか。
  現役のITエンジニアである著者が「現場で本当に必要とされるスキル」を説き、それを身に付けるための考え方を紹介しているのが本書だ。同時にこれは、ある1人のITエンジニアの成長物語でもある。
  舞台は、実際のプロジェクトを基にした「プログラム実装・テスト」「運用保守」「システム設計」「要求分析・要件定義」の4つの現場。失敗談、トラブル体験などのエピソードを基に語られる24種のスキルは、「コミュニケーション力」「集中力」「努力」などスタンダードなものから「準備力」「想像応用力」「向上力」など聞きなれないものまでさまざまだ。
  第1のエピソードは主人公(=著者)が新人プログラマとしてあるプロジェクトに配属された日から始まる。読者は主人公とともに数々の事件を体験し、それを通して開発現場で必要なスキルを学んでいくことになる。日々学び、発見し続ける主人公の視点を知ることは、業務を通して成長したいと願うITエンジニアにとって大きなヒントとなるはずだ。
  主人公を取り巻くのは厳しい顧客、新技術を認めない頑固なプロジェクトリーダー、お調子者の後輩エンジニアと、いかにも身の周りにいそうな人たちだ。システム開発の現場の様子が生き生きと描かれ、各システムの概要・プロジェクト体制図もイラストで添えられている。ある程度の経験を積んだITエンジニアだけでなく、現場の雰囲気を知りたいITエンジニア志望者にもお薦めできる。(@IT自分戦略研究所 長谷川玲奈)

自分のネイチャースキルを向上させる
本当の自分を発見する
●池田輝久著
●中経出版 2007年2月
●1365円(税込み) 4-8061-2637-9

 本書を手に取ろうとしたとき、タイトルを見てこう思った。「『本当の自分』とは何か。本来、自分に本当もうそもない。実在する主観が自分だ。だから『発見する』必要などないではないか。見つからないとしたらただ自分と向き合っていないだけだ」
  タイトルを見ると本書はいわゆる「自分探し」のエッセイや旅行記のようなものを想像してしまうが、中を開くとそうした青臭い内容ではない。日常の心掛けをシンプルに記した自己啓発書である。
  読後に「本当の自分」という表現について再度考えた。本当の自分が発見できていない状況は、当人にとって自分の現状が受けいれられない何かの理由、または自分に対する何らかの不満があることの表れかもしれない。
  そうしたわだかまりを克服し、自分があるべき姿に到達したとき、「これこそが本当の自分だ」という表現がぴたりと当てはまるのだろう。そういう意味では本書は自分の現状に納得し、自分を受けいれられるようになることを目標にとらえており、タイトルはそれをストレートに表現している。
  本書ではネイチャースキルとして10の能力を題材にしている。それが、誠実さ、熱意、勤勉さ、忍耐強さ、積極性、自信、勇気、信頼、冷静さ、健康だ。これらは変化しない資質ととらえられがちだが、本人が意識すれば伸ばすことができると著者は説いている。
  これら10のネイチャースキルが仕事でどれだけ大切か、どうすれば伸ばすことができるかを本書は簡潔な言葉で示している。本書が提案する方法などを少しずつでも実践すれば、「自分」に好循環が訪れるのではないだろうか。(ライター・加山恵美)

偶然をキャリアに生かす
その幸運は偶然ではないんです!
●J.D.クランボルツ、A.S.レヴィン著、花田光世、大木紀子、宮地夕紀子訳
●ダイヤモンド社 2005年11月
●1575円(税込み) 4-478-73324-4

 @IT自分戦略研究所設立時によく用いたスローガンが、「自分戦略をつかめ」という言葉だ。これは、会社任せのキャリアから自分自身でキャリア構築を考え、実践しようというもの。
  しかし現実には、自分で戦略を立てるというのは難しく、しかも面倒な作業だ。
  そんな考えに同感する人にお勧めしたいのが、「プランド・ハップンスタンス・セオリー」という理論だ。@IT自分戦略研究所でも、過去にこの理論を活用した記事として「偶然を起こし、偶然を生かす方法」を紹介したことがある。
  そもそもこの理論を提唱したのは、J.D.クランボルツ氏だ。A.S.レヴィン氏と共同で執筆した本書において、「想定外の出来事や偶然の出来事」が、人生やキャリアに影響したことが多いことを、事例を基に説明する。ITエンジニアの事例は本書にはないが、身近にもそうした偶然の出来事によって、キャリアを手に入れた(転職という形だけではなく)人は多いのではないだろうか。
  例えば、会社の先輩に新しいプロジェクトに誘われたとか、新しい言語での開発を勧められた、ということはままあることだ。本書にも、「将来の夢はプロ野球選手だったがたった一球で人生の目標を変えた」とか、「子供の頃の夢を追いかけて金融マンから歌手へ」など、多くの例が示されている。
  著者は、そうした「偶然の出来事を活用し、選択肢を常にオープンにしておくこと、そして人生に起きることを最大限に活用すること」を推奨する。キャリアに悩んでいる、自分戦略なんて考えるのは面倒だ、なんていう人にお薦めしたい。(@IT自分戦略研究所 大内隆良)

ITエンジニアの本音から前に進む術を知る
実録 SEの履歴書
●SEライフ編集部編
●技術評論社 2006年10月
●882円(税込み) 4-7741-2936-4

 本書には9人のITエンジニアの半生が記されている。IT業界に入るきっかけ、入った後の修業時代、その人の実績を象徴する技術との経緯、そして自分自身がキャリアについてどう考えているかなど。インタビュー形式で本人の声がありのままに記録されている。
  登場する9人はIT業界では著名なITエンジニア経験者がずらりと並ぶ。オープンソースRDBMS「PostgreSQL」の日本における開発や普及に尽力したSRAの石井達夫氏、ニフティ時代にブログサービス「ココログ」を立ち上げ現在ははてなでCTOを務める伊藤直也氏などだ。
  ページをめくると彼らが偉業を成し遂げるまでのリアルな様子が伝わってくる。困難に直面したときはただ力ずくで乗り切るだけではなく、精神的に柔軟または楽観的に受けとめてかわしてしまった人もいるようだ。
  誰もが彼らと同じようにできるとは限らないが、困難を克服した経緯や態度は参考になるだろう。例えば先に紹介したSRAの石井氏は、ITエンジニアとなった当初は「お前はまったく向いていない」と新人の中では劣等生だった。だが楽観的だった。加えてアセンブラを経験する中で「私の場合、いい加減なんですが、しつこい」という自分の特性を見いだした。
  こうして本書では「雲の上」のような人を身近に感じるようなエピソードも掲載されている。何が成功や偉業につながるか分からない。運命の導きもあるし、当然ながら一定の技術力も必要だ。だが本書を見ると、それぞれ苦境に立ったときの考え方が前向きだということが分かる。こうした前向きな態度が困難を克服する力ではないかと感じさせられる。(ライター・加山恵美)

先輩も悩み、苦しみ、後輩とともに成長する
はじめての後輩指導―知っておきたい育て方30のルール
●田中淳子著
●日本経団連出版 2006年9月
●1200円+税 4-8185-2604-5

 新人を指導中のITエンジニアの知人から次のような話を聞いた。「締め切りを設定して仕事を割り振ったが、期日ギリギリになって『できなかったので先輩がやってください』といわれた」「残業代が出るので、会社に遅くまで残れば残るほど得だと思っている」など。これは極端な例だ(と思いたい)が、新人と現場の間に大きな温度差が存在するのは事実で、指導してその差をなくすのはなかなか難しいものだ。
  そう感じていたときに本書中の「『常識でしょ』は新人にはタブー」を読んで、当たり前のことでもそもそもの理由からきちんと説明することの大切さを再認識した。この章には締め切りを破る後輩、遅刻をしてはいけない理由が分からない新人が登場し、著者がどのように指導したかが紹介されている。それによって読者は後輩指導のヒントが得られる。
  本書はこういった30のトピックで構成され、後輩を指導しつつ自分も成長するためのコツがコンパクトにまとめられている。かといってマニュアル的な本ではない。著者が実際に体験し、考え、悩み、解決したことが中心に書かれ、物語のような楽しさがある。「大人扱いされれば大人になるもの」「理解度の確認にはやらせてみるのが一番」「『体験』を語るなら成功した話より失敗談を」など、冒頭の「はしがき」にもあるとおり「気負わずに日々実践できる」内容だ。
  著者は「教え育てるからといって自分の知識や技術が減るのではなく、かえって増えて」いくという。このように本書中では繰り返し、後輩指導が自分自身の成長にもつながり、チーム全体の力を大きく伸ばすものであることが説明されている。著者自身の失敗経験、指導を受ける後輩だったころのエピソードも登場することが、いっそう理解と共感を深める。
  初めての後輩指導で不安になったとき、悩んでしまったとき、さらに一歩先を行く先輩のように教え導いてくれる1冊だ。(@IT自分戦略研究所 長谷川玲奈)

経営者が求める社員像
仕事の哲学――自分で考え、伸びるために
●プレジデント編集部編
●プレジデント社 2006年11月
●952円+税 4-8334-5027-5

 本書は雑誌『プレジデント』で連載していた経営者へのインタビュー記事を再録したもの。テーマは企業経営者が求める人材と能力であり、それぞれの経営者が考える「こんな社員になってほしい!」という社員像が分かる。
  インタビューを見るとそれぞれが挙げる要素がなぜ必要か、経験や熱意とともに説明がある。経営者たちが平社員で働いた時期も垣間見ることができる。中には「モーレツ」という言葉が似合うほど仕事に奔走した人もいるようだ。こうしたガッツは見習いたい。
  だが本書が参考になるかどうかは、個人差があるように思う。なにせここに登場する経営者は、雲の上の存在のようであり、若い社員にとっては年齢の差も大きい。企業文化の違いもある。だから彼らが説く教訓がズバリ役に立つ人と、そうならない人はいると思うのだ。だが企業で長く経験を積み、多くの困難を越えてきた経営者の貴重な本音は何か将来のアドバイスになるような気がする。
  経営者が求める人材や能力とは何か。「前任者を踏襲ではダメ」(花王・後藤卓也氏)、「トップダウン型で団体行動がうまい人」(キヤノン・御手洗冨士夫氏)、「知と心のバランス」(伊藤忠商事・丹羽宇一郎氏)、またIT系で登場している日本アイ・ビー・エム・大歳卓麻氏はズバリ「プロフェッショナル」と専門性を磨けという。経営者たちが挙げる姿や要素はまちまちだ。
  ただ経営者たちはよく「リーダー」について語っている。リーダーとは社員を主導する存在を指し、次世代の経営者候補を思い描いているようだ。ここから次世代を担える人材になるためのヒントが見いだせるかもしれない。(ライター・加山恵美)

レールはないが、だからこそそれに縛られない生き方がある
若者はなぜ3年で辞めるのか?――年功序列が奪う日本の未来
●城繁幸著
●光文社新書 2006年9月
●700円+税 4-334-03370-9

 副題にあるとおり、本書は日本の年功序列というシステムと、その背後にある昭和的な価値観を深く鋭く説明している。年功序列と昭和的な価値観は、日本の社会と意識の奥深くに根の深いレールのようなものを築いている。だがこの目に見えない人生のレールは、もうこの先には続かないことを本書は如実に教えてくれる。それだけ時代が変化しているのだ。
  本書では「上司を食わせるため」にくたくたになる若年層の苦境を生々しく描く。だが若者がくたくたになるまで働き、年配者に利用されてしまうのは、ある意味、古今東西を問わず世の常ではないだろうか。
  いま起きている問題は、くたくたに働いてもその見返りはなく、「空手形をつかまされそうだ」と思えることだ。本書では年功序列制度の中で人が単調な事務処理をしていたことを「写経を続ければいずれ極楽へ行くことができると信じられるからこそ、人は写経をするのだ」と、うまく宗教に例えている。
  だがいまは違う。だから「出口のない地下牢の奥で毎日数字を書きなぞっていれば、心身に変調をきたしても無理もない気がする」となる。30代の著者が語る、同年代の絶望感は実に説得力がある。
  本書は一見して日本の磐石な年功序列システムの崩壊という、悲観的でショッキングな内容にも見える。だが最後まで読むとそうではないことが分かる。これまでのレールに乗った人生は安泰のようだが、レールに縛られている。見方を変えれば、この先にレールはないが、逆にレールに縛られない自由や可能性がある。その中で自分はどう生きるか、働くか。著者は本書を通じてそれぞれに答えを見いだしてほしいと願っている。(ライター・加山恵美)

データベーススペシャリストへの道案内
勝つDBエンジニアのキャリアパス
●斎藤直樹著
●翔泳社 2006年7月
●2200円+税 4-7981-1199-6

 システムに携わっていれば何らかの形でデータベースを使うことになる。データのないシステムなんてあり得ないからだ。ではデータベースエンジニアとは何をするのか、そのスペシャリストは将来どこへ進むのか。本書は雑誌連載記事を書籍化したもので、データベースエンジニアに焦点を絞って必要なスキルからキャリアパスまでを解説している。
 データベースエンジニアとなると当然ながら仕事やスキルはデータベースに特化することになる。だがデータベースがシステムに必須なものだけにその姿は何となくは分かるが、厳密にはよく把握されていないのではないだろうか。
 本書ではまずデータベースエンジニアに求められるスキルから解説している。一般的なデータベースエンジニアのタスクを例に挙げ、それらに対する具体的な成果物を明示している。このタスクから成果物を生成する過程を考えると、データベースエンジニアに求められるスキルの本質には4つのテーマがあるという。「情報の資源化」「構造化と論理思考」「コミュニケーション」「RDBMSの基礎知識」だ。本文ではこれらについて詳しく解説している。
 またデータベースエンジニアの業務の中で大切にしなければいけない思想が2つあるという。それは「やり直しがききにくい内容を優先させる」と、「ユーザーの要件を正しく設計できているかどうか」だ。一般的なITエンジニアにも通じるところがあるが、本書ではデータベースエンジニアのタスクやスキルと対応づけて具体的に説明している。データベースエンジニアの本質的な役割を知り、その将来を考えるのに役立つだろう。(ライター・加山恵美)

漠然とした悩みを一緒に考える
20代会社員の疑問――いま、働くこと
●山本直人著
●PHP研究所 2006年4月
●1300円+税 4-569-64966-1

 かつて社員とは「休まず、遅れず、働かず」といわれ、きちんした誠実な態度が重要視されていた。だが、いまは違う。その変化はバブル崩壊後あたりから起こり始めたと著者は考える。社会構造は変化したものの、感覚はそう簡単には順応できていない。現在の若手は新しい社会構造と従来の価値観を持つ上司に囲まれ、板ばさみなのかもしれない。これまでにはなかった悩みや不条理も抱えているが、それをうまく自覚させ諭すことのできる人物はあまりいない。
  本書では20代にスポットを当てている。だが20代の若手社員と向き合う先輩や上司が読んでもいいだろう。著者は多くの若手社員と直面した経験があり、彼らの悩みをよく理解している。多くの若手は漠然と疑問や不安を抱えているが、それを正しく把握できていないときも往々にしてある。社会人としては「生まれたて」なのだからやむを得ないだろう。20代を通過した人間なら思い当たる節があるはずだ。
  著者は彼らにうまく問題を気付かせる視点や会話を心得ている。ぜひ見習いたいところだ。単に年の功でアドバイスするだけではなく、親身になって一緒になって考えているからなのかもしれない。世間には簡潔明りょうで衝撃的なメッセージを主張する本も多く見掛けるが、本書はそんなに単純ではない。だがよくかみ砕いた言葉でつづられており説得力がある。またよく読めば所々で新しい発見も見いだせる。
  本書は終盤で「会社とは何か」という問いにたどりつく。だが著者の考えがすべてではなく、各人が自分なりの答えを見いだすべきだろう。自分なりの働き方や会社に対する見方を考えるヒントとしたい。(ライター・加山恵美)


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